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生活記4|ドイツ語のちょっとした会話たち

語学学校で1日3時間の授業を6週間受けた。ときどきするりとドイツ語が口をつくたび、その喜びに浸っている。

満月の夜

広い空に浮かぶ満月を見ようと心待ちにしていたその日の夜、寮から20分ほどのホテルの駐車場まで歩き、留まる。辺りを見渡して写真を撮りはじめると、一台の車(Audi)が出るところだった。

手を振り私の存在を知らせつつ道の端によけると、車のほうもスピードがゆるむ。40代後半くらいの男性が、左側の運転席から助手席をはさんで、エンジン音に負けず劣らず話しかけてきた。

Audi: Xxx xx xxx? 
Ich: Bitte?
Audi: Was machst du? (何してるの?)
Ich: Ach! Foto machen! Moon! (あー、写真!撮る!月!)
Audi: Aber warum?(見ればわかるけど、なんで?)
Ich: Mmm schön! (うーーん、美しい!)
Audi: Aaach! Schön! Alles klar! Kannst du gut fotografieren? (ああ!「美しいから」ね!あそう!はっきりしたよ。いい写真撮れそう?)
Ich: Ja! (うん!)
Audi: Dann tschüs! (じゃあね)
Ich: Tschüs! (はい、じゃあ!)

とこんな感じだった。私は文法も単語もめちゃくちゃだけど(「月」は英語でMoon/ドイツ語はMond)、最初から最後までドイツ語しか使わなかったのが自分にとってよかった。

その日の昼

その日は昼にも初対面の人と話をした。電車の中で、カップル風の二人組のうち赤いワンピース(Rotes Kleid)の女性に、Tempelhof(テンペルホフ)駅への行き方を聞かれた。
...のだが、駅名以外なにも聞き取れなかった私は、自分のリスニング力の低さに萎縮し、よく知っているその駅への行き方を「知らない」と答えてしまう。

Kleid & Ich: (目が合う)
Kleid: (私の前に来てちょこんと座る)
Ich: (にこっとする)
Kleid: Xxxxx xx xxxx x Tempelhof xxx xx?
Ich: Tempelhof? Ich weiß nicht, aber Sie können das App benutzen. (テンペルホフ駅? すみませんがわかりません、でもあなたはこのアプリを使えます)
Kleid: (私の差し出した検索アプリに入力するもスペルがわからずヒットしないようす)
Ich: kannst du nicht? (できない?)
Kleid: Nein... Danke. (できないわ...ありがとう)

そうして二人で電車を降りていった。乗っていた電車が正反対の方向だったので、Tempelhof と聞こえはしたけどまさか Tempelhof ではないだろうという自問自答により彼らを手助けできなかった。次の機会にはもっとよい形で振る舞いたい。

満月の前日

満月の前日も、よく晴れていた。iPhoneによれば最近の日没は21時30分頃だが、そこから1時間ほど濃青のグラデーションをパノラマで楽しめる。

そのグラデーションのさなか、寮の裏庭まで散歩に出ると、普段は穏やかなその場所で、賑やかな声、もくもくと立つ煙、そしていい匂いが五感を刺激する。

見れば10〜15人ほどの男性が楽しげにバーベキューをしていた。そして偶然居合わせたと思われる友人二人もそこに混ざって飲んだり食べたりしていた。

はじめは軽く挨拶をして、卓球を再開した友人たちの様子を眺めていたのだけれど、数分経ったところでバーベキューの集団の親分みたいな立派なお腹の男性に声をかけられる。クリムトと同じファーストネームを名乗られたような気もするが、ずっと(心のなかで)オヤブンと呼んでいるので、忘れてしまった。

Oyabun: Hast du schon gegessen?(もうご飯食べた? ※夜9時半)
Ich: Noch nicht. (まだなの ※敬語が使えない)
Oyabun: 一緒に食べる?何か飲む?お肉すき?(※ドイツ語でそう言っていた)
Ich: Wow! Ist das okay?(いいの?)
Oyabun: もちろんさ!誰でもいつでもウェルカムなんだよ!肉はチキン食べられる?飲み物は?ウォッカ?
Ich: I like chicken! Und ich möchte Apfelsaft.(チキン好き!(英語だった) アップルジュースをいただきたいな)
Oyabun: オーケー、ウォッカにアップルジュースね。
Ich: アッッッ(注がれるウォッカを見る)
Oyabun: はい(満面の笑みでカップをくれる)
Ich: (目の前のテーブル(として使っている卓球台)にいつの間にかチキンとサラダとドレッシングと小麦パンとナイフとフォークが並んでいるのを見ながら)Danke.
Oyabun: で、君は中国から来たの?
Ich: Aus Japan!(日本だよ)
Oyabun: そうかい、僕らはみんなポーランドから来たんだ。これは仕事仲間だよ。日本語で“Na zdrowie(ポーランド語)”は何ていうの?
Ich: Das ist KAMPAI!(「乾杯」だよ!)
Oyabun: みんな、日本語でNa zdrowieするぞ、いいか、Kampai だぞ!Kampai!
Alle: \\KAMPAI!//

とまあこんな感じの会話のあとも30分くらいドイツ語とポーランド語と英語で会話をしていた。

途中から何語で話されて何語を話しているかわからないことばの海に溺れかけ、それでも呼吸の仕方をずっと前から知っているような感覚でいられた。友人の一人がドイツ語を英語にしてくれたのも助かった。

暗くなって卓球ができなくなった二人はそろそろ帰ろうといい、私をコーヒーに誘ってくれたのでおいとますることに。

最後のオヤブンとの会話。

Oyabun: Wie sagt man „Vielen Dank“ auf Japanisch?(„Vielen Dank“って日本語で何ていうの?)
Ich: (満面の笑みで)ありがとう!!
Alle: \\ARIGATO!//

しあわせだった。

ドイツでできた友人たち

前段に出てきた友人二人はいずれもミュージシャンで、私がベルリンに来て2週目に声をかけた。とてもよいめぐりあわせで1か月以上コンタクトが続いている。日本でツアーをやりたいという。ぜひ実現させたい。

以上、最近のドイツ語会話より3選。写真はいずれも本日6月19日21時40分の空。


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