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女3人のインサイド・ヘッド。

夫が朝6時に出社するので、4時半起きで弁当を作り送り出す。

8時近く、起床してきた5歳の長女は
「お父さんにバイバイしたかった」とゴネだす。

先程までのひとり時間で読んだ育児本に感化されていたわたしは、その本の言う通り「共感、言語化」して彼女を慰める。
「お父さんに会いたかったね、寂しいね。」
背中を撫でてやりながら、慈愛に満ち満ちているコリャまるで聖母だな、と自分にうっとりする。

この演出により更に感情の波がたかぶったらしい娘は、さめざめと泣き出す。
「お父さんに、会いたかった…!」

小さな背中をさすりながら、今彼女の中には「カナシミ」がいるのか、と最近テレビで観たばかりの「インサイド・ヘッド」を思い浮かべる。さすが5歳ともなると、感情が成長している。

そんな姉にインスパイアされたらしく、2歳半の次女が泣き叫び出す。

オトーシャンにっ!あいたかったぁーーー!!

こちらはまだまだ「イカリ」止まりである。あいも変わらず聖母マインドのわたしは、ひっくり返ってジタバタしている次女の丸い腹をぽんぽんしてやる。…ほんとに、アンタは親父に会いたかったと思ってるんか?

ていうかこれだけ求められている父親、幸せもんじゃね?羨ましいわ。

それにしても「インサイド・ヘッド」、今更言うことでもないが、素晴らしい映画。これ9年も前の作品なのね。

特に幼児を育てる親目線だと、子どもたちが日々成長していく中で新たに手にするもの、同時に手放していくもの…まさに今、わたしの目の前で起きていることが描かれていると感じた。空想の世界が織りなすリアリズムに、涙無しでは観られなかった。個人的に、このタイミングで観たことに意味があると思う。

「ヨロコビ」の、暴力的なまでの明るさとその押し付けは必ずしも正しさではなく、もっと人間の心は複雑だ。それをヨロコビ自身が学んでいく、という描写も素晴らしかった…。
「インサイド・ヘッド2」は大人目線だと、かつての「青さ・黒さ」をエグられて身悶えするような心地らしいが、かなりの評判なので早く観たい。我ながら、影響の受けやすさが凄まじい。

水を差す余談だが個人的に…感情や理性は「頭の中」にあるとして、しかしながら「心」というのはやはり、もっと深く深く、胸の奥に存在するものだと固く信じている。

少し気持ちが落ち着いた次女のオムツを替えてやると、また床で大暴れ、オムツやだオムツやだ!!脳内の司令塔で「イカリ」と「ムカムカ」が好き放題やってんな。もうこれには共感するもの疲れるのでとりあえず放置。わたしの中の聖母は潔く消え失せた。

キッチンカウンターに立ちながら、目線を手元から食卓に向ける。すると、背伸びしてテーブルの上に顔をのぞかせ、手を伸ばす次女。フルーツをつまみ食いしようとしている。現行犯だ。

コラッ!だめでしょ!!

ビクッと静止。驚きに目を見開き、みるみる表情が崩れ、たちまち大泣き。いや、アンタが悪かろうよ…。

我関せずの長女はすっかり父親への思慕の念を忘れた様子で、ひとり静かにテレビを観ていた。

そんな、女3人、平和な朝の記憶。

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