加藤香流@Kanare_Abstract

ボードゲームデザイナーの加藤 香流(かとう かなれ)です。2020年にnestorga…

加藤香流@Kanare_Abstract

ボードゲームデザイナーの加藤 香流(かとう かなれ)です。2020年にnestorgamesでデビュー、2021年にオリジナルアブストラクトゲームの出版を目的とするKanare_Abstractを立ち上げました。https://kanare-abstract.com/

マガジン

  • Kanare_Abstractのゲーム

    私のデザインしたゲームやKickstarterキャンペーンのページをまとめています。

  • アブストラクトゲームの世界

    アブストラクトゲーム(運要素のないボードゲーム)全般に関する自分の記事をまとめています。

最近の記事

おかげさまでファンディングゴールを達成いたしました! キャンペーンは土曜の午後1時までです。 https://www.kickstarter.com/projects/kanareabstract/trike-slyde-hexentafl-makemuster

    • アブストラクトゲーム新シリーズの出版を開始します【Kickstarter日本語訳】

      わたくし加藤香流の運営するKanare_Abstractは、独立系ゲーム出版者として、数年来ファブリックボードスタイルのポータブルなアブストラクトゲームをセミオンデマンドで製作・販売し続けていました。 このスタイルは一定の支持を得ることができ、私自身気に入っているものではありましたが、しかし材料の発注や手作業の手間が多く、注文を受けている間に新たなゲームのデザインが進められないため、希望するようなサイクルで新しいゲームを出版できないという欠点がありました。 そこで、今

      • マス目 VS 交点 ゲームボードの2つのタイプ

        ここのところKanare_Abstractからの新しい製品を出版できていなかったのですが、メリディアン以来半年ぶりくらいに「汎用ボード アルケルク」「汎用ボード カラーパック」をウェブサイトに追加しました。ちなみに間が開いたのはネタ切れのためとかではなく、5月中にクラウドファンディング開始を予定している次の製品の準備に時間がかかってしまったためです(これについての情報は少しお待ちください)。 「アルケルク」はアジア起源と考えられる中世(10世紀頃)のゲームで、同じボードを使

        • 新作ゲーム「チェス・テリトリアル」のご紹介

          ここのところゲーム出版のほうの活動が裏の進行上の理由で滞り気味なのですが、その間に既存のゲームコンポーネントを使って遊べる新作アブストラクトゲームをKanare_Abstract公式サイトに追加したので紹介させてください。「チェス・テリトリアル」(領土チェス)というゲームです。 どのようなゲームかチェス・テリトリアルは変則チェスの一種で、「捕獲も移動もないチェス」をコンセプトに作られました。このゲームは通常のチェスセット一式(100円ショップのものでも)があれば遊ぶことがで

        おかげさまでファンディングゴールを達成いたしました! キャンペーンは土曜の午後1時までです。 https://www.kickstarter.com/projects/kanareabstract/trike-slyde-hexentafl-makemuster

        マガジン

        • Kanare_Abstractのゲーム
          11本
        • アブストラクトゲームの世界
          19本

        記事

          オセロは日本発祥のゲームじゃないです

          昨年末、オセロ解決のニュースに絡めて以下のエントリを投稿しました。 内容的には軽いエッセイなのですが、この執筆のためにオンライン上のオセロに関する資料を検索したとき、「オセロは日本発祥のゲーム」とか「オセロは茨城県水戸市発祥のゲーム」といったことを書いている投稿やページに頻繁に行き当たることに気づき、だいぶモヤモヤした気分になりました。端的に間違いだからです。 オセロの成り立ちに関しては、誰もがとりあえず確認するであろうWikipediaで、多数の典拠とともに非常に詳細に

          オセロは日本発祥のゲームじゃないです

          アブストラクトゲームの有限さ

          先日、代表的なアブストラクトゲームのひとつオセロ (※1) の解決を証明したという論文が話題になりました。 論文は査読前で、アルファ・ベータ探索法を改良したプログラムを使用しています。膨大なゲームツリー探索の計算量を減らすために複数のアルゴリズムを組み合わせており、証明の妥当性にはついてはまだ疑問の声もあるようです (※2)。 もっとも、オセロは一定の手数のうちに終了することが保証されている有限ゲームであり、その性質上「最善手では先手勝ちか、後手勝ちか、引き分けか」が必ず

          アブストラクトゲームの有限さ

          パー タム (Pah Tum) は捏造されたゲームだったようです

          2022年からクラシックシリーズの1作として、クラウドファンディングののちクィーンズガード、モリスとともにウェブサイトで販売していたパー タム (Pah Tum) というゲームについて、再調査の結果、実際には各サイトで説明されているような古代アジアのゲームではなく、おそらく捏造された現代のゲームである可能性が高いことがわかりました。 ↑ ページは残していますが販売は停止しています。Kanare_Abstract版では私が考案したオリジナルヴァリアントも付属しており、現代のゲ

          パー タム (Pah Tum) は捏造されたゲームだったようです

          Gigamicの木製アブストラクトゲーム全リスト(現行+絶版 計22作)

          上質なコンポーネントで知られるフランスのボードゲームメーカー、Gigamic(ギガミック)社の木製アブストラクトゲーム。現行のラインナップは6種類ですが、過去30年間にわたり他にもさまざまな木製ゲームを出版しています。意外とこれらを網羅した日本語の記事が見当たらなかったので、簡単にまとめてみました。 原則的にアブストラクト(運要素やアクション要素のないゲーム)を取り上げています。絶版のタイトルは入手困難なものが多いのですが、ボードゲームカフェで遊べたりする場合もあるようなの

          Gigamicの木製アブストラクトゲーム全リスト(現行+絶版 計22作)

          BEST COMBINATORIAL 2-PLAYER GAME OF 2022 内容紹介

          BoardGameGeekのアブストラクトゲーム・フォーラムで有志により例年開催されている、2人用アブストラクトを対象としたBEST COMBINATORIAL 2-PLAYER GAME(ベスト・コンビナトリアル・2プレイヤーゲーム)の選考が今年も行われ、Nick Bentley(ニック・ベントリー)氏のStrands(ストランズ)の受賞が決定しました。おめでとうございます!(選考結果のページ) ニック・ベントリーさんは2015年にCircle of Life(サークル・

          BEST COMBINATORIAL 2-PLAYER GAME OF 2022 内容紹介

          ゲームマーケット2023秋の新作アブストラクトたち(+2023春新作)

          昨年に引き続き、明日より行われるゲームマーケット2023年秋で出品される新作アブストラクトをまとめました。 前回同様、運要素を排除しているゲームを五十音順に取り上げさせていただいています。(セットアップ時のランダム要素はあり) 値段はゲムマ価格です。内容に間違い等ありましたらお手数ですが筆者までご連絡ください。 2023年秋新作アナウメモグラ (ゲームNOWA) ・2人用 5~10分 10歳~ ・ゲームデザイン:木村陽介 ・100円 紙ペンゲーム。各自の色の線で点を結

          ゲームマーケット2023秋の新作アブストラクトたち(+2023春新作)

          謎のボードゲーム「PICKIT」のルールを調べた

          経緯2020年にアブストラクゲームのデザインを始めた頃から、勉強のためネット上にあるアブストラクトゲームの情報を収集し自分用にデータベース化するという作業を行っています。 意外と面倒で最近少しさぼり気味なのですが、ざっと数えて1500程度のタイトルが画像、ルール、主要メカニクスなどの摘要と参照用リンクともにまとめられていて、ルールを思い出したり、類似するゲームを探したり、特定のメカニクスの発生時期を推定したりするのに便利です。 そうした収集作業を行っていると、当然ながら「

          謎のボードゲーム「PICKIT」のルールを調べた

          メリディアン ー新しい古典【Kickstarter】

          メリディアンは、視線と呼ばれるメカニクスを利用した新しい2人用アブストラクトストラテジーゲームです。ゲームのスタイルは囲碁に似ていますが、目標は敵の殲滅であり、ゲーム体験はまったく独自のものです。ルールセットはきわめてシンプルであり、だれでもすぐにルールを覚えて深いゲームに没入することができます。 メリディアンで使用するボードは少し特殊で、下のような六角形ボードの交点を使用しますが、側面の2辺はほかの4辺より短くなっています。この形状により、ボードから唯一の中心点を無くし、

          メリディアン ー新しい古典【Kickstarter】

          先手有利をどう軽減するか —アブストラクトゲームにおけるバランスルール

          Noteでもたびたびご紹介している私の考案したアブストラクトゲーム「メリディアン」につきまして、先日オプションルールとして新たに「パイルール」を追加することが決まりました。これはヘックスやツイクストのような接続目標のアブストラクトでよく使われる、先手と後手の有利さのバランスを取るためのルールです。通常、先手が最初に駒を置いた後、後手が先手と交代するかどうか選べるというかたちを取ります(後ほどもう少し詳しく紹介します)。 メリディアンは捕獲ルールが独特で、当初このルールが先手

          先手有利をどう軽減するか —アブストラクトゲームにおけるバランスルール

          非商業アブストラクトの世界

          アブストラクトゲームは「運や隠蔽要素がない」という特徴を持つ、定義上ボードゲームの(ややニッチな)一ジャンルです(この用語には独特の紛らわしさがあり、人やシーンによってはやや異なる意味合いや意味範囲でも用いられることは過去の記事で触れました)。とはいえ、実はボードゲームの一ジャンルとしては少々変わった特徴があります。それは「物理的かつ商業的な形で出版されていないゲームが多分に含まれる」という点です。 今回の記事は、一般的なボードゲーム愛好者の目からは隠れがちな「出版されない

          非商業アブストラクトの世界

          禽将棋の鳥 ―なぜこの鳥たちなのか?

          すでにnoteでもお知らせしている通り、私はいま伝統ゲーム「禽将棋(とりしょうぎ)」のクラウドファンディングを行っています(12月14日まで!)。↓の記事はそのページの日本語版です。 ゲームの概略はそのプロジェクトページで記しているのですが、クラウドファンディング用ページという性質上、あまりこまごまとしたは書けなかったので、ここではそちらに記せなかった禽将棋の諸特徴や、駒のモチーフとなっている鳥はなぜ選ばれているのか、ということについての考察を以下に書きたいと思います。

          禽将棋の鳥 ―なぜこの鳥たちなのか?

          禽将棋(とりしょうぎ)【Kickstarter】

          禽将棋は、日本の伝統的なボードゲームである将棋の、歴史的な変種の一つです。禽将棋は日本が近代化する以前の江戸時代、18-19世紀頃に考案されました。「禽」とは鳥のことで、すべての駒に鳥の名前が使用されています。 禽将棋はオーソドックスな将棋(本将棋)とは異なる系統と考えられており、ほとんどの駒が本将棋と共通点のない動きをします。特徴的な点はすべての駒が斜め方向の動きを持っていることです。これは獲物を狙って飛び掛かる鳥の鋭い動きを思わせます。 本将棋と同様に、禽将棋の伝統的

          禽将棋(とりしょうぎ)【Kickstarter】