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超動くマンカラ(9)~2次元マンカラは、いつ生まれた?(その1)

前回のnoteはこちら。

超動くマンカラの番外編でした。
今回は、本編に戻ります。

2次元マンカラ

マンカラのゲームメカニクスを用いた、マンカラ最高峰のゲームはなにか?
候補はいくつかあるでしょう。
その1つとして、Boardgamegeekで、「全ゲーム中100以内の評価」を得た『Five Tribes(5つの部族)』が挙げられるでしょう。

2022年(今年)には、アークライトから完全日本語版が発売されました。

このゲームでのマンカラのメカニクスですが、マスから取り上げたコマを4方向に隣接したマスに蒔く、2次元なマンカラです。

古くからある伝統的なマンカラは1次元(閉じた円周)・1方向にコマ(石、種)を蒔くので、2次元的ルールのものは(ほとんど)ありません。
2次元マンカラは「現代的(モダン)なマンカラ」の1カテゴリ、ではないでしょうか。
では、このメカニクス。
一体なにがルーツとなって発展していったのでしょうか?

Boardgamegeekのメカニズム分けの欠点?

2次元マンカラのルーツを追う際に、いろいろな資料をあさりました。
毎度お世話になっている「Boardgamegeek(BGG)」もその1つです。
メカニクス:マンカラ(Mancala)は、重宝しております。

2次元マンカラに関わるメカニクスとして、マンカラのほかにもいくつか関連してきます。
その1つが「スタッキング(コマの積み重ね)」です。

「The World of Abstract Games」には、スタッキングを用いたアブストラクトゲームをまとめたページ「Games Of Towers」があります。

スタッキングは、1つのマスに複数のコマを積んで、その状態によってさまざまなルールを適応させる、メカニクスです。
……これを、メカニクスと認めない人もいるでしょうが、とりあえずそこはスルーします。
マンカラの場合は、1つのマスに複数のコマを置いて、その状態によってさまざまなルールを適応させます。
2つの違いは、スタッキングは積み重ねるため、マンカラにない「コマの順序関係」の情報が追加されます。

さて、Boardgamegeekですが、ボードゲームを分類(Classification)するため、いくつかの項目があります。その1つが 「Board Game Mechanics(ボードゲームメカニクス)」です。
ここに、「スタッキング」の項目があるかというと、ありません。
……ないのですが、勘違いしそう(?)な名称がありまして、それはいわゆる一般的なバランスゲームに適応される「Stacking and Balancing(スタッキング・アンド・バランシング)」です。

代表例の1つをあげると、『Rhino Hero(キャプテン・リノ)』。

BGGでも、これは「バランスゲーム」のメカニクスですよ、と一応但し書きをしております。

【引用】
Players must physically stack and balance pieces.
………
NOTE: This is different than the common term "stacking" in wargames, where multiple counters are in a stack.
【翻訳】
プレイヤーは、ゲームのコマを物理的にバランスを取って積むことが必要になります。
………
注:これは、複数のカウンターがスタックにあるウォーゲームの一般的な用語「スタッキング」とは異なります。

https://boardgamegeek.com/boardgamemechanic/2988/stacking-and-balancing
より引用

BGGは、「スタッキング」はメカニクスではなく、ターム(用語)として扱っています。
この点は、個々の思想・見方がありますし、一意見として尊重します。

とはいえ、やはり勘違いで登録されてしまう事例はあります。
例えば、nestorgamesの『DIVOC(ディボック)』。

コマをスタッキングするルールですが、このゲームにない要素を持つ

バランスゲームとしても登録されてしまいました

複数の情報源を持ちつつ、ケースバイケースで利用していこうと、あらためて思いました。

Mancala Worldの2次元マンカラリスト

もう1つのお世話になっている情報源があります。
「Mancala World」です。

その中のページ「Modern sowing games(現代的豆撒きゲーム)」のなかに「Two-dimensional Games(2次元ゲーム)」の項目があり、発表年順でリストになってます。

それに記載されているなかでの最古のボードゲームは、1976年発売の『Intermedium(別名『Stepping Stones』)』です。


『Intermedium』の遊び方

『Intermedium』のデザイナーは、Matt Crispis(マット・クリスピス)さん。
Mattさんが何者か、調べてもよくわかりませんでした。
Mattさんは、ほかにもう1つゲームをつくっています。
トランプを用いたマンカラメカニクスのゲーム『Octagon』です(ルールとコンポーネントは、おおよそしかわかっておりませんが)。

では、本題。
『Intermedium』の遊び方は「The World of Abstract Games」にも取り上げていますが、おおよそ書きおこしてみます。


【プレイ人数】
2人(やっぱりアブストラクトゲーム)
【用意するもの】
・7×10マスの特殊なゲーム盤(下の図を参照)
・赤コマ32個・青コマ32個

『Intermedium』のゲーム盤。
赤のプレイヤーは右側、青のプレイヤーは左側。
線の交点が「マス」になります。

【ゲーム前の準備】
それぞれのプレイヤーの色のコマを、以下の図のように1マスに4個積み重ねたスタックにして配置します。

ゲーム最初の配置図。
数字は、そのスタックの積み重ねたコマの数。

※ゲーム盤を見て気づいたかも知れませんが、ゲーム中に相手のプレイヤーのコマとお互い重なることは、1度たりともありません。

【ゲームの目的・勝利の方法】
ゲーム盤のマスで、それぞれ赤と青で丸で囲われたマス(「都市」と呼ばれる)があります。
相手側の「都市」を自分のコマで包囲(後述)すると、勝利です。

【ゲームのすすめ方】
青→赤→青→赤→、と交互に手番がまわります。

◆コマの動かし方
手番のプレイヤーは、自分の駒が2個以上あるスタックを動かすことができます。スタック1つを選び、コマを全て取り、元にいたマスの線に沿って隣のマスにコマを1つ置きます。さらに、マンカラと同様に、コマがなくなるまで、播いたマスに隣接するマスへ移動してコマ1個を置き続けます。
コマの置き方の注意点としては、直前にコマを置いたマスへすぐ戻って蒔く事はできません(バックはできない)。

注:丸数字は、コマの数ではなく、
たんなる番号です。

手番の例(上の図を参照):
白で抜いたコマ4個のスタックを、1→2→3→4と動かします。
たとえば、1→2→1と直前に移動したマスに後戻りはできません。
また、1→2→3の次に、(白で抜いた)最初にいたマスに戻ることはできます(これは問題ない)。
もし、移動したマスに自分のコマがある場合は、上に積み重ね、まとめて1つのスタックにします(移動したマスに2個コマがあれば、積み重ねて3個コマのスタックになる)。

◆相手のコマのとり方・都市の包囲

相手のスタック(コマ1個の場合も含む)があるマスに隣接しているマスに、全て自分のスタック(コマ1個の場合も含む)がある状態を「包囲」と言います。
自分の手番でスタックを動かして、最後のコマを自分のコマが1個以上あるマスに置き、かつ、相手のコマがあるマスを包囲すると、そのマスにある相手のコマを全て取り、ゲームから除外します。
また、同様にして「都市」のマスを(相手のコマの有無に関わりなく)「包囲」すると、勝ちとなります。

包囲例:
数字の書かれた赤のコマは、囲むのに必要な相手の隣接しているマスの数です。
また、青の「都市」は、隣接している赤の3箇所のマスにコマが置かれ、「包囲」されてしまう(図の左中央を参照)と、負けになります。

【その他、負けの条件】
手番では、自分のマスにコマが1個しかない状態だと、そのコマを動かすことができません。
したがって、自分のコマが全てそのような状態となって動かすことができなくなってしまうと、負けになります。


次回の予告

ということで、2次元マンカラのルーツかも知れない『Intermedium』を紹介しました。
次回も、これまたルーツっぽいボードゲームを紹介しようかと、思います。

では。

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