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フラストレーションは殴り合いで解消だ!『ファイト・クラブ』感想

みなさん、フラストレーションがたまったら
何をして解消しますか?

私はとにかく寝たり、気持ちを文章にしたり、甘いものを食べたりするのですが、ある男たちにとってはそれが「殴り合い」だったんですね。

ありがたいことに、この前の「セブン」の感想文が面白かったとのお声をいただきました(すごく嬉しい)。

同監督の作品「ファイト・クラブ」の感想文も読んでみたいと言っていただけたので、さっそく見てまいりました!

【あらすじ】

主人公は、慢性的な空虚感と不眠症を抱えていた。
彼は仕事で出張した際、たまたま飛行機の隣の席に座った男:タイラーと知り合いになる。

その後、主人公の住んでいるアパートが火事になり、彼は住居を失ってしまった。

主人公はタイラーに連絡し、タイラーの家に泊まらせてもらうことにする。
そこでタイラーから主人公へお願いが。「俺を力いっぱい殴ってくれよ

殴ったらタイラーに殴り返された。そこから殴り合いに発展。あれ…なんか生きてるって感じがする…不思議な感覚を得る主人公。
タイラーとの殴り合いはやがてギャラリーや参加者を増やし、秘密の会合「ファイト・クラブ」へと発展していく。


【こんな人におすすめ】

・フラストレーションを抱えている
・全てめちゃくちゃにしたい気持ちがある
・それでも自分なりの筋は通したい
・空虚感を解消する方法を見つけたい


【ネタバレなし感想】

タイラーの印象

最初の印象としては、タイラーってくだらない男だな。というものだった。スープに尿とか入れるし……しかしそんな評価は、タイラーを知っていくうちに変わっていった。

何人もの男たちの心を掴むタイラーのカリスマ性はすごい。自信があって、信念を持ち、そして堂々と振る舞える男は、いつの時代も人の心を掴みます。

自分にもこんな親友がいたら、すごく楽しいだろうな。けど劣等感でめちゃくちゃ辛い思いしそうだな。

主人公にないものを全て持っているタイラー。
自分にないものを持っている人を見たら、私は嫉妬で狂うタイプなので、やっぱタイラーみたいな親友がいなくてよかった。
ファミリー向け映画にポルノシーン挟んでくるし…


殴り合いで解消?

「ファイト・クラブ」では、殴り合いでそれぞれのフラストレーションを晴らしているわけだけど、その感覚って女にはあまりないよね。

なお、ここからの話は、もちろん個人差があることを前提として、あくまで全体の「傾向」としての話だということを理解して読んでほしい。

男性だと、自分が殴り合いをするわけじゃなくても、人が殴り合ってる姿を見るのも好きだよね。例えば、ボクシングやプロレスとか。

対して女性が男性ほど殴り合いを好むかというとそうではない。むしろ見るのも苦手な人もそこそこ多いと思う。殴り合いの代替品としてのスポーツ観戦も、男性ファンの方が多いしね。

「戦い」というものを男性はすごく好んでいるな、という印象がある。だいぶマクロな話になるけど、女性が世を収めてる時の方が戦争が起きにくいという調査結果があるらしい。人文学?考古学?ちょっと忘れてしまったけど。

その理由としては、女性は男性に比べ、身体として圧倒的に劣るので、こと「戦い」になると自身が不利な状況に置かれることがわかるからだろうな、というふうに思う。

そうでなくとも、日常的に男性から怖い思いをさせられてるしね。自分の「弱さ」に対してかなり自覚的なので、身体的な弱さが露呈する場を避けがちなのだろう。

しかし男性にとっての「戦い」は、自分の身体性を誇示するところであったり、自身の可能性に挑戦する場であったり、とにかく自分の「強さ」を誇る場であるから、血湧き肉躍る心持ちになるのだろうなあ、という感想を抱いた。

見る側に回ったとしても、「男性」という同じ属性の活躍には希望や親しみを覚えやすいだろうから、より没入して応援できるだろうし。

というわけなので、「ファイト・クラブ」で盛り上がっちゃう男性たちの気持ちは、私にはなかなかわからない部分であり、少々冷めた気持ちで、男たちの盛り上がりを見ていたのであった。


【ネタバレあり感想】

「男性性」に対する誇りと憧れ

主人公の空虚な感情の埋め方は、初めは「自助グループに患者と偽って参加する」だった。
その心理としては、「ここでなら泣いてもいい」ということだったのかなと感じた。

社会的に、男性が涙を見せるということは「弱く」「特別な事情がないと許されない」と思っている男性は多い。だから主人公も、癌という「特別な事情」があれば、泣くことも許されると思って自助グループを巡っていたという部分があるのではないか、そう思った。

そしてタイラー。
タイラーは主人公の理想の姿を投影したものだが、そこから読み取れるのは、「男らしい男」への主人公の憧れだ。

だからこそ「男らしく」なれるファイト・クラブで高揚するのかなと。
「男らしく」ない自分を受け入れてくれる自助グループよりも、「男らしく」あれるファイト・クラブを選んだところに主人公の「男らしさ」への憧れが強いことが伺える。

そういう読み取り方をすると、ファイト・クラブがテロ組織へと化していくのも当然というか……
「男らしさ」と閉じた組織の相性ってすごく良いからね。

ところで、「男は男らしくするべき」という考え方って、女性より男性の方が強かったりするよね。あれって何故なのだろう。「男らしさ」の鎖からはずれた方が、本人にとっても、他者にとっても良いことしかないのに。
そういう人のいう「男らしさ」って、とても攻撃的で他害傾向が強いので、「男らしく」ない男性の方が、個人的には好ましいのだけど。

そう思ったけど、男らしさにこだわる男って、「自分が男性であること」しか誇れることがないんでしょうね。男性である自分は無条件で女性より優れていると思い込み、その男性性を必要以上に誇示するという。可哀想な生き物だ…


終わりの方の話

正直、前半1時間は「へえ…そうですか」くらいの気持ちで見ていたが、後半で「主人公=タイラー」が判明した時から断然面白くなった。

そういえば、主人公の名前が明かされてなかったな、ということに全く気が付かなかった。私は物語を追うときに、登場人物の名前をあまり意識しないタイプなので、主人公の名前が出てないことに不自然さを覚えなかった。

それほど上手く脚本が作られているのか、私がニブイだけなのかはわからないが……

「主人公=タイラー」の可能性を全く考えてなかったので、真実が明かされた時にはすごくテンションあがった。
うお〜!!そうだったのか!!お前!!!!ってなった。

最後にしっかりポルノのフィルムが挿入される演出もよかった。クスッとしてしまう。

ところで、主人公はタイラーを殺したけど、何かの拍子にまた「タイラー」が復活するかもしれないな、とは思う。

あと、マーラとは上手くいくんだろうか。なんとなく、私は今後うまくいかないんじゃないかと思った。マーラは主人公のこと好きなのかな?あくまでも好きなのは「タイラー」なんじゃないかという印象を受けたので、果たして仲良くやっていけるのかな…


【おわり】

「ファイト・クラブ」には別に参加したくないが、いろんな自助グループ巡りは正直してみたい(しませんが)。

ここまで読んでくれてありがとう!
良かったらスキ・シェアなどしてくれたら嬉しいよ

みんなの空虚感が晴れる方法があるといいね。
ただし「合法」でお願いしますよ。

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