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#14 私が道徳の授業中に考えていること

小学校の教師をしています。

日常生活、授業などで考えていることをnoteで紹介しています。

今回「道徳の授業中に頭で考えていること」を紹介したいと思います。

道徳の授業をしていると、なにか「この先、展開が単調になりそうだぞ」という感じる瞬間があります。

少し大げさですが、自分は「先のわかっている答え」ではなく、今まで気づかなかったような「新しい答え」を子どもたちと授業で発見できた時が「この仕事の一番のやりがい」だと感じます。

「教科書をもう少し深く考えたい」「授業の単調な流れを変えたい」と思った時、私はいつも「3つのテーゼ」を頭に思い浮かべるようにしています。



まず、この「テーゼ」とは何なのでしょう? 
そこから解説してみます。

テーゼとは哲学の用語で「概念をまとめて主張する命題」=「ものごとの基本となる考え方」です。
テーゼは大きく次の3つに分類することができます。

①   テーゼ 
→ものごと基本的な考え方(当たり前のこと、常識的なこと)

②   アンチテーゼ 
→①の反対の考え方(逆の立場の意見)

③   ジンテーゼ
→①と②を越えたさらに新しい考え方(今までと違う新しい視点)

という感じです。
少し堅苦しい話になってしまったので、この①~③をもとに授業を考えてみます。



例えば、道徳で「あいさつ」に関する教材を扱うとき時、頭でまずこんな図を思い浮かべます。

① 「あいさつの基本的な考えは?」
②  「①の反対の意見とは何かな?」
③  「『①も②も越えたあいさつ』ってあるのかな?」

次に具体例を頭の中で考えてみます。

①   テーゼ    
⇒「あいさつはいつも元気に大きな声でするのが大切だよね!」

②   アンチテーゼ  
⇒「いや、でも図書館や病院の待合室で大きな声で元気にあいさつをしたら迷惑じゃないかな?」

③    ジンテーゼ   
⇒「そうか!そもそもあいさつって人に、気持ちを伝えることが大切だから、声の大きさだけでなく、動作や目線、全てを使って伝えていくことなのかもしれないね!」

上の図のように①〜③のテーゼを授業中、頭でイメージすることで、子どもたちに考えさせたいことが見えてくることがあります。

①のような「当たり前のことばかり教えているな」と思ったら、ちょっと視点を変えて
②のアンチテーゼや、③のジンテーゼの視点から話し合うことで授業が盛り上がったりすることがあります。

子どもたちが「当たり前に思っている常識」を一度見直すような感覚に近いかもしれません。



これは道徳に限らず、国語や社会など「様々な立場が存在」する授業で応用できます。

例えば「桃太郎」のお話を3つのテーゼで考えてみると、どうなるでしょう?

桃太郎という題材でも、次のようにいろいろなことを考えられそうです。

①テーゼ   
⇒桃太郎は悪い鬼を倒して、村人と幸せにくらしました(よかった。よかった。)

②   アンチテーゼ 
⇒でも鬼の立場から考えると、鬼は自分の仲間を殺されているわけだよな(もしかして、桃太郎って悪い人なのかな?)

③   ジンテーゼ  
⇒価値観が違うもの同士が、仲良く暮らしていくにはどうしたらよいだろう?(難しいけど、実はこれが一番大切だよね。)

 
社会のゴミ処理の仕事の学習でも応用できそうです。

①    テーゼ 
→家やまちに落ちているゴミを捨ててきれいにすることは大切だよね。

②    アンチテーゼ 
→いや待てよ。ゴミを捨てて、家やまちがきれいになっても、それってただゴミを別の場所に移動しているだけだじゃないかな。

③    ジンテーゼ
→そもそも「ゴミ」をいうものがもっと少なくなればいいな。物をもっと大切にできる社会になるといいな。


 
 ヒットする漫画や映画は、この3つのテーゼが作品の中にうまく取り入れられているような気がします。

「主人公の立場」「敵の立場」「それを乗り越えるおどろく結末」が見事にまとめられていると思います。

このように私たちの生活の中には、この3つのテーゼが意外と隠れていることがあります。

読書をする時、会議をする時、テレビを見る時など…常にこの場合の3つのテーゼは何なのかを考えながら過ごすだけでも、授業で新しい展開を閃くための練習になると思っています。


様々な立場を考え、みんなが納得する答えを見つけるのは、難しいことですが、この悩んでいる試行錯誤の時間が授業では大切な気がしています。


今回みんなのフォトギャラリーからkawauso96さんの素敵な田んぼの写真を使わせていただきました。

田んぼの景色と匂いが好きです。