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「奇跡の城」

「奇跡の城」
少女は野原を駆け回っていた。
山に囲まれた町を駆け回り、澄んだ空気を肺まで思いっきり吸い込んだ。
時に腹の底から笑い、時に心の深くから泣いた。
鶏の声で目を覚まし、大木の葉の揺れる音で眠った。

祖父は少女の誕生日に旅立った。
少女は父親と別れた。

少女は都会に出て、異国の友人と知り合い、心の安らぎを見つけた。
少女は社会に出て、世の中の不公平さ、駆け引き、闇を感じた。

少女は少女でなくなった。
少女は女性になった。

あらゆることを闇と感じ、生きているものの醜さを感じた女性は、
自分の中に目を向けた。
自分が生きている社会、自分の行い、考えに目を向けた。

矛盾に限界を感じていた女性は、次第に、どんな物事にも様々な面があるという
考え方を身につけた。
心が拒絶するような人でも、その人なりの正義があり、
目をつぶりたくなるような出来事にも、有益性がある。

何かを何かで決めつけることは、時に人を救うかもしれない。
しかし、何かを何かで決めつけないことも、時に人を救うかもしれない。

そう考えられたのは、女性にとって奇跡であり、自分を守る城である。
女性はそう感じたのだ。

花菜

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