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食の実験場アメリカ

食の実験場 ファーストフード帝国のゆくえ
鈴木 透

食の実験場 ファーストフードのゆくえ

おもしろかったです。
私は、ろくに世界史を学んでいないので、美味しそうな食べ物につられて読み進めたのですが、「食」という共通ワードで、分かりやすくアメリカの歴史を説明してくださっています。

アメリカの代表的なファーストフード、ハンバーガーやホットドッグ、そしてケチャップやマストタードなどの万能調味料が、ドイツ系移民の料理に端を達している事実。

入植時代に誕生したガンボーやチリといったエスニックフードが、入植者と先住民族とのフュージョン料理であることと、寿司がアメリカでスシロールとへと変化した事との共通性。

禁酒法時代の、低アルコール飲料にかわる「安全な飲料水」を手に入れる必要性から開発された、ドクターペッパーやコカコーラなどが、販売初期は「健康飲料」として売り出された経緯。

アメリカの食のルーツは、画一的なファーストフードとは異なる、異文化との融和、クレオールの歴史であることと、「健康」が食のイノベーションを起こしてきた事実を教えてくれます。

リベラルとはなんぞや

特に面白かったのが、19世紀の「金ぴか時代」による経済格差問題を、1980年のレーガノミクスから生じたIT企業の隆盛に端を発する、格差社会問題と対比させているところです。

また、格差社会の是正は、共和党のアメリカ第一主義と、民主党の多文化主義、そのどちらでも解決には至らないという皮肉が痛烈でした。

アメリカで他文化主義が台頭してきたのが1980年代以降であり、格差の拡大に伴う自己中心主義の蔓延と時期的に一致している点だ。
(中略)
アメリカにおける多分化主義は、国境の外の多様性を光景へと追いやりながら、個々のマイノリティ集団が自分たちの立場を国内で向上させるという、いわば自己中心的な目的にすり替えられてしまった感が否めない。

日本で、いわゆるリベラルと自称する人たちの主張が、不自然に排他的になってしまっている事実と、ダイレクトに直結していると思います。


効率から公益へ

本著は、資本主義の成れの果てが、ファーストフードという位置付けで、全ての人が安全に食を享受できる、効率から公益への食のパラダイムシフトを提唱して終わっているのですが、個人的には、ちょっと無理があるなと思ってしまいました。

これはおそらく、農家に対して、手厚い助成が行われ、結果農業が衰退し、安価な食糧を輸入に頼る結果となった、日本という国を知っているからだと思います。

「公益」という切り口でいくのであれば、まさにレーガノミクスの恩恵を最大限に受けた、IT業界に対してメスを入れていただきたいです。

筆者は、本書の他、スポーツや映画などのいわゆるエンタメ産業から、アメリカの歴史を綴っている方なので、個人的には「ITとゲーム」をテーマにした著書を書いたら、面白く料理してくださる感じがします。

コンピューターゲームの起源
アタリの隆盛と没落
NITENDOとSONY、日本企業がゲームを牽引した歴史
Microsoft「X-BOX」の挑戦
AppleとGoogleのプラットフォームビジネスによる覇権の奪取
FortniteとAppleの抗争からみる、ITの公益化の必要性

ものすごく読んでみたいのですが、いかがでしょうか。

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