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クジラの時間

冬の大きな楽しみのひとつは、北の海からハワイにやってくるザトウクジラたち。

夏の間、北の海でプランクトンをたっぷり食べて栄養を蓄えたザトウクジラたちは、暖かな海で冬を過ごすために、数千キロの大海原を旅して、ハワイの島々へとやってくる。

北太平洋に約2万頭いるといわれるザトウクジラ。その半数の約1万頭が、冬の間、ハワイ諸島に集まる。

今日は海を見渡す高台へ。
クジラたちがよく見える、とっておきの場所。

風もなく穏やかな海。
クジラたちの姿を探して目を凝らす。

慣れないとなかなか見つけられないのだけれど、毎年毎年、飽きることなく探してきたおかげで、すっかり眼が培われた。

それほど遠くない海に、2頭のクジラの姿が。
時折、高く潮を吹き上げながら、悠々と横切っていくクジラたち。

しばらくその姿を追っていると、2頭は同時に、水面から大きく跳ね上がった。

空中に姿を現した巨大な体。

一瞬、時間が止まったような静けさの後、その体は緩やかな弧を描いて海へと戻っていった。

水面にバシャーーン!と大きな飛沫が上がる。

そして何事もなかったように、彼らはまた泳ぎはじめた。


すぐ目の前の海に、30トンはある巨大なクジラが泳いでいる。

何度目にしても、彼らの姿を見るたびに、私は彼らの生きる大いなる海の世界に圧倒され、この星にはまだ数知れない不思議が満ちていることを思い出す。


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