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渡邉りょうのゴールから感じた「ゴールへの嗅覚」

サッカーを観ていると、色んな造語を知る場面があって面白いと思うのですが、その中でも特に秀でた表現だな、と思う言葉があります。

それが、

ゴールへの嗅覚

という言葉です。

優れたストライカーの能力を表現する際に用いられます。その嗅覚が優れているが故にゴールが量産できる。


この言葉。


確かにサッカー経験者でもない私でも「感覚的」にスッと入ってきます。

しかも「嗅覚」という、人間の五感で比喩しているところなんかは上手いなと感じます。


具体例で挙げればこんなゴールではないでしょうか?

2024年9月14日。明治安田J1リーグ「柏レイソル vs ジュビロ磐田」前半6分の渡邉りょうのゴールです。

ジュビロ磐田の中村駿のクロスに対し、ワンバウンドしたボール。ゴールキーパーがキャッチする直前、まさにその瞬間、ダイビングヘッドで飛び込んでボールをゴールに押し込んでいます。

クロスの瞬間の走り出し、ダイビングヘッドのタイミング、まさに嗅覚の成せる技ではないでしょうか?

渡邉りょうは、このゴールを以下のように振り返っています。

ニアに1枚しっかり走るということはチームの約束でもあるので、そこは意識していました。本当に良いボールが来たので、あとは頭で触るだけでした。

ジュビロ磐田公式ホームページより

この

「本当に良いボールが来た」

というところ。

ニアに走ることは決め事で、かつ、培った技術があってのゴールなのでしょう。しかし、そのボールにジャストに合わせて走り込むという、いわゆる「ゴールへの嗅覚」が成せる技なのだと感じました。


ところで、この「嗅覚」という言葉。それを言語化するのは結構難しいのでは?と推測します。

「嗅覚」すなわち感覚ですから。

素人ながら、私独自の解釈では

「ボールに当てれば確実にゴールになる場所や、走り込むタイミングを反射的に察知できる能力」

だと思っています。

有識者方々から異論あるかもしれませんが、あくまで独自の解釈ですのでお許し願いたい。

一方で嗅覚というくらいなので、サッカー指導者、または嗅覚に秀でている人・会得している人が第三者に伝えるということは非常に難しい能力なのではないかと感じます。


マンチェスター・シティFCのグアルディオラ監督はその嗅覚を「もって生まれたもの」として以下のようにコメントしています。

ゴールへの嗅覚は誰かから教わるものではなく、生まれ持った才能だ。私は(アルゼンチン代表FW)セルヒオ(・アグエロ)や(ブラジル代表FW)ガブリエル(・ジェズス)にゴール前での嗅覚について指導することはできない。

サッカーキングより

各国を代表する選手が集まるクラブですから、そもそも、そんな選手達に敢えて決定力や嗅覚について教えることなんてないような気もしますが。

それでもやはり、もって生まれたセンスが相当のウエイトを占めることは間違いなさそうです。


我らがジュビロ磐田の横内昭展監督は、いわゆる決定力に対して以下のようにコメントしています。

ー決定力のある選手の共通点は。
「共通点は、体の向きだったり、出してもらう球への要求だったり、こだわりを持っている選手が多かった。あとは取れるところにいる。技術や判断が付いてくるが。そういうものを持っている選手かなと思う」
ー指導者目線で伝える難しさは。
プロに入っている選手はそういう部分を持っていて経験の中で研ぎ澄まされていく。若い年代の選手だとひとつアドバイスすると、自分で3、4、5、10になっていく。そういう選手が点を取れるストライカーになっていった」

静岡新聞運動部より

「こだわり」「取れるところにいる」

「そういうものを持っている選手」

やはり横内監督も、もって生まれたセンス、幼いころからの点取り屋として活躍してきた経験がなせる技であることを意識したコメントをしてます。


経験で研ぎ澄まされると語っていますので、やっぱり指導者として教えるのは難しい部類でしょうね。

更に横内監督は、磐田のかつての名ストライカーだったスキラッチ氏を偲びながら、その嗅覚について以下のようにもコメントしていますから。

ースキラッチさんについて。ストライカーの決定力はどんな時代でもすごい。
「僕も同じチームで何人かストライカーがいた。点を取れる選手は、『ここにポジションとって』というよりは局面にそこにいる。なんでいるんだろうというのは以前から思っていた。現時点でもそこにいることができる選手が点を取ると感じている」

静岡新聞運動部より

サッカーは目まぐるしく局面がかわるスポーツ。全く同じ局面は絶対におき得なません。その局面ごとに「ここ」という場所にポジションをとり、ボールを押し込む。あるいは自ら持ち込んでいってボールを蹴り込む。

選手の位置、ボールの位置、飛んでくるボールの軌道・スピード。全てケースバイケースの局面。

このケースバイケースというのが絶対に厄介なはず

「この状況では、ここに走り込め。」

と練習していても、試合での全く同じ状況が再現できることは極めてまれです。それに類似した状況、あるいは全く違う状況においても、「ここなら点を取れるはず」と反射神経的に会得している感覚。それがきっとゴールの嗅覚なんだと思います。


今年、2024年、ジャーメイン良がゴールを量産してくれるまで、ここ数年の磐田ではJ1の舞台で決定力を有するストライカーは、なかなか現れませんでした。

昨年2023年、すい星のごとく磐田トップチームに昇格した高校生ストライカー後藤啓介はベルギーへ渡ってしまいました。海外移籍自体は喜ぶべきことですが、J1で活躍する姿も見てみたかったのも正直な気持ち。いつかまた磐田に帰ってきて欲しい。

このように、国内・海外問わず「ゴールへの嗅覚」に優れた選手というのは希少価値なんだと考えます。

今後、後藤啓介のように磐田のユースから昇格するような才能あふれた選手に期待したいところです。一方で、一朝一夕にストライカーが生まれないのならば、J1で戦うために嗅覚に優れた選手の補強戦略も必要に思います。

それゆえに、渡邉りょうのような類まれな嗅覚を持ち、本人の努力の積み重ねで磨いてきた才能を有した選手が磐田に来てくれたことは、本当に貴重です。

渡邉りょうはセレッソ大阪から期限付き移籍で来ているため、磐田で活躍できるのは、この記事を書いている時点で残り8試合(セレッソ大阪戦を除いた試合数)。


その嗅覚をいかんなく発揮してもらって、磐田はJ1残留を果たして欲しい。



そしてそして、

渡邉りょうには、できれば来年も磐田にいて欲しいと、心の底から願うのです。



最後までお読みいただきありがとうございました。
ジュビロ磐田と渡邉りょうのファンサポーターに歓喜が訪れることを願って。

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