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百人一首「かるた会」論④~指導の一環として

 藤原定家の小倉百人一首を使ったかるた会で、かるたをするときは、「はい!」と言って取る。一人ではない。他の人と一緒にしているから。

 ジャンケンはしない
 同時に手を触れた時にじゃんけんはしない。
 二人で「静かに」相談して決める。これも一度徹底すると、互いに譲りあったり、どちらも取らずにおいたりする。なぜジャンケンをしないか。うるさくなるから。子どもたちは興奮すると周りが見えずにうるさくなる。

 かるたをしていて何がしんどいかといえば、読んでる声が通らないこと。
ジャンケンをしてわいわい騒いだら、まだ取れていない班の人に読み手の声が聞こえない。次の札を読む声も聞こえない。
 「はい!」と取った後に、わーい、取れた取れたと大騒ぎしていたら次の札がわからない。だから原則は、下の句を読んだらすぐに次の札を読む。歌の解説をした時は、全体が静かになってから次の札を読む。静かにならなかったら読まない。

 札を読みながら場所を移動する。どの班にも平等に聞こえるようにいろんな場所で読む。わいわいがやがやうるさい班があれば、その班から一番遠い所で読む。「聞こえませーん」と言ってきたら、「じゃあ、静かにしなさい」と言って、自分たちで静かになるように仕向ける。時にはわざと小さい声で読む場合もある。自分一人でやっているのではない。「みんなで」やっているのだと教え込む。

 電車の中で大声で騒ぐ中高生。周りを見るということを教えたい。

 ただ読んでいるだけのようだけど、周りに気を配りながら、かるたの練習はけっこうしんどい。



 かるたの競技性よりも歌としての意味を重視すると言いながら、いつの頃からか、私はかるた会を能力別班編成にした。うまい子はうまい子同士で競争し、順位をつける。そうすると、一番へたくそなチームも、みんな何枚かは取れる。一人が何十枚も取るということがなくなる。今までほとんど取れなかった子も取れるようになる。取れたら覚える意欲がわく。うまい子とへたな子が一緒の班なら、へたな子は全然取れずにやる気をなくしてしまう。へたくそチームも、最初の取り組みさえうまくいけば、すねたりせず、かるたに乗ってくる。

 班編成はどうするか。
 取った枚数をチェックしたものをエクセルに打ち込み、枚数順にソートする。そして次回の班編成をする。3回目くらいで、全体の順位が出るので、それをもとにして全体かるた会の班編成をする。
 全体のベスト3には、案外意外な子が入ることもある。ふだん褒められていない子がいたら、褒め殺しにするくらい褒めたおす。

 全体かるた会では、一番うまい子のチームで優勝した人が、団体のトップになる。


 以上が私のかるた会の方法。

 それぞれ目的に合わせて方法を考える。競技カルタに興味を持たせようとすれば、全く違う方法になるだろう。歌の内容を学ばせるのなら、もっと別の方法もある。

 あれもこれもできない。



 時間が足りずに今までしていないけど、こんなこともできる。

 百人一首は100人の歌人の歌一つずつを集めたもの。誰でも作られる。かつては誰でも作っていた。かるたになっているのは、藤原定家が小倉山で選んだもの(小倉百人一首)。
 だから子どもたちにも自分の百人一首を選ばせたい。100は無理でも「十人一首」くらいならできるだろう。十人なら小倉百人一首の中から選ばせてもいいだろう。正岡子規以降の短歌で選ばせてもおもしろいと思う。ただ写すだけではなく、意味を調べる。情景画をつけるのもいい。そうすることによって内容を深く理解し、詩歌に興味を持ち、自分のものにできる。


 日本の伝統文化となったかるたを、ただ遊ぶだけではもったいない。いろんな活用方法があるので、使えるものは何でも使って覚えていきたい。

 藤原定家「小倉百人一首」を使ったかるた、カルタ、歌留多、骨牌の子どもたちへの指導法。今回で、4回のうちの最終回。


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