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#13 授業のめあては奥が深い‥

小学校で教師をしています。
今回、私が昔失敗した授業を紹介します。
 
小学校の先生方は、授業をする時「めあて」を書かれると思います。

「○○の秘密を見つけよう」「◇◇のやり方を見つけよう」といった
45分の授業で子どもたちの見通しをもたせるために初めに書く「ことば」です。

私は、いつもこの「めあて」を書く時、結構慎重に考えてます。
書く直前に「今日のめあては本当にこれでいいのかな?」と考え、事前に準備していた言葉を変えることもあります。

何故そこまで「めあて」にこだわるようになったかというと、教員5年目くらいの時の研究授業がきっかけでした。

今回、私の失敗談をふまえ、「めあての言葉の大切さ」について紹介していきたいと思います。


当時、私は2年生の担任をしていて、研究授業で「水のかさくらべ」の授業をしようとしていました。

授業本番に向けて私は、3か月前から毎週土日曜日に100円ショップや、大型文具店、ホームセンターなどに足を運び、「ぱっと見ただけではどちらが大きいか分からない2種類の容器」を探し続けていました。

教材の吟味をして、直接容器に水を入れ合う「直接比較」だけでなく、カップの容器などを使った「間接比較」にも子どもが気付けるように、教室にさりげなく、「同じ容積のカップ」をおいておくなどの準備もしていました。

(このように書くとかなり小賢しい感じがしますが、当時はそれなりに一生懸命だったのだと思います。)

このように教材の準備には、十分な時間をかけたつもりでした。

そして授業当日…準備していたA、B「ふたつの容器」を子どもに見せ、子どもたちが「容器のかさ」をくらべる研究授業が始まりました。

私は「ここまで教材準備をしたのだから、子どもたちは、きっと準備した容器に楽しく水を入れて かさ比べをしてくれるはずだ!」と心で思っていました。

ところが子どもたちがとった行動は予想外のものでした。
クラスのみんなが自分の筆箱の「定規」を使って2つの容器の「高さ」を測り始めたのです…



さて、何が失敗だったのでしょうか。授業が終わったあと、自分の書いた黒板のめあてを見て気付きました。

この日私が子どもに提示しためあては次のようなものでした。

「AとBどちらの容器の方が大きいかな?」

子どもたちは、このめあての「大きいのかな?」という言葉を素直に受け取り定規で「高さ」を測ったのだと思います。


この日私が提示すべきめあては、おそらく次のようなめあてだったのだと思います。

「AとBどちらの容器の方がたくさん水が入りそうかな?」

もしこのようにめあてを提示していれば、きっと違う活動が生まれていたと思います。


「準備に時間を何カ月もかけても、本番のめあての言葉の数文字を甘く見ると、授業は一瞬で失敗してしまう」

これはあくまで私個人の感想ですが、この授業が自分にとって「めあての言葉」を見直すよい勉強なりました。・・・・・・・・・・・・



例えば、国語の授業でも次のような問いかけ方の工夫をすることがあります。

「ごんぎつね」で主人公のごんは自分の正体を明かさず、兵十の後をついていくシーンがあります。この時

A「ごんはなぜ正体を明かさなかったのかな」

B「ごんはなぜ正体を明かせなかったのかな」

AとBで子どもに問いかける「一文字」が違うだけで、印象が違うのではないでしょうか。

Aのように子どもに問いかければ「ごんが正体を明かさなかった理由として、その時の状況や時間帯などの条件」に注目した授業が展開されるかもしれません。

一方、Bのように問いかければ、「兵十に正体を明かしたいけど明かせない、ごんの葛藤や心情」により子どもたちは注目できるような気がします。

小学校の授業では教師の聞き方で子どもの考える思考や活動が微妙に変わってきます。

前回#12で「会話の中での言葉の選択」について紹介した時、この授業の失敗例を思い出しました。

生活科や図工など、子どもの活動中心の授業では、このように1、2文字だけを変えた「めあての候補」を授業前に何パターンも考えて、また当日の雰囲気を見てさらに言葉を変えたりすることもあります。

授業のめあてを考えている時のことも、また機会があれば紹介したいと思います。


最後まで読んでいただきありがとうございます。
長かった一学期もあと少しです。
「所見」もことばを一つひとつを大切にしながら、こつこつと頑張っていきたいと思います。