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#28『CUBE CLONES』から学ぶゲームデザインの引き出し(1)「タップ待ち無しで進むクリア画面」

本記事は遊んだゲームから、一つのアイデアに注目してゲームデザインの実例を勉強していく連載記事です。

ゲーム開発のプランナーやプログラマー、ゲーム制作を志す方、アイデアのインプットのための引き出しとしてご活用ください。

今回題材にするのは小規模でとてもシンプルなパズルアプリですが、そんな中からも勉強できるアイデアはあるものです。

前回:#27『アーチャー伝説』から学ぶゲームデザインの引き出し(3)「分解で戻る強化素材」

ゲームの紹介

『CUBE CLONES』は、ブロックを動かして、ゴールスイッチを全て踏めばクリアという3Dパズルゲームです。
iOS/Android用で、¥370(執筆時点)の有料買い切りアプリ、広告は無し。

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CUBE CLONES / Yusuke Nakajima

本作の特徴はタイトルにもある通り、任意のタイミングでブロック自身を「クローン」出来ること。

クローンで増やしたブロックは全部同じ動きをするので、上手く障害物に引っ掛けたりしながら、ゴールスイッチを同時に踏ませるように操作します。

全部で100ステージ収録。20ステージ毎に新しいギミックが登場し、考える幅が広がります。ステージのサイズは「5×5」くらいが多く、狭い範囲に濃密な論理パズルが仕込まれています。

私は比較的論理パズルが得意な方だと自負しているのですが、優しすぎることもなく無茶すぎることもなく、パズル好きに程よい難易度設定だと感じました。

画面を見ると分かりますが、ミニマルで洗練されたグラフィックのテイストは、『Monument Valley』にインスピレーションを受けているのかもしれません。

(『Monument Valley』は私の連載でも初回に取り上げていますので興味があればそちらの記事もどうぞ)

#1『Monument Valley』から学ぶゲームデザインの引き出し(1)「最小限のチュートリアル」
#2『Monument Valley』から学ぶゲームデザインの引き出し(2)「UIのアニメーション」
#3『Monument Valley』から学ぶゲームデザインの引き出し(3)「音階による効果音」


パズルゲームのクリア画面、どう設計する?

『CUBE CLONES』はステージクリア型のパズルゲームというのは先にお伝えしました。さて、皆さんはパズルゲームで各ステージをクリアしたときの画面は、どのような設計を思い浮かべるでしょうか?

「おめでとう!」「クリア!」のような表示や、時間や得点など(あれば)を表示し、
「次のステージへ」
「もう一度」
「タイトルに戻る」

のようなボタンメニューを用意するのが、よくある設計かなと思います。

タップ待ち無しで進むクリア画面

さて、本作ではどうなっているかというと、ステージクリアの演出が出たあと、「NEXT」の表示が出ますが、タップをせずともすぐに自動的に次のステージへ切り替わる設計になっています。

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タップ待ち無しで次のステージへ
(CUBE CLONES / Yusuke Nakajima)

そのため、上に挙げたようなボタンメニューを用意する例とは違って、
「ここで止めておこうかな?」
「それとも、もう1ステージ遊ぼうかな?」
という判断を挟まずに済み、「もう1ステージ、もう1ステージ」とテンポ良くゲームを遊べるようになっています。

スマートフォン用ゲームは、タップ操作回数を少なくした方が良いという話を聞くことがあります。
(コントローラーのボタン連打に比べて、スマホ画面のタップは指や腕が疲れるから、と私は理解しています)

本作のように、ステージ遷移の1回のタップを削るのは、徹底していると思います。


考えてみよう

もちろん、「タップ数が少なければ少ないほど良いゲームだ」とは必ずしも言えません

本作の例では、逆に考えればステージクリア後に一息つけないという面もありますし、「今のステージもう一回やり直したい」というときに、次のステージに行ってからタイトルに戻る必要があります。

それはそれとして、無駄なタップ(キー入力待ち)を一つでも少なくできるかどうか考えてみるのは、ゲームUI設計のトレーニングになるでしょう。

例えば、RPGでフィールドに落ちている収集アイテム(石とか木の棒みたいな)を拾ったとき、いちいちメッセージをタップで消す必要があるでしょうか? 一定時間で消えるポップアップメッセージでも十分では無いでしょうか?

立て看板を「調べる」しなくても、近くを通過するだけで看板のメッセージが飛び出すようなゲームもあります。

バトル終了後に経験値やお金を手に入れた後、そのまますぐにフィールドに戻る設計には出来るでしょうか。レベルアップやレアドロップが出たときなど重要なときだけでいいかもしれません。

(タップ待ちとは違いますが、『MOTHER2』では敵より十分に強くなると、戦闘画面にすら入らずに勝利になるというシステムがありました)

他にも、ゲームのタイトル画面で「TOUCH SCREEN」というのは必要でしょうか。最初から「つづきから」「はじめから」のメニューが出ていてもいいのではないでしょうか。

逆に考えてみると、タップ待ちを用意するのであれば相応の理由があるべき、と言えるかもしれません。

例えば、
・プレイヤーが読みたい情報をゆっくり読ませるため
・一息つけるタイミングを作るため
・タイトル画面のビジュアルを広く見せるため
など。

あなたの開発しているゲーム、構想しているゲームで、タップ待ちをしている箇所や画面遷移はあるでしょうか。

そのタップ待ちをカットすることは出来るでしょうか?
その場合、どんなメリット・デメリットがあるでしょうか?
プレイヤーのテンポ感がどう変わるかを考えてみましょう。

プログラマーの視点

ゲーム中のそれぞれの画面に「タップ待ち」が必要かどうかは感覚的なところがあります。

仕様書に指定があったとしても、実際にプログラムを動かした後で「うーん、やっぱりあった方がいいかな……」「いや、無いほうがいいかな……」と調整が入ることも多いでしょう。

こういう処理は画面ごとに1から実装していたらキリがないため、汎用的な「タップ待ち」の仕組みを作っておくのが良いでしょう。
例えば、WaitTouchScreen() のような関数を用意しておき、
・秒数を指定して呼び出した場合は、時間経過後に自動で遷移
・0秒に指定した場合は、タップ入力があるまで待ち
のように簡単に挙動を切り替えられるようにしておくと、調整が効きやすいでしょう。

皆さんも一緒に色々とアイデアを考えて、より良いゲーム作りのための鍛錬を積んでいきましょう。

本記事がゲーム制作をする皆さんのインプットに役立てば幸いです。

この連載が、ゲーム開発のインプットに役立つと感じていただけたら、是非評価やシェアをよろしくお願いします。


本連載の趣旨については下記記事をご覧ください。


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(※本記事中のゲーム画像は、「引用」の範囲で必要最低限の範囲で利用させて頂いています)