27歳男性恋愛を諦める⑤

距離感

 お互い割と行き当たりばったりの性格かつ出不精なので次はどこに行くかという話にはすぐにならなかった。それでも僕は少しずつ思い出を作っていけばいいや程度に思っていた。1週間を過ぎたころ、いつものようにLINEをしていても反応が薄いことに気が付いた。考えすぎかと思っていたが、よくよく考えると職場でも以前より距離感があることに気が付いた。体調が悪いのかと思い、こちらから連絡を取ることをいったん控えた。
 2月、3月は彼女が実家の用事で忙しいということは付き合う前から知っていたので早めにこちらからバレンタインのプレゼントを渡そうと思っていた。チョコとぬいぐるみを選んだ。渡したいものがあるから会えないかと聞いたがやや乗り気ではなかったようだった。バレンタインのプレゼントと言うとようやく会う時間を作ってくれた。その際に仕事での雑談をした後に、「社内で付き合うことがしんどくないか」と尋ねた。彼女は「恋愛経験がないからかもしれないけれど、恋愛をしている自分が気持ち悪いです。この気持ちもなくなるとは思いますけど」と教えてくれた。聞いた瞬間、心臓がすっと冷え込むような感じがした。けれども彼女の悩みは彼女にしか分からないし、「そのうち慣れる」と無責任なことも言いたくなかったので「無理になったら教えてほしい」とだけ伝えた。彼女はわかりましたと言って、その日は解散した。

告白

 翌週、電話をするタイミングが合ったので会ったときに言われたことについてそれとなく聞いてみた。嫌なことを聞くから嫌なら答えなくていいと前置きをしたが、彼女は拒否をしなかった。
 「元々他人と何かをしたいと思えない。恋愛している自分が気持ち悪いし、女性として見られるのも気持ち悪い。そしてそれを受け入れられない自分が嫌だ。こんな私でごめんなさい」と涙ながらに打ち明けてくれた。どちらかというと男寄りの性格と思っていたので、泣きながらの答えに胸が痛んだ。僕は「無理に変わる必要はない、そのままの彼女が好き、自分を大切にしてほしい」みたいなことを伝えた。この時に何と伝えるべきだったのか今でもわからない。
 本音を打ち明けられて以降、プライベートで連絡をする頻度はこちらから減らした。彼女から返信はあるものの、自発的に連絡が来ることはない。時間が経てばなんとかなるのか、なんてことを漠然と考えていた。
 3月頭に有休消化のため僕は1人で旅行に出かけた。そこで買ったお土産を彼女に渡したのだが、「ここまでしなくていいのに」と吐き捨てるように言われてしまった。この時点でこれ以上付き合うのは厳しいかな、と思った。


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