「路(ルウ)〜台湾エクスプレス」を見終わって
5月16日から3週連続で放映された、吉田修一原作「路(ルウ)〜台湾エクスプレス」が終了しました。
皆さんにもおすすめしましたので、私もしっかり視聴しました。
このところの外に出ることができなかった反動で、頭の中が「台湾行きたい」になっている中での放送だったので、台湾の風景を満喫できて、大変に楽しむことができました。
一方、ドラマはたった3回では短すぎたのではないかと思いました。
原作の良さが十分に伝わっていないような気がして残念です。
ということで、放送終了直後から原作の「路」を再読しました。
大きな違いは、主人公「多田春香」のキャラクター設定なのです。ドラマ版の春香は、主演の波留さんの演技のためでもあるのですが、主体的に生き方を選ぶという感じではなく、状況に流されているように見えます。
そんな風なのに、なぜだか心ならずも3人の男性を惑わすという、なんだかすごく魔性の女の感じがしていました。
一方、小説の春香は結構はっちゃけた感じの女性で、仕事に関しても前向き、特に台湾料理をガツガツ食べる描写がたくさん出てきます。
恋愛事情でも、日本人の恋人、繁之は仕事のストレスで鬱病になってしまい、入退院を繰り返し、自分の方から別れを切り出します。
あと、王さんという台湾鉄道のエリート社員も出てきません。
ですから、春香の恋愛に関してはドラマの中心から外れています。
ドラマ版は、春香の揺れる女心を中心に据えてしまったので、原作とは違うニュアンンスに仕上がってしまったように思います。
では、原作のポイントはどこにあったのかというと、それはまさに「台湾新幹線」のあり方そのものでした。
それぞれ違う場所で生まれた人々が、台湾と日本という国境を超えて、繋がっていくという話だったのです。
エリックと春香、たった一度だけ出会っただけなのに、1995年の阪神淡路大震災や1999年の台中大地震の時にお互いを思いやったこと。
葉山さんと中野さんの運命を変えた終戦と台湾の戦後の歩み。
台湾新幹線が威志と美青の未来になったこと。
日本のやり方に固執していた安西がユキの存在によって生き方を変える姿。
日本の新幹線が台湾で走ることで起こった社会的な影響と、登場人物のそれぞれの人生が落ち着くべきところに収斂していく様を描くのがこの小説の主題だと言えます。
じゃあ、原作を読み返してドラマにがっかりしたかというと、全く違います。直後に読み直したおかげで、ドラマで見た配役や映像が原作を読む時に再現されて、原作通りのドラマが脳内で再現できるなど、ものすごく楽い得難い体験をしました。
そんな訳で、でれば原作を読んでいただいて、ついでに実際に台湾を体験してもらいたいと思っています。
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