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#3『Monument Valley』から学ぶゲームデザインの引き出し(3)「音階による効果音」

「ゲームデザインの引き出し」は、遊んだゲームから一つのアイデアに注目してゲームデザインの実例を勉強していく連載記事です。一緒に勉強していきましょう。
今回は『Monument Valley』(モニュメントバレー)から第3回目の記事です。

『Monument Valley』の紹介

『Monument Valley』は「錯視トリック」が特徴的なスマートフォン用パズルゲームです。

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『Monument Valley』 (c) ustwo games

本作は、ステージ中の通路をタップすることで主人公の少女を歩かせてゴールを目指すのが目的です。

ゲームシステムとして、錯視で有名な「エッシャーのだまし絵」のようなギミックが取り入れられているのが最大の特徴でしょう。
(PSP/PS3で発売されていた『無限回廊』シリーズをご存知の方はイメージが伝わるかと思います)

通路の途中には「回転させる床」や「スライドで動かせる床」などの数々のギミックがあるのですが、その操作により、錯視によって本来繋がるはずのない通路同士が繋がり、思わぬルートでステージを進んでいくことができる、不思議なパズルとなっています。

また、どこか退廃的で空気感のある雰囲気に溢れたビジュアルデザインや、ミニマルなUIデザイン、操作音のサウンドデザインも本作の魅力と言えるでしょう。


音階を用いたUI効果音

さて、今回は「音階を用いたUI効果音」について考えてみます。

一般的にUI(ユーザーインターフェース)の操作時には効果音(SE)が鳴るものですが、普通はボタンを押したら「カチッ」というクリック音、コマンド決定したら「ポーン」という決定音、歯車を回すなら「カリカリカリ」という機械音、といった具合でしょう。

ですが、本作ではゲーム全体においてUI操作時の効果音が「音階」になっています。

どういうことかというと、効果音がそれぞれ明確に「ド」「レ」「ミ」といった音楽的な音の高さを持っています。

例えばゲーム中に出てくる歯車やスライド式のギミックを動かしたときに、ギターやシタールのような楽器を弾いているような音階が鳴るため、まるでオルゴールのようなおもちゃ箱を弄り回している気分になってきます。

パズルを試行錯誤する際にはああでもないこうでもないとギミックを動かすのですが、それがまるで音楽を奏でているかのようで、繰り返しの退屈さを軽減させているように感じます。

メニューなどのUI操作をしたときにも、ピアノやハープのようなそれぞれ違う音階の音色が「ポーン」と鳴るのですが、洗練された世界観、幾何学的なビジュアルデザインとも相まって、どこか神秘的で知的な雰囲気も感じさせます。


どういう音を選べばいいのか

このような音階のある効果音ですが、その音は何でも良いわけではなく、和音として聞き苦しくないような音楽的に整合性のある音を選ぶ必要があるでしょう。(不協和音にならない、など)

また、ピアノのような澄んだ音色は神秘的で清浄な雰囲気、シタールのような民族楽器はエキゾチックな雰囲気といったように、表現したい世界観にあった楽器を選ぶための知識も求められるかもしれません。

例えば、癒やし系のゲームには木で出来た楽器であるマリンバなどの音色。激しいバトルがあるゲームにはエレキギターの音色など。宇宙空間が舞台のSFではシンセサイザー系の音色など。SEだけでなくBGMを流す場合にもこの辺りのセンスが必要になってきそうですね。


効果音の選び方を考えてみよう

あなたの遊んでいるゲームや、開発しているゲームで「音階の操作音」または「楽器の音色」を取り入れるとしたらどのような箇所が考えられるでしょうか。

パズルゲームで連続消しのようなコンボが発動したときや、複数回レベルアップをするときに、だんだん効果音が高くなっていくなどはどうでしょうか。
アクションゲームで、連続して動作するギミックがよく聞いてみると音楽になっているとかも面白いかもしれません。(マリオメーカーで曲を作っているステージなどがありますね)

また「音階」を用いなかったとしても、ゲームを彩る効果音は現実的(写実的)な音なのか、それとも電子空間的なサイバーな音なのか、どういう世界観をベースとしていて、プレイヤーにどういった気分を思わせたいかについては整理する必要があるでしょう。

フリーの音素材を集めてきて鳴らすにしても、効果音の選び方について考えてみることで、一段階上のサウンドデザインになるかもしれませんね。


本連載の趣旨については下記記事をご覧ください。

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(※本記事中のゲーム画像は、「引用」の範囲で必要最低限の範囲で利用させて頂いています)