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東北、山形で食べ物のことを考えています。 専門家でもなんでもないですが、食べ物について…

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東北、山形で食べ物のことを考えています。 専門家でもなんでもないですが、食べ物についての思い出を書いていきます。

最近の記事

舌巻く舌の日【かねこの食べもの自由帳】

 家庭によって食事に関するルールや定番は違うもんです。結婚して、妻が洗った箸の口に入る方を上にして箸立てに入れていた時、愕然としました。気にしたこともありませんでしたが、確かに箸立て自体を洗った記憶がない。ホコリが入れば汚くなるよね。だから逆さまなのね。と納得して我が家では「箸は逆さまで立てる」が採用されています。  こういった家庭での独自ルールは何かなかったかなと考えてみると、実家では普段の夕食の時は個別配膳が基本でした。我が家は飯を無尽蔵に食う、男三兄弟を有する家庭です

    • 精一杯のガトーショコラ【かねこの食べもの自由帳】

       ドライブが好きで、よく目的を決めずに適当な道を適当に走ることがあります。行ったことのない道にわざと入って、なんとなく進むうちに「あ、ここに出るのか」と自分の中の地図が繋がっていく感覚が気持ちよくて、疾走感よりも好奇心に駆り立てられているのかもしれません。  そんなことをしていると、時たま気になるお店に出会うことがあります。  よく走る、長井方面に向かう道のひとつは、 山肌に大きな岩が見え隠れする谷間を縫うような細い道です。うねりも多く、大きな蛇の頭に乗ったような気分に

      • 月食む父【かねこの食べもの自由帳】

         布団に包まって、まどろみの中で幸せいっぱい惰眠に溺れていると、嗅ぎなれた匂いが鼻をくすぐります。父ちゃんが作る鯖と玉ネギのカレーつけ汁の匂いです。  あぁ、今日は土曜日か。  単身赴任の父と不定休の母が家計を支える我が家は、休日は父ちゃんが昼飯を作るのが当たり前でした。布団の中から脱皮するように抜け出して、眠気を引きずりながら階段を降りていきます。  おはよーと声をかけると、おはよーと目は素麺を茹でる鍋から離さず返してきます。茹で上がった素麺をザルにあげて、流水で洗う

        • 地図と銀杏【かねこの食べ物自由帳】

           共働きだった両親は、毎朝各々の車で出かけていきます。母が白い軽自動車に乗り込む音が聞こえると、僕は裸足で玄関を飛び出して、なんとか母の出勤を阻止しようと号泣していました。  それを、後ろから羽交い締めにして止める人がいます。母方のばあちゃんです。車が動き出して追いつけない距離まで離れると、ようやくばあちゃんの手が緩みます。手を振りほどいて母の車を必死に追いかけるのですが、道沿いにあるさくらんぼ畑の影に車が消えると、ようやく諦めてトボトボ家に戻ります。家の前でばあちゃんが待

        舌巻く舌の日【かねこの食べもの自由帳】

          はじめまして、ごはんの話でもどうすか?

          はじめまして、「かねこ」と申します。 地味だけど、やけに食べ物が旨い山形県で、 食べ物に関わる仕事をしています。 振り返れば3年前、大学の恩師から 「アートブックフェアやるから、かねこもなんか本作りなよ」 という、この一言から生まれたZINE 「かねこのたべもの自由帳」を作ることになったのが 自分の話を本にするきっかけでした。 アートブックだって言われるのに、かっこいヴィジュアルも思いつかないし、問題提起できるような志もなかった僕は、「うーん、じゃ食べ物の本を作ります」

          はじめまして、ごはんの話でもどうすか?