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今あらためて、さくらふぶき 〜SideStory〜

kanakeno

前々回前回のnoteでは、認定NPO法人桜ライン311の代表であり、鉄瓶『さくらふぶき』のデザインを担当いただいた岡本翔馬さんへのインタビューを記事にさせてもらいましたが、今回は製作を担当したkanakenoを運営するタヤマスタジオの代表であり、南部鉄器職人でもある田山貴紘にインタビューをしました。

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鉄瓶に込めた想いや製作時の苦労話など、職人側から見た製作の裏側についてお伝えしたいと思います。*以下、田山を「田」、こちら(kanakeno)を「k」とさせていただきます。

k)
改めて、さくらふぶきに込めた想いを教えて下さい。
田)
我々の故郷である地域が我々が今後生きる地としてよりよくなること、そして間接的でもいいから結果的に震災の復興にも力になれたらというのが、東京で東日本大震災を経験し、その後Uターンした一人としての想いでした。我々南部鉄瓶職人に何ができるのか。湯を沸かす道具である南部鉄瓶は、その様々なフォルムやデザインに日常の情景やストーリーをのせ、湯を沸かすという機能性のみでなく、精神性を抱えたものが多いのです。ですから、桜ライン311の岡本さんがご自身や団体の活動として抱いている想いをデザインとして鉄瓶にのせ、精一杯我々職人がつくる。それを使ってくれる人が鉄瓶を使う中で、鉄瓶にこめられた想いに寄り添ってもらう。鉄瓶という東日本大震災と全く関係がないものを通じて、震災の記憶、桜ライン311さんの活動を知ってもらうきっかけがつくれたら素敵だなと思っていました。

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k)
岡本さんには、今までの鉄瓶っぽさを考えずにデザインをして下さい、とお願いしたようですが、初めて岡本さんのデザインを見たときはどのような印象を持ちましたか?
田)
華やかさと儚さが同居しているデザインにシンプルに素敵だと思いました。蓋の中心の蕾から、桜が咲き、満開となり、桜吹雪となって散っていく。古来から花といえば、それだけで桜を指すように、日本人に何か訴え続ける花。やはりそれは、一時の間に一年貯めたエネルギーを解き放ち、その後は次への力を蓄える。常にエネルギーの受け渡しを内と外でやりながら、日々必死に変わっていることで、全体としては均衡を保っている。諸行無常の考えが意識せずとも我々日本人のDNAに組み込まれているんでしょうね。時間の概念が一つの鉄瓶の中にあって、それが岡本さんの想いの中にもあることが伺えました。 その想いを鉄瓶に表現するのはとても苦労しました。 例えば、花びらを一つとっても、その大きさや数によっても当然華やかさや儚さなどの感じ方が変わってきます。花びらがない部分には肌という細かい凹凸がありますが、その肌の荒い細かいによってもパッと見た時の印象が変わってきます。特にその辺りは岡本さんと試作品をみながら細かい修正をしていき、全体の調和をつくりあげるのに苦労しました。

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*異なる絵杖を用いて一枚ずつ模様を押していきます。

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*生まれたてのさくらふぶき。ここから磨き、着色などしていきます。

k)
岡本さんのインタビューの際に、提案したデザイン画が二つあったと伺ったのですが、今のデザインを採用した理由はなぜでしょうか?
田)
そうですね、おっしゃる通り、岡本さんには二種類のデザインを用意してもらっていました。一つは現在の自分の力量では岡本さんの想いを鉄瓶に映すことができないと思い、今のデザインを採用させていただきましたが、自分の技量が追いついたタイミングでもう一つのデザインも鉄瓶にしてみたいですね。

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k)
さくらふぶきを使う方へのメッセージをお願いします。
田)
鉄瓶の軽さ、湯の注ぎ具合、湯切れなど、当然ですが道具として使いやすいように丁寧につくり上げていますので、ぜひ日常の道具として日々使って欲しいと思います。 欲を言えば、3月11日だけでも東日本大震災について、桜ライン311さんについて、地震の防災について考える機会を持っていただけたら嬉しいです。

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k)
岡本さんから、「今後は一緒に何かできたらいいですね」とお話しがありましたが、そちらも含め今後の展望を教えて下さい。
田)
ぜひ、タイミングがあればまた一緒に面白いことをやっていきたいですね。
お互い共通しているのが、「地域の未来を自分たちの手で創っていく」という圧倒的な主体性の部分だと思います。 お互いがそのような考えの元、日々の活動をしていると自ずとそれぞれの活動の交差する部分が出てくるのだと思います。 その時できることを増やしておくためにも、しっかりと自分たちの活動をさらに進めていくことが大切かなと思っています。

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「伝承」が古くからのものをそのまま後世に伝えていくことであるのに対し、「伝統」は同じ技術や材料を使いつつも新しいことに挑戦し革新していくものだと言われています。

これを踏まえると、桜ライン311さんもkanakenoも「伝承」の大切さを理解しつつ、「伝統」への意識が強い気がします。

さくらふぶきは、そのひとつのメッセージです。

田山貴紘(たやまたかひろ)プロフィール
1983年3月生まれ、岩手県盛岡市生まれ。東日本大震災を機に東京からUターン。2013年南部鉄器職人として田山和康に師事、同年タヤマスタジオ(株)を設立。2017年丁寧を育む鉄瓶ブランド「kanakeno」をリリースし、国内外への南部鉄瓶の販売、南部鉄瓶のアップデートに取り組む。同ブランドでは市民と学ぶ講座「てつびんの学校」、新しい鉄瓶ショールーム「engawa」、持続可能な若手職人育成の仕組み「あかいりんごプロジェクト」などを実施。

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*さくらふぶきの売上の一部を寄附金として贈呈した際の写真(2019年撮影)

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