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長編小説『くちびるリビドー』を楽しROOM

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「私がウニみたいなギザギザの丸だとしたら、恒士朗は完璧な丸。すべすべで滑らかで、ゴムボールのように柔らかくて軽いの。どんな地面の上でもポンポン弾んで生きていけるし、水の上ではプカ…
note版は【全20話】アップ済み(【第1話】は無料で開放&解放中☺︎)。全部で400字詰め原稿用紙…
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「小説『くちびるリビドー』を楽しROOM」より、ご案内と最新情報。

◎小説『くちびるリビドー』が「紙の本」になりました♪(2020年12月22日発売)“やっぱり私、…

長編小説『くちびるリビドー』第6話/1.もしも求めることなく与えられたなら(6)

「私がウニみたいなギザギザの丸だとしたら、恒士朗は完璧な丸。すべすべで滑らかで、ゴムボー…

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長編小説『くちびるリビドー』第7話/2.トンネルの先が白く光って見えるのは(1)←無…

「私がこんなにも満たされなさを抱えているのは、たっぷりの母乳を与えてもらえなかったからに…

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長編小説『くちびるリビドー』第8話/2.トンネルの先が白く光って見えるのは(2)←無…

《それは与えられて然るべきもの。こちらから全身全霊で奪いにいく必要などあるはずがない。だ…

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長編小説『くちびるリビドー』第9話/2.トンネルの先が白く光って見えるのは(3)←無…

永遠の片想い。そんな気分になるから、私はいつだってクールに大人でいようと努める。そう。母…

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長編小説『くちびるリビドー』第10話/2.トンネルの先が白く光って見えるのは(4)

私も今ならわかる。あの感じこそが、恒士朗の「他人に気に入られようという下心の一切ない、純…

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長編小説『くちびるリビドー』第11話/2.トンネルの先が白く光って見えるのは(5)

 そのベンチに横たわる人を、どうして彼だと確信できたのか。  ただ私には「わかった」のだとしか表現できない。  そして、どんなにそれが安っぽい恋愛映画にありがちな、わざとらしい演出を施されたワンシーンのようでも、私にとっては特別な意味を持つ「啓示」だったのだ。  恋は、そんなふうに唐突にやって来て、私を落っことす。  もしも未来の私が上空からこのときの様子を眺めていたとして、まだ何も知らない私に「その人があなたの運命の相手ですよ」というサインを送ろうとしたなら、やっぱり同

長編小説『くちびるリビドー』第12話/2.トンネルの先が白く光って見えるのは(6)

「実は、ちょっと話があるんだ」  恒士朗がそう口にしたとき、私たちは並んで目の前の激流に…

『くちびるリビドー』第13話/3.まだ見ぬ景色の匂いを運ぶ風(1)

 携帯電話の着信画面に「公衆電話」の四文字が表示されるとき。その相手は、ほぼ100%決まっ…

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『くちびるリビドー』第14話/3.まだ見ぬ景色の匂いを運ぶ風(2)

「やっぱりここでごまソフト食べなきゃ、こっちに来た気がしないよ」 「お昼も過ぎたことだし…

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『くちびるリビドー』第15話/3.まだ見ぬ景色の匂いを運ぶ風(3)

 母と暮らしたマンションを出ることに決めたとき、小泉社長(寧旺の父であり子役時代の事務所…

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『くちびるリビドー』第16話/3.まだ見ぬ景色の匂いを運ぶ風(4)

「悪いけどワタシ、じじいと一緒に風呂に入るなんてゴメンだからさ」と寧旺が言ったのは、レス…

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『くちびるリビドー』第17話/3.まだ見ぬ景色の匂いを運ぶ風(5)

 翌日は快晴だった。きりりと澄んだ十一月の青空は、抜けるように高い。  リビングに下りて…

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『くちびるリビドー』第18話/3.まだ見ぬ景色の匂いを運ぶ風(6)

 夕日を見た、久々に。本物の太陽が本物の海へと呑み込まれていく瞬間を。  語り続ける私たちに「時間」なんてものは存在しなかったけれど、高く晴れ渡った空に真っ白な光を放っていた昼の神は、西に傾くほど巨大化し赤みを帯びながら、確実に私たちの頭上を移動し続けていた。  そして、それを待ち構えるこの海の何者にも媚びることのない厳しさと激しさを前にしていると、嘘の言葉なんて口にするより先に風に吹かれて消えてしまう。沈黙さえ、岩に打ちつける波の音が(それは砂浜に寄せては返す平穏な波音とは