エヌビディアがSakana AIに200億円の出資をした理由とは?
こんにちは、お金が入るでかねいりです。
9月5日の日経新聞の1面に「エヌビディアが大株主に」という記事がありました。エヌビディアはAI半導体の設計会社で、世界の時価総額はアマゾンドットコムを抜き、第3位の会社です。そのエヌビディアが、日本で創業して1年のサカナAIというベンチャー企業に総額200億円を出資し、大株主になったという記事でした。
今日は、なぜエヌビディアがサカナAI(Sakana AI)に大型出資を決めたのかについて調べて考えたことをお伝えできればと思います。
■エヌビディアは何がすごい?
まずは、エヌビディアという会社の何がすごいかを見ていきたいと思います。
エヌビディアは、AI開発に必要な半導体「AI半導体」を設計する会社。
生成AIの開発競争が激しくなっている昨今、その競争力を左右するのが大規模なデータセンター。
生成AIの開発や運用の肝は大量データをどれだけ高速に処理し計算できるかにかかっています。その高速処理に欠かせないのが、エヌビディアが作るAI半導体。
2023年のデータセンター向けGPU市場におけるエヌビディアのシェアは9割に達していると言われています。
2024年5〜7月期決算では、売上高が前年同期と比べ約2.2倍の300億4000万ドル(約4兆3500億円)、純利益が2.7倍の165億9900万ドルとなり、ともに市場予想を上回りました。
AI開発の需要が高まる中、大注目の企業なのです。
※詳しく知りたい方はこちらもご覧ください
▼エヌビディアと株価上昇の関係』~エヌビディアはなぜ注目されているのか?~
■サカナAI、なぜ注目されているのか?
では次に、サカナAIという会社がなぜ注目されているかを見ていきたいと思います。
サカナAIは、大規模なデータセンターを持たなくても、高度な大規模言語モデルを開発することができる次世代技術の開発を行っている企業。
上記でお話したように、生成AIを開発するためには、大規模なデータセンターにおいて大量のデータを高速計算させる必要があります。それはなぜかというと、大規模言語モデルをつくるため。
大規模言語モデルは、生成AIの核となるもの。大規模言語モデルがあることにより、人間に近い流暢な会話が可能になり、自然言語を用いたさまざまな処理を高精度に実現できるようになります。
しかし、この大規模言語モデルをつくるには、大規模なデータセンターが必要になります。そうなると資金がある会社が有利になり、生成AI開発の寡占化が起こります。
そこに一石を投じたのがサカナAI。
既存の小規模な大規模言語モデルをつなぎ合わせ、柔軟に連携し、より効率化させることで、巨大な大規模言語モデルと同じ精度を実現させようと考えています。
その次世代技術に注目が集まっているということなのです。
企業価値は11億ドル(約1700億円)を超え、創業から1年以内にユニコーン(企業価値10億ドル以上の未上場企業)となりました。
※詳しく知りたい方はこちらもご覧ください。
▼創業半年で45億円を資金調達した『Sakana AI』について調べてみた
■エヌビディアがサカナAIに出資をした理由とは?
現在、エヌビディア製の半導体は、需給逼迫で価格が高騰し、調達は難しくなっている。
サカナAIとしては、資金調達という面だけではなく、エヌビディアが大株主になることで、テクノロジー業界で奪い合いになっているエヌビディア製の高性能な半導体を確保できるメリットもあります。
では、エヌビディアにはどういった狙いがあったのでしょうか?
ひとつの狙いは、日本の生成AI開発をリードする企業であると考え、日本語に対応する生成AI向けの半導体需要を取り込み、日本におけるエヌビディアの存在感を高めるということが考えられます。
実は、エヌビディアが狙うのは日本企業だけではありません。フランスのミストラルAIやカナダのコーヒアなど、各国の生成AI開発のトップランナーに次々と資金を提供しています。
2023年以降、74件の資金調達に参加して累計109億ドル(約1兆5000億円)超を投じています。これはアメリカの大手VCに準じる規模で、日本国内の年間VC投資の5倍を超える規模です。
エヌビディアのジェンスン・ファンCEOは「各国は独自の大規模言語モデルを通じて自らのデータや文化、言語を集め、体系化しようとしている」と声明。
世界におけるAI半導体包囲網を築こうとする狙いがうかがえます。
■エヌビディアが包囲網を築こうとする背景とは?
なぜ、エヌビディアはこうした包囲網を築こうとしているのでしょうか?
先述の通り、文章や画像などを自動で作る生成AIをめぐっては、マイクロソフトやグーグルなど巨大IT企業をはじめとして、世界で開発競争が激しさを増しています。
マイクロソフトやグーグル、アマゾンドットコムなどは自社のクラウドサービスの利用を促そうと、生成AIスタートアップへの投資に力を入れています。出資の一部は現金ではなく、クラウドサービスが使える権利を提供するケースもあるとされます。
そうした中、エヌビディアはスタートアップに資金提供することで、自社のGPUや生成AI開発ツールの購入・利用を促すことができます。
現時点でエヌビディアのAI半導体市場における世界シェアは約8割に達していると言われており、独走態勢をつくっていますが、各国・地域のトップ企業がエヌビディアのAI半導体を採用すれば、独走態勢を一段と強固にできます。
そういった意味では、エヌビディアのスタートアップへの投資は、短期的なリターンよりも、長期的なリターンを狙う戦略と言えそうです。
もともとエヌビディアは、ゲームやCGを動かすための技術からスタートしましたが、これも先々を見据えた上でのもの。エヌビディアが注目される理由は、先々を見通す眼を持ち、それに対しての抜け目のない打ち手の見事さにあるのかもしれません。
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