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私の面影と過ごす場所

実家を出てから、三度目の年末年始です。
……まぁまだ年末年始ということで。
一度目の年末年始は、バイトを辞めたタイミングだったので長く帰ってきてて。
二度目の年末年始は、帰ってこなかった。あの頃はバイト漬けの日々を送っていて、休むのが申し訳なかったのと仕事が楽しかったのと帰るのが正直面倒だったから。
今回帰ってきたのは、やっぱり年末年始は家族と過ごしたくなったから。紅白見たかったし。

実家、というのは自分の家であるのに自分の家ではないような不思議な家です。
使い慣れた机や階段があり、正確に明かりのスイッチが分かるのにタンスのどこに何が入っているか分からず、自分の歯ブラシがなくて置き物がいつからあるのか分からない。
新しいルールに新しい台所用品の使い方。知るたびに何か切なくなるような安心するような興味もないような。

でも帰れば帰ったでここが居場所。
どうして好きなのか分からない、どうして帰るのが億劫になるのかも分からない。
ただ、雨が降っていて誰もいない家の中がしんとしていて猫が寝ていると、時間がさらさらと頭の上を過ぎていくのが分かります。
そう、この家は時間がゆっくり流れていく場所なのです。
なぜだか、ゆっくりゆっくりと、ここでは時間が流れます。
広くて草の生い茂った庭があるせいかもしれない、母親の慌てない性格のせいかもしれない、動物がいるせいかもしれない、ここにいると時間が私を通過することを免除されている気分になります。
実家に暮らしている時はそうは思えなかったのに。
いいえ、絵の中に暮らす人間はキャンパスのことなど気にしないように、私も時間のことなど気にしたことがなかっただけでしょう。

人にとって必ずしも実家は居心地の良いものではないけれど、ここで暮らした昔の自分の面影があちこちに残る家にいると感傷的な気分になったりも。
実家って、不思議な場所。パワースポットだったりして。

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