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超動くマンカラ番外編:カラハ一人勝ち問題(8)~お手玉ンカラ「Seethaipandi」を拡張する(後篇(予定))

前回の番外編はこちら。

スリランカに近いインドの南部で遊ばれている、一人で遊ぶマンカラ(この記事・マガジンでは「お手玉ンカラ」と呼んでいる)「Seethaipandi(シータイパンディ)」。
この遊びで使われているゲーム最初の石の配置――7から1まで並ぶ減少自然数数列が2組――をいろいろと変えてみるとどうなるか?
で、前回書いた記事は「穴に石1個を何組も並べた場合」と「n(自然数)から1まで並ぶ減少自然数数列が2組並べた場合(例えば、n=4だと、43214321)」について書きました。

今回は、数列3組の場合を実験して、発見したことを書いていきます。
3組なので、このお手玉ンカラを「SeethaiSANdi(シータイ3ディ)」と仮に呼びます。

【先にお断りしておきます
今回の記事は(も?)、ボードゲームのトピックというよりも、数学(離散数学、もしくは実験数学)のトピックに寄っています。
その点を考慮の上、お読み下さい(と、前回も書けばよかったな)。

まずは、結果報告

「SeethaiSANdi(シータイ3ディ)」が、はたして成功しているのかどうか。
ちなみに、成功というのは「ゲーム開始後、ふたたび、ゲーム開始の盤面(石の配置と石を取る穴の位置)の状態に戻る」ことを指します。
※この特徴を持つお手玉ンカラについては、今までの過去記事を参照して下さい。

2の減少自然数数列3組(212121)から、7の減少自然数数列3組(765432176543217654321)の6パターンについて、遊んでみました。
結論は、全部できます

全手順は書きませんが、実際にかかる手数と、途中にあらわれる「穴何個かズラすと、ゲーム開始の盤面と同じ状態」を1、2個取り出してみます。
なお、「◯手目」は動かした後の終了状態です(なので、最初は0手目)。
太字にした数字は次の手で石を動かす穴を示します。

【2】21が3組

 0手:12121
 21手:12112
 42手12121
(21手×2サイクル=42 :穴3個シフト)

【3】321が3組

 0手目:21321321
 40手目:1321321
 80手目:21321213
  …………………………
 360手目21321321
(40手×9サイクル=360 :穴7個シフト)

【4】4321が3組

 0手目:32143214321
 66手目:13214321432
 132手目:21321432143
  ……………………………………
1452手目32143214321
(66手×12サイクル=1452 :穴1個シフト)

【5】54321が3組

 0手目:43215432154321
 93手目:15432143215432
 196手目:21543215432143
  ……………………………………………
1395手目43215432154321
(93手×15サイクル=1395 :穴6個シフト)

【6】654321が3組

 0手目:54321654321654321
 55手目:21654321654321543
 110手目:43216543215432165
  …………………………………………………
 495手目54321654321654321
(55手×9サイクル=495  :穴14個シフト)

【7】7654321が3組

 0手目:65432176543217654321
 176手目:16543217654321765432
 352手目:21654321765432176543
  …………………………………………………………
3696手目65432176543217654321
(176手×21サイクル=3696 :穴1個シフト)

でした(間違えてなければ)。

恥ずかしながら、「321」の3組を試した時、30手くらいでできないな、と一旦諦めています
また再開したのは、他のお手玉ンカラの検証をしたときにもっと長い手数をかけたので、打ち止めの天井が上がりました。

結果のなかに、説明していなかった「サイクル」があります。
これは、「穴何個かズラすと、ゲーム開始の盤面と同じ状態」から始めると
またことなる「穴何個かズラすと、ゲーム開始の盤面と同じ状態」になります(0手目と最終手以外に取り出したのは、これらのサイクルがわかる状態です)。
これをサイクルと呼ぶことにしました。
しかも、1サイクルにかかる手数は同じです。
なので、1サイクルにかかる手数×サイクル数=総手数となります。


3つの波がある?

「21」が3組と「321」が3組。
この2パターンの実験を終えて、全手順を比べてみると、両者に似通った特徴がありました。
1手でたくさんの石を動かすパターンが、周期的におこります。

◆「21」が3組

・石3個の移動
4手目終了:10410(5手目で3個動かす:小波)
8手目終了:01212(9手目で3個動かす:小波)

:石4個の移動
5手目終了:21101(6手目で4個動かす:大波)
12手目終了:10301(13手目で4個動かす:大波)

∴石6個の移動
20手目終了:01101(21手目で6個動かす:津波⇒サイクル完成)

◆「321」が3組

・石5個の移動
7手目終了:21062110(8手目で5個動かす:小波)
14手目終了:10210321(15手目で5個動かす:小波)
21手目終了:32410210(22手目で5個動かす:小波)

:石6個の移動
8手目終了:32121021(9手目で6個動かす:大波)
18手目終了:10240212(19手目で6個動かす:大波)
28手目終了:21210510(39手目で6個動かす:大波)

∴石9個の移動
39手目終了:02102121(40手目で9個動かす:津波⇒サイクル完成)

小波・大波・津波とも呼べそうな波が3パータンあります。

小波:「21」は4手周期、「321」は7手周期
大波:「21」は7手周期、「321」は10手周期

そしてともに、小波は大波に飲み込まれます(合流?)。
「21」:小波は13手目にはあらわれず、大波に発生。
「321」:コナミは29手目にはあらわれず、大波に発生。

最後の津波は、小波と大波が合流した、次の周期前後に発生します。

「21」:大波13手目の次の周期は20手目。21手目に津波発生。
「321」:大波29手目の次の周期は39手目。40手目に津波発生。

さらに、1サイクルの手数は、

「21」:大波7手周期の3倍=1サイクル21手
「321」:大波10手周期の4倍=1サイクル40手

と、関連性が見えます。

予想して実験

なので、「4321」3組を実験する前に、予想を立ててみました。

小波:(4→7→とくれば)10手周期にあらわれる
大波:(7→10→とくれば)13手周期にあらわれる
津波:大波13手周期の5倍=1サイクル65手

で、実験開始(1手1手遊ぶ、ともいう)。
実験最中に何度かミスを犯したのですが、ありがたいことに、この予想によって修正することができました。

で、結果発表。

◆「54321」が3組

・石7個の移動
11手目終了:32103217210(12手目で7個動かす:小波)
21手目終了:21032104721(22手目で7個動かす:小波)
31手目終了:43612103210(32手目で7個動かす:小波)
41手目終了:32104325210(42手目で7個動かす:小波)

:石8個の移動
12手目終了:43213210321(13手目で8個動かす:大波)
25手目終了:10325032132(26手目で8個動かす:大波)
38手目終了:21321036103(39手目で8個動かす:大波)
51手目終了:72103213210(52手目で8個動かす:大波)


∴石12個の移動
65手目終了:1232103210321(66手目で12個動かす:津波⇒サイクル完成)

でした。
実際の津波は、予想よりも1手遅かった。
とはいえ、おおよそ予想通りになっていました。

この予想を、さらに先まで一般化すると、

「n(n-1)……4321」3組の「SeethaiSANdi」の総手順予想
(nは2以上自然数)

小波:(2n+1)手周期にあらわれる(4、7、10、13、……)
大波:(3n+1)手周期にあらわれる(7、10、13、16、……)
津波:n(3n+1)周期。1サイクルにあたる。

です。
これに当てはまらない例外もあります。
すでに実例としてあげているものは「654321」3組。
予想だと、1サイクルが6×19=124手になりますが、もっと短く55手です。
しかも通常、元の盤面の自体になるには、穴の数だけ同じサイクル数を書けなければなりませんが、「654321」3組は、18サイクルではなく、半分の9サイクルです。
「21」3組の場合も6サイクルではなく、2サイクルで成功します。

例外が起こる場合には、何らかの特別な数字(マジックナンバー)が関わっていそうです。

侮れないさざ波

この先の4組の場合「SeethaiYONdi(シータイ4ディ……しつこい)」も2、3パターン試しています。
「21212121」を試してみましたが、どうやら不可能のようです。

「SeethaiSANdi(シータイ3ディ)」には小波・大波・津波の3つある、と書きましたが、実はもう1つさざ波が存在します。
3つの波が発生する間にある、動かす石が少ない手です。
通常の「Seethaipandi(シータイパンディ)」など、「321321」のような2組の場合は、すべて小波・大波・津波しかあらわれませんでした。
3組以上になって、はじめて現象が発生します。
このさざ波は、数列の長さをnとすると、石n個もしくは(n+1)個を動かす手です。

数列の長さが長くなると、さざ波の動かす石の数(最大(n+1)個)と、小波の動かす石の数(2n+1)の差が大きくなりますので、干渉しなくなります。
しかも、数列の長さが長くなれば、穴1つに対しての石の増加量も比例して増加するので、石の枯渇による破綻も起こらなくなります。

数列の組がどんどん増えると、津波で動かす石の数がたくさん必要になります。そのために準備として、今度は小波や大波の発生する数が増えてきますので、その分石が必要になります。
しかし、数列の組が増える場合、穴1つに対しての石の数はかわりません
それにより、小波から大波、津波へと大きくなる前に、石が枯渇して波が礫れしまうのではないか、と推論します。

「21212121」は、100手ほどまで実験しましたが、25手目で石6個移動があらわれましたが、そのあとは、石3個4個の波が散発的に続く状態で、その後大きい波があらわれるのか、さらに続けないとわかりません。

締め

えらく長くなってしまいました。
「Seethaipandi(シータイパンディ)」の一般拡張の話は、ここで一旦区切ります。
もしかすると続くかも知れませんが、他のことをやらねばだし、やりたい。

次回は、本編にもどるのか、はたまたまだまだ番外編かは、未定です。
考えます。

では。


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