【短いおはなし】2月18日は「冥王星の日」

その男はTシャツにジーンズというラフな格好で現れた。そのTシャツには大きくこう書かれたいた。

「あたしはジョー」

既視感。うん? あなたはジョー?

その男はTシャツにジーンズというラフな格好で現れた。その男は自分の故郷について語った。

「普通の田舎でした。普通というのは変かもしれませんが、街には店も少なく、この街みたいに人が大勢いるわけでもなし、ぱっとしない田舎とは? と渋谷の若者100人にアンケートをとったらその上位10個で構成されているような田舎です」

その男はココアとコーヒーを頼んだ。「黒いものが好きなので、混ぜて飲みます。ココヒーです」男はそう言った。

「みなさん色々な質問をぶつけてきます。そのなかで傑作だったのは、ブーメラン愛好家からの質問で、ブーメランを飛ばすことができますか? という質問でした。私は失礼ながら笑ってしまいした。もっと他に聞くことはないのかと思いました。しかし、真面目に質問するブーメラン愛好家には真面目に答えなければいけません。
分かりませんと答えました。私はこちらでも、故郷でもブーメランを飛ばしたことがなかったからです。あとでブーメランについて調べて、元々は狩猟の道具だと知り、興味を覚えました。故郷に戻った際は飛ばしてみたいと思います」

その男は地球に間借りする、すべてのコト、モノ、セイメイに平等に尚且つ強制的に与えられている重力という力から解放されているように見えた。(この地球の平等など、重力くらいしか思いつかない)ドラえもんがそうであったように、地面から3mmほど浮いているようだった。

重力と同様に、我々には生まれたその瞬間から様々な形の力(目に見える力もあれば、目に見えない力もある。目に見えないほうがより厄介だ)が押し寄せてくる。その様々な形の力にボコボコにやられて、地面に両ひざから崩れ落ちるのをなんとか2本の脚で支えている。今更安定の4本脚に戻ることは不可能だ。戻れたらどれ程楽だろう。
バランスの悪い2本脚で頭を揺らしながらなんとか生きるしかない。

その男は解き放たれていた。重力から暴力から権力から圧力から影響力から記憶力から強制力から。

もしや、これが今の地球の目指すべき処か。

その男をみているとそう思う。目の前でココヒーを混ぜる男。その黒よりも更に黒いブラックホールに重力及びすべての不当な力が吸い込まれていく。

彼の故郷は冥王星。

2月18日は「冥王星の日」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?