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筋ジスで車椅子ユーザーの出産体験記①

2021年5月中旬、私は初めての出産を経験しました。
顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーで車椅子を使っている人の出産例は少なく、私も情報収集に苦労したため、体験記を綴ってみました。
※「顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーならでは」の情報は太字にしました。同じ病気の方の参考になればと思います。

筋ジスで自然分娩(経膣分娩)はできる?

妊娠を周囲に報告したときに、よく質問されたことの一つが、「自然分娩はできる?帝王切開で産むの?」というものでした。

筋ジストロフィーには様々な病型があり、病型によって症状は大きく異なるのですが、私の顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーの場合、自然分娩は可能とのことでした。

赤ちゃんをお腹から出すためには、子宮の筋肉を収縮させる必要があります。

筋ジストロフィーでも侵されやすい筋肉と、そうでない筋肉があり、私の病気は子宮収縮の筋肉には影響を及ぼさないだろうというのが理由です。

しかし、腹筋は病気によって弱くなっており、万が一お産がうまく進まなかったときのために、帝王切開に切り替える準備は整えて臨んだ方がいいとのことでした。

私は陣痛を体験してみたい!と思っていて、自然分娩での出産をとても楽しみにしていました。

赤ちゃんが逆子に!?

しかし、妊娠7ヶ月に入って赤ちゃんが「逆子」であることを指摘されました。

「逆子」とは?
基本的に赤ちゃんは、子宮の中で頭を下にした姿勢で成長する子の方が多い。でも時には頭が上になっている赤ちゃんもいて、それを逆子と言います。

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引用元

出産のときまで逆子が治らない場合、経膣分娩だとリスクがあるため、基本的に帝王切開での出産になります。(これは病気関係なく一般的に)

赤ちゃんの発育には何ら問題はなく、逆子になる原因は分からないそうですが、車椅子生活で歩かないことにより振動が発生せず、重たい頭が重力で下に降りるということができないのでは、と産科の先生は言っていました。

なので、私はプールに通い水中で歩きまくりました。水中なら浮力があり、歩くことができるのです。転倒の心配もありません。
「頭を下に、足は上に、ぐるっと回るんやで〜」と毎晩お腹の赤ちゃんに向かって話しかけました。

その甲斐あってかなくてか、なんと妊娠9ヶ月、33週にくるりんと回転、逆子が治ったのです!

妊娠9ヶ月にもなると赤ちゃんは大きくなっており子宮内は狭いので、この段階でまた逆子に戻ることは少ないのだそう。

嬉々として、イメトレやら呼吸法やら、自然分娩の練習を始めました。

……のはずが!!

ある日の晩。
「ん…?骨盤めっちゃ蹴られるな…。足、胃の方にあるはずやねんけどな…。」

35週の妊婦検診。
先生「あれ!?逆子になってますね…。もうお腹の中かなり狭いのに動いちゃいましたね…。」

ずーーーーーん。

先生「帝王切開の予定いれますね。この時期で回ったからまた回るかも。手術までに逆子治ったら自然分娩に切り替えますので。」

38週(臨月)の手術までプールで歩き、お腹に語りかけ、なんとか回ってもらうよう胎児への交渉を重ねたのですが、「我、動かん。」と逆子は治らず。

この子は地に足つけたいタイプなんやなと思い、「いざ、切腹!」と腹を括ったのでした。


いつ生まれてもおかしくない時期に入り管理入院

帝王切開の1週間前、37週で管理入院をしました。

筋ジスは筋肉の病気なので、子宮口の筋肉も弱くなっている可能性があります。

その場合、陣痛が来るとお産が一気に進み、病院にたどり着く前に、タクシーの中などで赤ちゃんが産まれてしまう危険があるとのことでした。

加えて、私の場合、自宅から病院までが遠かったのです。
私は家の近くの病院ではなく、筋ジスを以前から診てもらっている都外の病院で産むことにしていました。

妊婦健診は新幹線(品川→新横浜で10分!)で通っていたので負担は大きくありませんでしたが、「陣痛きた!生まれる!」となってから新幹線に乗るのは現実的ではありません。深夜に陣痛が来た場合もタクシーで向かうには遠すぎました。

そういった面でも早めに管理入院しておくことが安心だろうとの判断でした。

入院中は特にやることもなく、1日1回お腹にモニターをつけて30〜40分赤ちゃんの心拍を測定。

「うん!今日も赤ちゃん元気だね!」と助産師さんに褒められるだけの生活でした。

逆子であること以外、赤ちゃんに異常なし。
外の世界に向けて、しっかり成長していました。

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手術前日、帝王切開が決定

手術前日は最後の胎児エコー。
赤ちゃんのお尻は私の骨盤にすっぽり。逆子のままであることを確認しました。

帝王切開での出産が決定しました。

手術前夜は0時から絶食。
夕食を完食し、院内のコンビニで調達したショコラバームクーヘンを食べ納めて、ベッドに入りました。

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涙の出産前夜

やはり前夜は眠れませんでした。

妊娠が分かってから約7ヶ月、つわり、早産を防ぐ手術、動かなくなっていく体、成長していく赤ちゃん、しんどかったことや嬉しかったことが走馬灯のように駆け巡りました。

そして、夜中に目が覚めるほどの激しい胎動と過ごす、最後の夜。

横になって感じるお腹の中の赤ちゃんの動きは、体内にいるのに、添い寝してるような不思議な感覚でした。

静かにこっそりと、力強い生命をいま私だけが味わっている、その時間が好きでした。

ようやく会えるのが嬉しいような、離れてしまうのが寂しような気持ちで泣いてしまいました。

あらかじめ生まれる日が分かる予定帝王切開は、こうしてお腹にいる赤ちゃんを最後に落ち着いて愛でることができるところが良いなぁと思いました。

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