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Gigamicの木製アブストラクトゲーム全リスト(現行+絶版 計22作)

この記事はアブストラクトゲーム Advent Calendar 2023 参加記事です。

上質なコンポーネントで知られるフランスのボードゲームメーカー、Gigamic(ギガミック)社の木製アブストラクトゲーム。現行のラインナップは6種類ですが、過去30年間にわたり他にもさまざまな木製ゲームを出版しています。意外とこれらを網羅した日本語の記事が見当たらなかったので、簡単にまとめてみました。

原則的にアブストラクト(運要素やアクション要素のないゲーム)を取り上げています。絶版のタイトルは入手困難なものが多いのですが、ボードゲームカフェで遊べたりする場合もあるようなので、タイトルを探すときの参考にしてください。

※ルールの記述は大雑把なものなので、プレイする際は公式のルールをご参照ください。アマゾンへのリンクはアソシエイトリンクになっています。


現行のラインナップ(7種)

公式サイトで「モダンクラシック」と総称されている、現在販売中のゲームです。2014年にラインナップが絞られ白を基調とした現在のパッケージデザインになりました。すべて2人用(コリドールのみ4人も可)で、カワレ以外は廉価なミニ版があります。

1.クアルト (Quarto, 1991)

ギガミック創業時からの看板ゲームで、16個の柱状のコマを使う特殊な四目並べです。各コマに「黒か白か」「高いか低いか」「円柱か四角柱か」「頭に穴があるかないか」の特徴がそれぞれ1つずつ割り当てられていて、いずれかの特徴が一致するコマを4つ並べ、かつ勝利宣言を行えば勝ちになります。コマは相手が指定したコマを置かなくてはなりません。

タイトルはもともとクアルト!(Quarto!) だったのですが、現在のパッケージになってから!がなくなったようです。

2.ピロス  (Pylos, 1994)

木のボールをピラミッド状に積み上げていくゲームです。自分の色のボールを1つずつ追加していきますが、(1)2×2の正方形ができている場合は既に置かれているボールを動かしてその上に置ける(2)自分の色だけで2×2の正方形ができた場合は、ボードから自分の色のボールを2個まで手元に戻してよい、というルールを利用してなるべく自分のボールを節約するようにします。最終的に一番上に自分のボールを置けたほうが勝ちです。

コーヒーテーブルによく合いそうなピラミッドのデザイン性が目を引きますが、実は「ボールをピラミッド状に積んでいく」タイプのアブストラクトゲームは意外と歴史があっていくつもの種類があります。

3.クイキシオ  (Quixo, 1994)

5×5に並べたダイス状のコマを使う五目並べです。はじめはすべてブランク(空白)の面が上を向いており、手番ごとに外周の16個のうちのどれかを取って自分のマーク(○か✕)を上に向け、べつの端から押し込んで5×5のかたちに戻します。縦、横、斜めのどれかで自分のマークが5つそろえば勝ち。手番で手に取れるのはブランクか自分のマークを上に向けているコマだけです。

差し込んだコマが列を丸ごとずらすため、移動後の状態が意外と予想しづらく、展開の読めない面白さがあります。

4.コリドール  (Quoridor, 1997)

ボードの両端にポーンを1つずつ置いた状態でスタートし、手番ごとにポーンを1歩動かすか、自分のストックからバリケードを取ってマスの間に配置します。ポーンはバリケードを飛び越えられませんが、ポーンを完全に閉じ込めるようなところにはバリケードを置けません。相手側のボード端に自分のポーンが到達すれば勝ちです。

バリケードを置く一手でゲームの状況が一転する非常におもしろいゲームです。遊ぶときは白熱してケンカにならないようご注意。あまり知られていませんが、ブロッケイドというルールのよく似た先行作品があります。

5.スクアドロ  (Squadro, 2018)

ラインナップのパッケージデザインが一新されて以降に加わった新顔です。ベースはドッジェムで、一方のプレイヤーが縦、他方が横方向を担当し、一列に並べた自分のコマを反対側のボード端に少しずつ動かしていきます。ドッジェムとの違いは、列によって一度にうごく歩数が異なること、さらにボード端に着いてから引き返してこなければならず、引き返すときはまた歩数が異なることです。また相手のコマを飛び越えるとその敵コマをスタート地点に戻すことができます。5つのコマのうち4つがゴールすれば勝ち。

現行ラインナップのなかではデザイン性の面で見劣りするかなというのが正直な印象ですが、BoardGameArenaの上位ランカーの間ではかなり面白いプレイが展開されているという情報もあるので、意外と奥が深いゲームなのかもしれません。

6.クアンティック (Quantik, 2019)

4種類の形状のコマ各色2個ずつ、計16個のコマを使う変則四目並べです。プレイヤーはどちらか一方の色を担当し、1つずつコマを置いていきますが、同じ縦か横の列ないし2×2で区切られているエリア内に相手と同じ形状のコマを置くことはできません。色の組み合わせにかかわらず縦、横、ないしエリア内に4種類すべての形状がそろったらその手番のプレイヤーが勝ちです。

チョコ菓子のアソートのようなコンポーネントが目を引きますが、内容的にどうしてもクアルトと比べられてしまうため、新作のわりにはもう一つ存在感がうすい印象があります。ただ「コマを置けない場合は負け」というルールにより引き分けが起こらないはずなので、その点ではクアルトよりもアブストラクトゲームのデザインとしては一歩進んでいるかもしれません。

7.カワレ(Qawale, 2022)

河原の小石を模したようなコンポーネントが面白い最新作です。ジャンルとしてはこれも四目並べで、重ねたコマを下から一つずつ落としながら縦横に移動するという、マンカラの種まきのようなメカニクスを特徴としています。タイトルにも若干マンカラ味(Owareとか)がある気がしますね。

割と古くからあるスタックメカニクスですが(参照記事)、カワレでは中立コマがあったり、端で折り返せるようにしたりといったルール上の工夫があり、8個ずつのコマ(+中立コマ8個)だけで十分興味深いゲームが成り立つようになっているようです。タクをよりカジュアルなゲームにしたような印象もあります。

絶版になったゲーム(13種)

以下は2013年までクアルト、ピロス、クイキシオ、コリドールと同じパッケージデザインで展開されていた旧シリーズです。一部器用さや記憶要素があるものが含まれます。

8.バティーク  (Batik, 1997)

人気アブストラクトゲームシリーズ「ギプフプロジェクト」の作者クリス・ブルムによるデザインです。平行に立てられた2枚のガラス面の間にブロックを落としていき、上からはみ出したほうが負けというもので、今みると物理演算をつかった落ち物パズルのような発想ですね。器用さなどが関わってくるので「運要素がない」という意味でのアブストラクトからははずれます。

9.キヴィーヴ  (Quivive, 1998)

2~5人用で、主に多人数でのプレイを想定しているゲームのようです。はじめに1~3段のディスクを配置してからポーンを配置し、手番ごとに自分のポーンを隣接するディスクに移動→ポーンの載っていない任意のスペースのディスクを(ピンセットで)1枚除去、を繰り返して動けなくなった人から脱落していくというもので、傑作アブストラクトゲームのアマゾン(Amazons)との親近性を感じます。ネット上の画像を見る限り、プレイエリアが八角形のものと六角形のものがあったようです。

10.クィッツ  (Quits,  2000)

クイキシオによく似たキューブ状のコンポーネントですが、上に穴が開いていてコマ(ボール)を置けるようになっています。対角線上に向かい合うようにボールを配置し、敵にむかって前方または左右に(キューブの対角線方向に)移動するか、クイキシオと同じように外周側の空のキューブを取って別の端から入れ直し列全体をずらします。自分のボールを相手側の一番奥のキューブに3回入れることで勝利します。

Gigamicでの出版は2000年のようですが、ゲーム自体はクイキシオより早い1991年に発表されているようです。

11.ゼニクス  (Zenix,  2000)

3色の六角柱型のスティック36本をピラミッド型に積んでいくゲーム。作者はリング迷路と同じデザイナーです。2~3人用で、二人プレイの場合は3つ目の色を半分ずつ持ち、中立色として使用します。断面側から見て、最終的にいちばん長く自分の色がつながっているほうが勝ち、同点の場合は2番目に長くつながっている部分同士を比較します。

重要なのは断面側だけなので何か空間のコストパフォーマンスがわるい印象があり、また引き分けが可能なルールなこともあって全体的に洗練されきらない印象がありますが、やってみると意外と面白いのかもしれません。紙とペンだけでわりと簡単に再現できます。

12.カテドラル  (Cathedral,  2003)

カテドラル(大聖堂)は1970年代から存在する、欧米では比較的メジャーなゲームです。したがってGigamicのゲームという印象は薄いのですが、2000年代に木製コンポーネントでラインナップに加わっていました。建築型のブロックを交互にボードに配置していって、残ったブロックの幅の合計が多いほうが負け、というもので、建築の高さや屋根の形などはゲーム性にとくに関わりがなく、実際にはテトリスのような形の平たいタイル(ポリオミノタイル)で再現できます。ブロックスの前身のようなゲームです。

13.ゴブレット  (Gobblet,  2003)

クアルトと同じく特殊な四目並べで、4サイズのカップ状のコマを手元からボードに置くか、空のマスまたはより小さいコマがあるマスに移動させて、自分の色のコマを1列にそろえることを目指します。コマをかぶせたときに下にあるコマを覚えておくという記憶要素があるため、これも厳密に定義された場合のアブストラクトからははずれます。

ゴブレットはもともとGigamicと提携しているBlue Orangeから出版されていたゲームで、2003年からクアルトに似た円形のボードでラインナップに加わっていました。Gigamicで絶版になってからも引き続きBlue Orangeから出版されています。

14.クアッド  (Quads,  2004)

これもクリス・ブルムによるゲームで、他にはない幾何学的な模様が目を引きます。1994年からプラスチック版が発売されていたようですが、2004年に木製版が加わりました。1枚ずつタイルを置いていくゲームで、タイルが隣接するときには接しあう柄が一致していなくてはならず、自分の手番でタイルが置けなければ負けになります。同時期に出ていたマグネット版ではボードの縁にも柄が入っているのですが、おそらく一人用ルールのためのものだと思います。

15.スカイブリッジ  (Skybridge, 2006)

色付きのブロックでタワーを組み上げていく2~4人用のゲームです。1段ブロック4個、2段ブロック4個、ブリッジ1個、屋根2個をボードに配置していきますが、手番では必ずそのとき一番低い段に配置しなければならず、自分の色同士のブロックはつなげることができません。自分の色の屋根を置くとそのタワーの高さに応じたポイントを獲得でき、さらにそのタワーがブリッジで別のタワーと繋げられていればそちらのポイントも獲得できます。

屋根を置くタイミングをうかがうというメカニズムはメディナを思わせますが、色や高さの制約があることで見た目より複雑なゲームになっています。

16.インサイド  (Inside, 2007)

36個のキューブでピラミッドを作るゲームです。自分の色のキューブを13個、相手の色のキューブを5個持ち、手番ごとに手元から1つずつ置いていきます。途中で自分の色だけで三角形のコーナーが作れたら、相手の手元のキューブ(どちらの色でも)を取ってピラミッドの好きな位置に加えることができます。ピラミッドが完成したら表面に出ている3面を見比べて、そのうちの2面で過半数を占めている色のプレイヤーが勝利します。

ピロスとの類似点が見えてしまいますが、インテリア性という点ではGigamicの歴代ゲームのなかでも屈指の作だと思います。作者のヘンリク・モラストはかつてのnestorgamesでもアップタウンという立体アブストラクトゲームを出していましたが、残念ながらそちらも絶版になってしまいました。

17.エクリプス  (Eclipse, 2009) 

コリドールの作者ミルコ・マルケシが関わっているもう一つのゲームです。キングにあたる「ガード」と、長短の鎖で二つずつ繋がれた「プリズナー」の2種類のコマがあり、手番ではこのどちらかを動かします。プリズナーは片方ずつ、鎖が届く範囲で動くことができ、相手のプリズナーの鎖を自分の鎖と交差させることで相手の身動きを封じることができます。相手のガードを自分のコマで囲んで動けなくすることができれば勝ち。非常に見た目のユニークなゲームですが、あまり顧みられていないようです。

18.ギュゲース  (Gyges,  2011)

2011年にGigamicの木製ゲームラインに加わりましたが、1985年から存在するアブストラクトゲームの名作です。コマは1段、2段、3段のものがあり高さに応じた歩数を動くのですが、コマに敵・味方の区別がなく、常にプレイヤー側に一番近いコマのいずれかを動かします。動かしたコマが別のコマの上に着地した場合、連鎖反応でさらにそのコマを動かすか、踏まれたコマをゴール地点以外の好きな場所に飛ばします。これらのメカニズムを利用して相手側のボード端のさらに奥にあるゴール地点にコマを入れられれば勝ちです。

作者のクロード・ルロワは継続的にアブストラクトゲームを発表しており、近年はCosmoludoというフランスの新興の出版社で複数のゲームを出版しています。

番外編(2種)

この2つはコマは木製なのですが、ボードは木ではなく布を使っています。上記までのラインからは外れるかもしれませんが、どちらもアブストラクトゲームとして面白いメカニズムを備えているので紹介します。

19.サハラ (Sahara, 2002)

ピラミッド型のコマを転がしながら動かしていくゲーム。移動は1マスだけですが、移動したマスとコマの色が一致した場合はもう一度動けます。相手のコマのどれかを動けないように囲めたら勝ち。ルールを一見した限りではサイクル(千日手)が起こりそうですが、どうでしょうか。似たメカニズムの後発ゲームにコルケオがあります。

20.トルトゥーガ (Tortuga, 2007)

カメのかたちのコマを使う風変わりなゲームです。ベースはチェッカーで、相手のコマをジャンプするとジャンプされたコマがひっくりかえります。ひっくり返ったコマをふたたびジャンプすると向きを変えて味方のコマとして使えるようになります(敵がジャンプした場合は敵のコマとして復活します)。相手側の一番奥のスペースに到達すれば勝ちで、連続ジャンプができるため、うまく勝利手順を見つけられると思わぬタイミングで勝負がつきます。

ジャンプとフリップ(裏返し)のメカニズムを組み合わせたとてもよくできたゲームで、隠れた名作ではないかと思っています。その後nestorgamesから、コマごとの特殊能力ルールを加えたタトゥータートルとして出版されていました。作者のヴィンセント・エヴァーオーはトリッキーなテリトリーゲーム・エクシットの作者でもあり、こちらもnestorgamesから出版されていましたが、残念ながらどちらも絶版になっています。


これらのほかに初期のバランスゲーム バタクランバラスト、パズルゲームのカタミノなどもGigamicから出ています。



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