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日本の高校生の就職活動には特殊なルールがある?~その課題について考えてみた~

こんにちは、お金が入るで金入です。

6月28日の日経新聞に「高卒採用、27年ぶり大卒上回る伸び ヤマトは5割増」という記事がありました。2024年問題により物流業界は人手不足が深刻化しており、その解決策として高卒採用の強化を図るという内容でした。

今日は、日本の高卒採用について調べて考えたことをお伝えできればと思います。


■高卒採用のニーズの高まっている背景

物流業界以外でも、建築・土木業界、介護業界などで人材不足が深刻化しており、2024年の5月の有効求人倍率※は、
「建設駆体工事」8.86倍
「建築・土木・測量技術者」6.00倍
「運輸・郵便事務従事者」3.19倍
「介護サービス職業従事者 」3.29倍
「機械整備・修理従事者」4.45倍
数年前に比べて高い水準となっています。
いずれもコロナ禍で一時低下したものの、足元では2年連続で増えて異状な水準に高まっています。

※有効求人倍率とは、1人の就業希望者に対して、何件の求人があるかという割合のこと
※「厚生労働省 一般職業紹介状況(令和6年5月分)」より

では、新卒での採用の状況はどうなっているのでしょうか?

リクルートワークス研究所より

こちらもコロナ禍で一時低下したものの同様に上昇基調となっており、人材の獲得合戦になっていることが想像できます。そこで各企業は、高卒にも力を入れていこうという流れになってきているというわけですね。

■高卒採用の状況は?

では、高卒採用の現状はどうなっているのでしょうか?

まず、高卒の有効求人倍率を調べてみました。

リクルートワークス研究所より

2023年採用の求人倍率が3.01倍と過去最高水準となっています。

採用の人気の高まりは高卒者の賃金上昇にもつながっているようです。厚生労働省の賃金構造基本統計調査によると、大卒20~24歳と高卒19歳以下の賃金は、2023年にそれぞれ月23万9700円、19万1500円だった。2021年からの伸び率を見ると高卒(4.9%増)が大卒(4.5%増)を上回るという結果に。

19歳以下の業種ごとの賃金は、現場の即戦力として期待される業界が高い伸びを示しており、2021年比で卸売・小売業11.8%増、運輸・郵便8.6%増となっていました。

■日本の高卒採用の特殊なルール・慣例

高校生の就職活動には、大卒や中途採用と異なり特殊なルール・慣例があります。

その代表的なものが、「原則、高校生は、一人一社しか応募することができない」というものです。そして、その一社は、学校からの推薦でなければ受けられません

この「一人一社制」は、応募企業は他社と併願しない「単願」を求める代わりに、学校も一定期間は他社への推薦を行わないというもの。
そして、内定が決まった企業には必ず就職するのが慣例です。

2023年10月以降、一部の都道府県では、一人二社応募や三社応募が可能になりますが、それでも三社しか受けられないわけです。

高卒採用は7月に募集活動が解禁され、9月に面接や採否の決定などを行います。その期間で就職先が決まらなかった高校生は二次募集となり、そこで初めて複数の企業への応募が可能になります。

■日本の高卒採用の課題

なぜ、「一人一社制」という特殊なルールになったのでしょうか?

高卒採用の前提には「高校生を守る」という考え方があります。

高校生の本分は、言わずもがな学業を中心とした高校生活。多忙な就職活動や過度な競争により、そこに支障が出ないようにという配慮があります。

ちなみに高卒採用におけるルールを決めているのは、文部科学省・厚生労働省管轄の「行政」、「経済団体関係者」、「学校関係者」。前述の「高校生を守る」という観点でこの三者が毎年の合議を行って詳細を決めていることから「三者間ルール」とも呼ばれます。

ここで問題として考えられるのが、「高校生に就職の選択肢を持たせなくていいのか?」ということです。

上記にあるように、高校生は学校からの推薦がなければ応募をすることができません。また、1社を決めるプロセスは、学校との面談をして、学校が推薦できる先を紹介するというもの。

学校の先生は授業を進めることが本職のため、就職相談に乗れるかというとかなり疑問符がつきます。というのは、私は年間500名ほどの転職支援をしていた経験がありますが、良い転職支援ができるかどうかは、多くの企業の多くの仕事のことを知っていることが前提となります。学校の先生がそこを十分に行えるかというとやはり難しいと考えます。

また、応募できる企業が学校によって制限されるという課題もあります。

「高校生を守る」という観点は、果たすべき要件だと思いますが、ルールを決めている三者は、そこに甘んじているという風にも見えます。

就職先を考えるというプロセスは、高校生にとって初めて社会との接点に向き合うということ。そこを学校が決めたところに就職するということでは、そこに自分で決めたという自覚が薄くなり、入社後のがんばりに大きな差が出ると考えます。

何が本当に高校生のためになるのかということを考えれば、外部のパートナーを使うなども十分検討の余地はあると思います。人生の大きな節目となる高校生の就職をもっとより良いものにする検討を三者間にはぜひともお願いしたいものです。

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