〖短編小説〗11月13日は「一汁三菜の日」

この短編は1290文字、約3分20秒で読めます。

「いいから、早くイチジュウサンサイを持ってまいれ!」
怒鳴る王様の声が宮殿中に響き渡ったのは、とある国の食事時であった。

「王様、恐れながら申し上げます。この宮殿のコックも古今東西の知識をもったロッタ大臣もイチジュウサンサイがどんなものなのか、存じ上げません。したがってその料理を作ることができません。」
汗を拭きながら、秘書官はそう答えた。

「何を申すか!昨日旅の者が話していたではないか。極東の島国の、あの者の故郷では、イチジュウサンサイという料理があり、大変健康によいのだと。」

そうなのだ、昨日どうしても一晩だけとめて欲しいと旅人が宮殿を訪れた。身なりはお世辞にもきれいとは言えなかったが、昨日は祝賀祭が行われていたこともあり、特別に滞在が許されたのだった。

その時に、王様は聞いてしまった。旅人からイチジュウサンサイという料理があることを、そして健康によい料理であることも。タイミング悪く王様は日ごろの不摂生がたたり、医者から健康的な生活や食事をするように言われたばかり。一夜明け、早速イチジュウサンサイが食べたいと言い出した。

「誰も作り方を聞かなかったのか!まったく役立たずどもめ。まぁ、良い。作り方が分からぬなら調べればよいのだ。そうであろう?至急ロッタ大臣に調べさせろ!」

その話を聞いたロッタ大臣は、大慌てで宮殿の図書館に向かった。
「おい、司書のリオルはいるか?至急調べものを手伝ってもらいたいのだ。」

「はい、お待ちください。只今参ります。」
本棚の間から出てきたのは、図書館の司書であるリオルだ。この宮殿にある図書館の本の管理を行っている。

「困ったことになった、お前も噂で耳にしたと思うが、王様がイチジュウサンサイという料理をご所望なのだ。何としても作り方を調べなければならない。それらしい料理が載っている書物はないか?」

ふむふむ、じっと話を聞いていた司書のリオルはあることをひらめいたのだった。
「大臣、イチジュウサンサイという料理ですが、その言葉を分解して調べれば、あるいは何か分かるかもしれません。」

「ほぉ、言葉を分解とな。」

「はい、昨日の旅人の故郷は恐らく極東の島国『ジャポネ』だと思われます。『ジャポネ』の料理の書物は生憎ございませんが、言葉の書物ならございます。」

「そうかそうか、ではさっそく調べてみるとしよう。」

ロッタ大臣とリオルは分厚い書物を調べはじめた。

「まず、イチジュウという言葉ですがどうやら一段という意味だそうです。」
「また、サンサイとは山や野に自生する食べられる植物とあります。」

「でかした!!でかしたぞ、リオル。素晴らしいぞ!王様には司書のリオルがしっかりと調べてくれたと伝えておく。」

「ありがとうございます。幸栄でございます。」

こうして、一段の箱に宮殿のそばの山で取れた山菜を山盛りにして作られたイチジュウサンサイを見た王様は驚いたが、健康に良いと聞いていたので、夢中でそれを食べ続けた結果、大変健康的な体になり。長くその国を治めたそうな。ありがとう、イチジュウサンサイ。

「13」が「一汁三菜」の読み方に似ていることから
毎月13日は「一汁三菜の日」




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