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【発酵めぐり】京都・藤原食品に工場見学に行ってきました。

京都、鞍馬口駅を降りてすぐ近くにお店を構える藤原食品に工場見学に行きました。 

自分の覚書として、そして見学を快諾してくださった藤原さんへの感謝の印として。このまとめは私が自分に課した「夏休みの宿題」です😅
「〜の作り方」とかって納豆に限らず、今のご時世検索したらすぐに出てくるのですが、やはり実際に目で見てお話を伺うということは意義を感じ、自分の中で大きく印象付けらたかな〜と思っています♩

まだまだnote初心者ですが、もしよければお付き合い下さると嬉しいです!





  朝8時半、小さな納豆製造所の近所周辺はもう既にマスク越しからでも漂う、「大豆の炊けた香り」で充満していました。 


その時間はもう既に大豆が炊き上がった頃で、大豆に納豆菌を混ぜ終わったところでした。藤原さんとその奥でパック詰めを行う従業員の方と合わせて計5人でこの小さな工場を切り盛りする。 一日およそ2000~3000パックを作り上げるそうです。 その量は乾燥大豆量で90kg、大豆のもどし率はおよそ2~2.5倍であるから、180~225kgぐらいの大豆が炊き上がるということになる。それをこの圧力鍋一つで炊き上げる。納豆作りは週3回行うので、9000パックが1週間にできるということになりますね。 

 この圧力鍋一つでこんなにたくさんの納豆が作られていると思うと、驚きだでした。パック量にすると「相当な量だ。」と多く感じますが、それでも尚、地元のスーパーや飲食店に卸すほどの少量の生産量でしかないのだから驚きです…!


 では、そもそも納豆の作り方とはどのような工程・流れなのでしょうか。 

ここで、簡単に説明すると、

①乾燥している大豆を吸水させる。(「浸漬」させる。)
②大豆をかなり柔らかくなるまで「蒸す」。
③熱いうちに素早く納豆菌を大豆全体に振りかける。
④納豆をパックに詰める。
⑤40度に保った室(むろ)で15~20時間「発酵」させる。

 という工程になります。
一番にまず、納豆菌をふりかけた直後の大豆の試食をさせてもらいました。


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 (写真上:沢山のラインナップの納豆。写真下:手前の豆から順に黒豆、赤大豆、滋賀県産白大豆)

写真には写っていませんが、同じ滋賀県産白大豆「オオツル」のひきわりタイプのものも試食させてもらいました。 圧力鍋で蒸された大豆は味が濃く、黒豆も外皮まで驚く程に柔らかくねっとりと甘いんです!
(本当に黒豆も柔らかく炊かれています。甘納豆を食べているみたいでそのままがおいしいんです。)
 この試食で大豆の種類の差によって味が特別違うというのはわかりませんでした。以前、発酵食大学で大豆の試食(小粒、大粒、赤大豆、青大豆など)を経験させてもらったことはありましたが、ひきわり大豆の試食は初めてでした。その味は、あっさりしていて、甘みも控えめ。淡白な味でした。 そしてその大豆は粘り、酸味、うま味といった「納豆」の味が全くしませんでした。
 当たり前ですよね、まだまだヒトが感覚として認識できるほどの菌数ではありませんし、まず第一に「発酵」の過程を踏んでいないので菌が増殖していないですもんね。 
(納豆菌がついているのに納豆の味のしない大豆は何だか不思議な気持ちになりました!)

 納豆菌が至適環境下で二分裂を要するのに必要な世代時間(細胞分裂に要する時間)は30分なので、20時間の発酵で最大40回もの分裂を行うことになりますね。 納豆は15~20時間の発酵を経て1gあたり23億個⑴  の菌数にまで増えて、やっと納豆としてヒトに認められるまでの菌数に達します。 ここで発酵に適した温かい部屋に入れないと、この納豆菌たちは芽胞の状態で眠ったまま。発酵してくれません。醸し屋さん達は菌が住みやすくて、心地良い環境をいかにして作ってあげるかが重要なのですね!


さあ、いよいよ納豆作りの見学です。


 ①乾燥している大豆を吸水させる。

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 「前日に豆を洗って、この時期は8時間冷水で、冬場だと、ぬる湯に浸けてだいたい16時間ですね。」
と藤原さん。
夏場と冬場で浸漬させる時間が2倍も違うのだから、驚きです。
 さらに納豆作りにおいて、最も難しいという工程はこの①の大豆を「浸漬」する時間なのだそう。
何故なのか伺うと、大豆を浸漬させ過ぎてしまうと、大豆が水分を多く含んでしまうため、その他の雑菌が繁殖しやすく、「発酵」の過程で納豆菌が上手く大豆につかないのだそうです。
また、大豆を炊いている時に泡(灰汁)が出過ぎると、納豆菌の発酵時のエサ、養分となるタンパク質や糖が泡とともに一緒に流れ出てしまうのだと言います。
 (大豆の泡(灰汁)で浸漬具合までもが分かってしまうなんて驚きですね!) また、藤原さんが納豆作りを始めて間もない頃は、浸漬させる時間の見極めに失敗してしまったらしく、このお釜一台分の大豆を泣く泣く全てダメにしてしまったこともあったそう。
(それだけ難しいと言うことですね。)


 ②大豆をかなり柔らかくなるまで「蒸す」。

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 (圧力を調整している藤原さんはまさに「職人」の姿。とてもカッコ良かったです◎)

 

  私は、ひきわり大豆の蒸す過程を見学しました。
 先程、ひきわり大豆の味について「淡白な味」と言及しましたが、ひきわり納豆は納豆作りにおいて、特殊な存在らしく、その製造方法は技術を要するそう。ふつう、納豆を作るときはまず豆を浸漬させるのだが、ひきわり納豆は挽いてから、「浸漬」する。乾燥大豆はとても硬いので「ひきわり」にするにはまた別の業者さんの元で外皮を除き、砕くのだそう。
このように先に砕いてから「浸漬」させるので、外皮の中に蓄えていたうま味となる栄養素が幾つか流れ出てしまう。大粒大豆と同じ品種ですが、その味は淡白で大豆の甘味も控えめ。しかし、淡白であるが故に納豆になると納豆の独特の香りを抑えた、いわゆる「みんなに食べやすい味」に変化するのだそうです。 
(機能としての栄養の流出はどうしても否めないものだけれど、苦手な人でもオイシサとしての栄養を楽しむならバッチリですね☺️)

そして、適度に「浸漬」させた大豆を圧力釜で炊く。通常の納豆は55分で炊き上がるのに対し、ひきわり大豆は圧が下がった後、たったの5分で炊き上がる。


 ③熱いうちに素早く納豆菌を大豆全体に振りかける。

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 いよいよ発酵の始まりの段階です!
水で希釈した納豆菌を熱いうちに霧吹きで吹きかける。納豆菌は熱いうちに混ぜないと上手く発酵しない。
そして私が試食させてもらったのは、この段階の納豆です。
(本当にたくさん試食させていただき、ありがとうございました。 芽胞ってむちゃくちゃ頑固でタフなやつだけど、単一の菌を繁殖させることってすごく繊細なことで、その菌の繁殖しやすい環境下に持っていってあげないとすぐにその他の菌に押されてしまう。改めて、繊細なお仕事であると感じました。)




 ⑤40度に保った空間で15~20時間「発酵」させる。

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(この中に沢山の納豆菌がいるんですね!
独自の納豆菌を使用しているメーカーもあるそうですが、日本で納豆菌を製造しているのはたった3社のメーカー。藤原食品さんでは宮城野菌、成瀬菌、高橋菌の中の宮城野菌を使用しているそうです。)


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(丁寧に手作業と人の目で検品しながら納豆が詰められてゆきます。)

  発泡スチロール製のパックに入ったまま納豆は40度の温かい部屋で15~20時間「発酵」を行います。他の酢やお味噌といった発酵食品と比べると発酵期間が短く、シンプルですよね。
 昔は経木やワラに納豆を包むのが主流でしたが、現在ではほとんどが紙製や発泡スチロールの容器のものが主流です。
藤原さんが言うには発泡スチールの方が紙製のカップ容器のものと比べて優れるらしく、納豆菌が「発酵」を行いやすいのだそうです。確かに、発泡スチロールは保温性に優れていて、温度を均一に保ってくれますよね。
  そうして、やっと「納豆」となった大豆達はこれ以上の「発酵を」を抑えるために冷却され、京都の各スーパーや飲食店などに卸されます。 
その納豆の見た目はどこか京都を感じさせる薄い色合いで香りもキツすぎることなく豆本来の良さを生かしています。京のおばんざいによく合いそうです。



  そして、最後に藤原食品の人気商品である、「鴨川納豆」の大豆に対する想いも語って下さりました。

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  単にモノの流通だけでなく、人付き合いが大切だとおっしゃる藤原さん。 そんな藤原さんの想いから「鴨川納豆」に使われている大豆は藤原さん自ら滋賀県まで足を運び、選び抜かれた大豆を使用しているのだと言います。なんと生産者さんが自ら大豆を届けに来て下さるのだとか。そして、できた納豆を幾つか買って帰るのだといいます。 

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(藤原さんの思いが詰まった商品。滋賀県湖北町産白大豆「オオツル」を100%使用。)


先代の頃から滋賀県産大豆を使用していたそうですが、卸売業者さんを介して届く食品のほとんどは生産者さんの名前も顔もわかりません。
この現状に対して藤原さんは、 

「それって不誠実やと思うんですよ。名前がわからへんのって嫌じゃないですか。 その人とどう付き合っていくか。そういうのは作る物に出るなと思ってて。 自分の好きな人が作った大豆を好きな人が買うって。 当たり前なんですけど、農家さんも買うし、裏切らへんし、嘘つけへんし、 自分でもイメージできるし、背筋が伸びる。 根っこの考え方を大切にしたいです。 食ってことを大事にしてくれる人に食べて欲しい。」
 と語ってくださりました。

うーん、納豆。奥が深いです。 
 現代の食品はどんな生産者が作ったのか、どんな経路を辿って来たのか、複雑な流通形態になった今、私を含め、消費者達は知らないことが多いですよね。ですが、身近な人が食べていることを想い、おいしくて安心な納豆を提供したいと消費者や生産者とのつながりを大事にしている藤原さん。
消費者の私もそれに応えてついてゆきたいです!笑。
私も納豆を見ると藤原さんの顔をつい思い出したり、お豆腐を見るとお豆腐屋のおっちゃんとおばちゃんの顔、お茄子を見ると知り合いのおじさんのお顔、お肉を買うといつもおまけしてくれるお肉屋のおっちゃんの顔…いろいろな食を支える生産者や製造者に想いを馳せます。
 納豆が繋ぐ心地の良い幸せな人間関係の糸は地域に根差し、地域の人とのつながりを大事にする輪のようです。小さなこの一粒の大豆とさらに小さなこの納豆菌から、日本の食を支える生産者さんのお話まで大きな世界を覗き観ることができました。 

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(instagramに投稿しましたのはこちらの納豆。畑のルビーは小豆じゃなくて赤大豆なんじゃないか?ってぐらいに綺麗です。)

本当にありがとうございました!   


(通販もやっていらっしゃるみたいですね。)
(国産大豆の作付面積、収穫量ともに北海道が一位。関西では滋賀県が作付面積が一位だそうです。)

(かなりサイトによってばらつきがありましたが、納豆の中に納豆菌はどれだけの数存在しているのか?と言うのはこちらを参考にしました。)



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