【すごく短いおはなし】3月8日は「エスカレーターの日」

目的地は地下で、エスカレーターを使うことになった。

ステップに乗り下を見ると、永遠と思うほどに、どこまでもエスカレーターは続いている。少し先に、同じようにエスカレーターに身動き一つしないで乗っている人影がある。

わたしの後からも何人か、エスカレーターを使う人がいるようだ。

ふと隣を見ると、エスカレーターと並行して階段が地下深くまで続いている。階段でも降りる人がいるようで、地下まで階段ではさぞかし疲れるだろうと可哀想になった。

わたしはというと、ステップに乗っているだけで、どんどんどんどんと地下に降りている。階段で降りる人たちをどんどんどんどん抜かしている。このまま行くと、あっという間に地下だろう。

正直に言おう。わたしは本当は地下には降りたくないし、こんなに速いスピードでも降りたくないのだ。

しかし、私が現世で犯した罪の重さは一刻も早く地獄へ行くべきとの判断だったようだ。

また一人、階段で降りる者を抜いていく。

まだ地下には着かないでほしい。

3月8日は「エスカレーターの日」