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「上手くなる方法と強くなる方法〜石川善樹氏×森内俊之氏〜」レポート

将棋が強いって何でしょう?


創作のための祭典「note CREATOR FESTIVAL」で行われた企画セッション、「上手くなる方法と強くなる方法」があまりに良く4回も見ました。石川善樹氏(予防医学研究者)× 森内俊之氏(棋士)+ 加藤貞顕氏(note代表 )による対談です。

何度も見返したい、みなさまにもシェアしたい、と強く思ったので、こちらで共有させていただきます。

✔︎ 上手くなる方法、強くなる方法が知りたい
✔︎ 本業と全然、違うことやっているようだけど大丈夫かな
✔︎ 伸び悩み中・・・
という方、ぜひ見てみてください。あなたの能力を活かす方法、あなたの成長のヒントになるかもしれません。

何となくモヤモヤした想いを言語化してもらったり、方向性が見える気になるだけでもずっと楽で、またがんばっていこうかな、と希望を持てます。

動画はこちらから↓↓↓


以下、レポートです。(一視聴者がまとめたものです)


森内俊之さん、石川善樹さん紹介

加藤:noteフェス4日目の第一セッション『上手くなる方法と強くなる方法』を始めていきたいと思います。司会進行を務めるのはですね、note代表の加藤です。どうぞ宜しくお願い致します。

技術を習得するための上手くなる方法っていうのと、勝負とかで勝つため強くなるための技術習得法はですね。似ているようでちょっと違うと思うんですね。多分、ゲームだけじゃなくておそらく仕事とかにも関係することだと思うんですよ。

いろんなこと知っている人がすごい仕事ができるわけでもなかったり、いろいろありますよね。そういったことをテーマに今日は強力なゲスト2人に伺っていきたいと思います。早速ゲストの2人を紹介したいと思うんですけれども。お一人目は、森内俊之九段です。

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森内俊之九段

森内さんは小学校6年生で将棋棋士の養成機関である奨励会に入会されてですね。同期に羽生九段とか、郷田九段とか、かなり強力なメンツと研鑽をされて16歳でプロ棋士となって。以来タイトル12期、棋戦優勝13期の成績をあげられて。18で名人の資格をお持ちの大棋士なんです。

森内さんと僕はちょっとだけ関係があって、2013年に名人戦、羽生さんが挑戦者で森内さんが防衛する名人の立場での名人戦の観戦記を書かせていただいたんですよね。それでなんと、対局終わった後に森内さんがこの会社の創業したばかりのタイミングでオフィスに来てくださって解説してくれたんですね。

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森内俊之九段と加藤貞顕さん

この時、そこの会議室より狭い部屋だったんですけど、森内さん、名人が来て解説してくれるっていう、すごいありがたい・・。

森内:すごい、懐かしいですね。すごい専門的なお話をされていて随分お詳しくて、びっくりした覚えがありますよ。

加藤:ありがとうございます。僕、将棋がマニアで好きだって言ってたらたまたま朝日新聞からお声がけいただいて。本当にこの時のことは、すごく良く覚えています。7年前ですね。今日は宜しくお願い致します。もうお一人のゲストは、予防医学研究者の石川善樹さんです。

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石川善樹さん

石川:どうもこんにちは。宜しくお願いします。いいですね。TVっぽくていいですね、雰囲気が。

加藤:石川さんはですね、東京大学医学部、ハーバード大学医科大学を卒業されて今は公益財団法人 Well-being for Planet Earth 代表理事という立場でいらっしゃいます。実は善樹さんともですね、付き合いが結構長くて。丁度さっきの森内さんとお会いした頃7〜8年前に・・

石川
:原宿の小さいオフィスだった頃から。

加藤:来てましたよね。で一緒に、こういう本(最後のダイエット/石川善樹著)を出したりとか。

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cakes(ケイクス)でインタビューを散々させていただいて。僕、科学も結構好きなので。善樹さんに科学について伺うってことも結構やってて。今日は善樹さんと森内さんに、なんていうかお二人、普段は全然違うことをされていると思うんですけどその実、結構人間の能力とか成長とか幸福とかが関係あるんじゃないかと思ったので今日はお話を伺います。宜しくお願い致します。

将棋が上手い、強いとはどういうことか?

加藤:早速、本題に入りたいと思うんですけど森内さんにそもそも将棋が強いってどういう状態なのかってことを、ちょっと確認しておきたいんですけど伺ってもいいですか?

森内:強さと上手さっていうのはすごく定義が難しくて最初、整えていかないといけないと思うんですけど。基本的には将棋は勝負事ですので勝った人は強いというのは結果で判断するしかない、とは思いますね。

加藤:要素で言うと、いろいろあるんじゃないですか。例えば、読みが深いとか

森内:プロセスはいろいろあって、読みが深いとか、大局観が良いとか、直感力が優れている、あとどういう風なのがありますかね。持久戦に強いとかもありますね。体力的な面もありますけど。

加藤:体力的な、根性とかもありますかね。

森内:はい、総合的なところで決まってきますので、なかなかここが優れていると強いっていうのは言い難いところがあります。

加藤:それぞれ個性があるわけですよね。人によって読みが特化している人もいれば。森内さんはどの辺が強いんですか?

森内:私は結構、長い待ち時間の将棋で勝っていたので読みが深いタイプと思われがちなんですけど。自分では直感派かなと思っています

加藤
:羽生善治さんとか、藤井聡太さんとかも伺って良いですか?

森内:お二人共に、やはり感覚が抜群に良いですね。読みの裏付けも正確で早いですし二人共、隙がないというか、どこの要素取り上げても高得点を上げられるというのがお二人の強さだと思います。

加藤:いろんな要素があってバランス良く、その中でも特に直感力みたいな大局観みたいなものが優れていらっしゃる感じなんですかね。

【強さの要素】

1. 読みが深い(計算・論理)、早い、隙がない


2. 大局観がいい(目先だけでなく全体を俯瞰して見渡す力)

3. 直感力が優れている

4. 持久戦に強い、体力、根性的なものが優れている

5. 負けず嫌いである

脳の活動と思考の関係

加藤:丁度、善樹さんがこういう本(フルライフ 今日の仕事と10年先の目標と100年の人生をつなぐ時間戦略 / 石川善樹著)を書かれていて。この中で今の話を科学的に書かれていて。

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石川:時間の使い方の本なんですよね。僕が直感的に思ったことを書いたっていう。

加藤:この図の説明していただいて良いですか?

脳の活動と思考の関係
脳の活動と思考の関係

DMN:直感。アイディアを出す役割。
SN   :大局観。100のアイディアを3くらいに絞る役割。特に重要。
CEN :論理。3に絞ったアイディアを吟味する役割。将棋でいうと読み。

石川:パッと見、訳がわからないと思うんですよね。順を追って説明すると、上のアルファベットが書いてあるんですけどDMN(Default Mode Network)、SN(Salience Network)、 CEN(Central Executive Network)。これ何を示しているかっていうと、脳が活動しているときって、ネットワーク状に脳のいろんな部位が活性化しているんですよ。それを分類すると、大きくどうやらこの3種類(直感・大局観・論理)に分けられるらしいんですね。

DMNっていうのが何かっていうと、一番下見てもらったらわかるんですけどDMNっていうのは正に直感で、アイディアを出すっていう役割なんですね。で、例えば100個ぐらいアイディアが出ますと。でSNっていうのが大局観で、100個出たアイディアをキュッと3つくらいに絞るのが大局観なんですね。

最後CENっていうのが3つくらい出たアイディアを1つに絞る。多分、棋士の方も局面を見たときにパッと手がいっぱい浮かんで多分それが直感と言われるものなんです。そっからこう一個一個、吟味してられないんですよね。だから、大局観でパッと絞って決めてくんだと思うんですけど。

どうして僕が本の中でこの図を出したかっていうと、これ本当、最近の研究なんですけどもイノベーティブな人、クリエイティブな人の脳内ってどうなってるのかっていう研究の結果わかったのが、この3つのモードをいったりきたりできる人がクリエイティブな人なんですよ。普通の人は1個しか使っていない。「論理」しか使っていないとか「直感」しか使っていないとか。

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直感(出す)→大局観(絞る)→論理(決める)

加藤:めっちゃ直感ぽい人とか、めっちゃ理屈っぽい人とか居ますよね。

石川:だから、1個しかない人はチームを組んだ方がいいんです。創造的な人っていうのは3つのネットワークっていうのを行ったり来たりできるんですけど。特に重要なのが真ん中のSNなんですよ。大局観モードと言われるSNを上手く活性化することができる人は直感と論理を行ったり来たりできるっていう。っていうのがこの図なんですね。

加藤:これ森内さん、このお話うかがって将棋でこんな感じでやってるな、みたいな。思います?

森内:言われてみると、なるほどなと思います。大局観はすごく大切で今、見直されているところで。今まで人間の先入観というものがあって、なかなか大局観が良いと言われていても今の視点で見ると、それほどでもなかったりするんですけど。最近のAIの発生もあって、新たな大局観の導入というのも勝負に直結してきますね。

AI登場による変化

加藤:確かにAIが発生してから将棋が変わりましたよね。良いと思われてなかった形が実は良かったとか。

石川:将棋とか碁もそうだと思うんですけどコンピュータって一見、論理が強そうな気がするんですよ。ずっと先の手も読めるみたいな。だけど、どうも人間とはちょっと違う大局観を実は導入しているんじゃないか、っていうのは、なんとなく今言われていることですね。

加藤:そうですね、コンピューター将棋って読みよりも大局観、読みも強いんだけど・・

森内
:AIの裏付けを見ていくことによって人間の大局観も少しずつ変化して向上していけると思いますし。すごい人間の可能性を新たに感じる時代に入ったのかなと。

大局観とは

加藤:将棋棋士も、さっきの3つの図で強い人は大局観が優れているんですか?

森内:優れていますね。現在の局面を見る目もそうですし、将来どうなっていくかの全体的な視点も持っていますので。

加藤:ずっと先までいろんなパターンを考えて普通の人が良くないと思っているけどこれは良いんだよね、みたいなことを考えられると勝てるんですかね。

森内:そういうこともありますし、想定される未来というか、局面だけじゃなくお互いの状況ですね。相手はどれくらい力が残っているかというところも含めたスポーツ的な要素もありますけれど、将棋とは違ったところも加味したりして強さとは決まってくるのかな、と思ったりします。


石川:大局観て俯瞰してみるイメージがあるんですけど、実際は俯瞰して見ながら、ものすごくディティールも見るっていう。ピクチャとディティールの往復なんです。

加藤
:物を作ったりしているので、すごく良くわかります。大きな方向性とめちゃくちゃ細かい字詰とかね。両方、行ったり来たりしながら作るという。

石川:この往復が意外と難しいんだろうなっていう。

加藤:スティーブジョブズは、めちゃくちゃ細かかったらしいですね。めちゃくちゃ大雑把な、このパソコンめちゃくちゃカッコいいだろう、みたいなのもある。そういうことですよね。

時代と歴史、両方捉える

石川:だから、別の言葉で言うと今という時代をしっかり見れる人はディティールを見るのが得意な人で、歴史的流れを大局的に俯瞰的に捉えられる人。この歴史の流れと今この瞬間の時代という、時代と歴史を両方捉えられる人は多分、大局観がすごくて。

将棋も今、流行っている戦法とかあると思うんです。それに囚われ過ぎると時代に翻弄されるというか。多分、歴史を見た時に将棋も変遷の歴史っていうのがあると思うんですけども、その中に自分をちゃんと位置付けないと今、活躍しても歴史に残る棋士にはなっていかないんじゃないかなと直感的に思うんですんですけどね。

森内:深いですね、言われてみると。なるほどと思います。やっぱり歴史に名を残す棋士はそういった複数の視点で物事を見てるのかなって思いますし今、活躍している頭に思い浮かぶ人もそういう風な考え方をしてるのかなって。

歴史は回る

石川:だから僕ら研究でいうと、時代だけ見るとAIだけやっておけば良いと思うんですよ。×AIで良い。それで良いのか、っていうのもあって。人類の歴史の中に身を置くと、違う方向性も見えてくるというか。AIもしなきゃいけないんですけど。

加藤:現行×AIで予算が取れたりするじゃないですか。

石川:だから、時代に名を刻みたいのか歴史に名を刻みたいのかは僕は、よく考えることなんです。

加藤:確かに、将棋の棋士なんかでもある戦法が流行った時にスーパースペシャリストとかが出てきますよね。でもその戦法、どっかで流行が終わる時が来るんですよね。

石川:今だったら何が流行ってるんですか?

森内:今、まんべんなく指されていますけど。角換わりや相掛かりも指されていて。昔ダメだと言われていた戦法がリバイバルで指されたりすることもあってですね。ここ数年、人気がなかった戦法があるんですけど大流行したことがありまして、1〜2年でまた無くなってしまって。あまり無いんですけど、すごい不思議な感じがして。

歴史的に長く戦われた矢倉っていう戦法があって私も好きなんですけど。その戦法が一時、人気がなくなってある若手からヤグラは終わった、なんて言われたことがあったんですけど。又、人気が出てきて。その繰り返しなんで。

加藤:終わり、っていうのは要するに勝てなくなる時ですか?

森内:あまり優秀じゃない、ってことが証明されれば終わるんですけど。

加藤:リバイバルする時は?と思ってたけど、もっと良い手が出たとか。

森内:その後で工夫したようなものが出てきたり、とか実は悪くなかったっていう、その繰り返しなので。結構、時代は進んでいるようで回っている、みたいな
。

長く活躍する人とは

加藤:歴史に名を残すような方は、何かの戦法でスペシャリストになるようなものなんですか?そういう人たちって。

森内:そういう形で名を残す人も、いらっしゃいます。ただ長い間、活躍されている人たちを見ていくとオールラウンドプレイヤーが多くて。やはり流行りにも対応するんですけどダメになったら新しい流行りに変える、っていう感じで、やっぱり好奇心の旺盛な人の方が長く活躍しやすいですね。

加藤:技術の向上ってことで言えばオールラウンドより1個に集中した方が一瞬、有利じゃないですか。羽生善治さんとかあらゆる戦法を指してますけど得意な人と指すと勝てない、とかありそうですね。

森内
:将棋戦というのはお互いの合意が、あってのものなので。自分が得意でも相手がやらせてくれない、ってことがあるんです。スペシャリストになってしまうと合意があると良いんですけど、相手から外されてしまうと使えないので。スペシャリストならではの苦労というのもあるのかな、と思います。

オールラウンドの弱点

石川:今日のテーマの上手くなると強くなるですけど、悩みでもあるんですけど。好奇心持って、いろんなこと上手くなった方が良いんですよ。組み合わせで面白いものも、生まれたりするので。ただ人生って時間が限られてて上手くなるための取り組みと、いよいよ勝負するぞって強くなる時の打って出る時っていうんですか、ここのバランスがいつも悩むんですよね。

将棋も多分、オールラウンドって簡単にいうけど、すごい勉強することがすごくいっぱいあると思うんですよね。そうすると上手くはなってるんだけど使いこなして強くなる、ってことが難しいのかなってちょっと思うんですよね。

森内:将棋だけじゃないですけど今すごく便利な世の中になって、昔5時間くらいやってた研究が30分〜1時間くらいでできて、時間的にも相当な省エネができていますし。AIが絶対、正しいってわけではないんだけれど答えらしきものを出してくれる。

前は頭で考えるが前提で、正しいかわからないけど向上してきた歴史があって。今はAIが全てではないですし絶対ではないですけど答えらしきものを示してくれて、それに対して裏付けを取っていくという作業だけで済みますので、すごく勉強の環境としては恵まれていますし向上していくスピードも早くなっているのかな、と思いますね。

石川:先に答えらしきものがあって、AIが提示する。どうしてそうなんだろうっていうのをその後、考えるってことなんですか?

森内:それもあります。

加藤:便利にはなったけど、みんなが便利になったわけでしょう?だから結局、大変なのは、あんまり変わんないんじゃないかって。

森内:そうなんですよね。でも、なかなか人間に使いこなすのは難しいみたいで。限られた人はうまく使っている。けれど付き合い方に苦労している方も多いので個人差が出てきている時代かな、とは思います。

加藤:例えば、藤井聡太さんみたいな勝ちまくる人はAIが出てきたから強いんですか?ただ彼が強いんですか?

森内:なかなか検証が難しいですけど元々、強いのは間違いないですね。計算能力が並外れていて、おそらく普通の棋士の何倍ものスピードで正しい方に。噂ですけどね。そこにソフトの検証も加えていくことで、さらに確固たるものになっていきますので自信もつくでしょうし。

さっきの直感、論理の3つで言うと論理、読みの部分がものすごく優れていて、コンピュータの力も借りて大局観をさらに鍛えて、直感力も申し分ないですし、隙が無いですね。

石川:困りますね。そういう人が出てくると。

森内:まだ若いですし伸び代もありますし。どこまで強くなるか。

加藤:この半年くらいで・・僕が言うのもおかしいんですけど強くなってる感じが、側から見てても思うんですけど。

森内:ありますね、安定感も増していますし。あまり危ない場面がないですから。恐ろしいですね。

伸び悩みの克服法

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上手くなるまでの成長曲線

加藤:僕なんかでいうと、将棋の記録が20年くらい変わっていないんですよ。これは僕の低レベルな話なんですけど。みんな、あると思うんですよね。つまり伸び悩みみたいなことって、あらゆる仕事でも勉強でももちろん将棋でもあると思うんですけど。どうやって克服してけば良いのか?って。

石川:日々悩みますよね。伸び悩みって大体、飽きているときなんですよ。何に飽きてるのか、っていうと上手くならない強くならない自分に飽きているんですよね。そういうときって何がいけないんだ、って考えると取り組みが良くないんです。加藤さんだったら、将棋が悪い訳じゃないじゃないですか。加藤さんの将棋への取り組みが、どう考えても悪いわけじゃないですか。

加藤
:間違いない!

石川:でも、ずっと変わらないと飽きてくるじゃないですか。自分は見る専門でいいや、みたいになってきますよね。そういうときは、上手くなること強くなることに重きを置かないことなんですよね。でなくて、小さくても良いから発見を1つずつ積み重ねていくこと。そっちの方に僕はよくシフトしますけどね。今日学んだこととか発見したこと。

加藤:ちょっとアプローチ変えるんですね。

石川:そうしないと、やってられないですからね。

森内:確かに取り組みが悪いものに関しては、伸びたい意欲がないのかなって何となく思うんですよね。やっぱり人生の時間限られているので。伸びたいものに力をかけたいというか。他のところに力をかけている時は、伸びないことは仕方ないのかなって思うので。人生はトレードオフですし。何かを選んで何かを捨てるんだな、ってことに改めて感じましたね。

石川:難しいのが、めちゃめちゃ気合が入ってて努力したからすぐ上手くなったり強くなったりしない、っていうのが。あるレベルまでいくと止まる。それが伸び悩みってことですよね。もしかしたら、さっき取り組みが悪い、って言いましたけど取り組みは実は正解かもしれないんですよ。取り組みは良くて、あとはちゃんと続けてったらどっかでポンと結果に現れるのに、その手前で止めてしまっているかもしれない。

加藤:記録って不思議ですよね。どっかで止まったり。

森内:そうなんです。伸びる時は伸びるんですけど。そのあと、こう階段みたいな感じで。伸びて止まって。伸びて止まって。平均的に伸びてったりしないので不思議だと思いますね。

モチベーションの保ち方

加藤:プロ棋士って研鑽をずっと続ける仕事なんだと思うんですけど、どうやってモチベーションを保って続けていらっしゃるんですか?

森内:難しいですよね。棋士の生活長いですけど。私も16でなって今49ですから33年やっていて。すごく充実して取り組んでいる時期もありますし、ちょっと言葉悪いですけど飽きがきているみたいな感じで、なかなか上手く取り組めない時もあるので。気が乗らない時は仕方ないと諦めて自分なんかは、それを受け入れるというか。あまり勤勉な方ではないので。どっちかっていうと「気持ち」でやっていましたね。

加藤:勉強とかは、ずっとされているんですよね。

森内:していなかった時期もありますし。

加藤:どうなんですか?ずっとトップにいる森内さんもそうですけど羽生善治さんとか、ずっとフラットに努力続けているんですか?

森内:やっぱり、その時期によってすごく充実している時期と気持ちが乗らない時期があるんじゃないですかね。人間ですからね、やっぱり。

石川:羽生さんもチェスとか、やるじゃないですか。チェスの時間を将棋に費やしたら、もっと伸びるのか?っていうことなんですよね。チェスは、まだ良いんですよ。将棋と、ちょっと近い気がするじゃないですか。全然違うことをやるとき、これやってていいんだろうか?と疑問がわいてくると思うんですけど。

飽きて全然違うことやってみるんですけど。後付けで理由つけるんですよ。人間修行も大事だな、みたいな理屈はいくらでも付けられるけども。それが結果に繋がるか、わからないけど本業と全然違うことを取り組めるかどうか、っていうのは僕はいつも不安ですね。

加藤:善樹さんもそうですか。

森内:不安はありましたね私も。将棋をやらないで別のことをやってると自分の中で不安もありますし。表に出たりすると、人からも言われたりするんで。

石川
:何でカレーのイベント出てんだ、みたいな。

森内:場合によっては、だから勝てないんだ、みたいに言われたこともあって。でも自分の人生だから自分で決めるしかない。

石川そう、結局、自分で決めるしかない。誰かの決めた、こうだに従わなくても良いわけですからね。すごくわかりますね。

加藤:毎年すごく沢山の対局があるから常に成績が出るっていうのは、すごくシビアですよね。

森内:ただ毎日、対局があるわけでもないですし。皆さんのプレッシャーに比べたら、そうでもないんじゃないかな、って思うこともあったりしますね。

加藤:プロ棋士って年間、多い人で50局くらいですか?70〜80局くらいの人もいるのか。少ない人だと20〜30とか。少ないといえば少ないというか。間に勉強したりとか、成績が悪いと稼ぎが減ったりとか。

森内:そうですね。対局だけでは厳しい場合は他の仕事もしたり、とかってことになりますし、いろんなポジションがあるので。それぞれ力を発揮する、って感じですかね。

守破離

石川:今回の上手くなる強くなる、っていうのも基本的には守破離みたいなことだと思うんですよ、最初は定石みたいなものを、きちんと守るというか。そっから、だんだん自分の個性ってものを発揮するために定石を破ってみる、とか。離れていく。

上手くなる強くなるとき、どう離れていくかっていうのが、やっぱり難しいっていうか不安なんですよね。こうすればPV数は伸びる、みたいな定石はあるんだと思うんですよ。でも、みんなそれをやるようになると定石じゃなくなるというか。ある時に自分なりの方法を見つけなければならない、と思うんですよね。

加藤:面白いなと思うのが将棋って盤上における定石ってあるだろうけれど、個性ってあるんですよね。

個性でなくなったら意味もない

森内:現在の人間の対局においては個性がよく出てるんですけど。個性出なくなったら、みんな同じになるので指す意味もないですし。

加藤:かなり個性がありますよね。人によって全然、指し方が違って。

石川:それは、やっぱり重要ですね。人間と人間がやってるので個性とかストーリーが面白いのであって。必ずしも勝ち負けだけで見てないじゃないですか。

加藤:羽生善治さんの「
勝ち負けが大事だったら、ジャンケンでいいんじゃないか」って有名なセリフがあって。

石川AI同士の戦いに僕らが感情移入できないのは、そういうことで。そこに個性とかストーリーを感じにくい、ってことなんですよね。で、ここでさらにややこしいのが個性を出そうと思うと、もしかしたら強くないかもしれないこともやらないといけないこともあるんじゃないか、って気がするんですよね。

加藤:森内さんて、すごく受けがいいってことで評判だったんですよね。他にも特徴あると思うんですけど。受ける手ってちょっと勇気いる時ありますよね。下手すると受け一方で終わっちゃう時もあるから。そういう時どうしよう、みたいなことを考えるんですか?

森内
:当時やっぱり、受けに回って潰されるの怖かったですけど、自分を信じてやっていたというか。ただ今のソフトで検証するとソフトは怖いとか危ないとかいう感覚がないので計算していって上手くいけば大丈夫って判断しますので。今検証すると、これからの人は受けに回るのを恐れる必要はないので。お手本があるので。更にレベルの高い受けができる、というのは羨ましく思っていますね。

加藤:受けって、そのまま潰されるかもしれない
。それってカッコ悪い。良いところ見せられる瞬間が無いかもしれない。そのまま潰されるかもしれない。受けの手って本当、勇気がいるんですよ。でもカッコ悪い、って余計な感情じゃないですか。

石川:攻めた方がカッコいい気もしますしね。サッカーで言うとフォワードとディフェンスどっちが目立つか、ってことですよね。

加藤:森内さんの有名な手で四八金ていう有名な手が羽生善治さんとやった。完全に受けで金をあてるみたいな手なんですけど。あの手って怖かったですか?

森内:ずっとその将棋は負け将棋で、これしかないなっていうのはわかっていたんで。名人戦の2日目の対局で、かなり佳境に入っていたところだったんで。あと数時間で将棋終わりますっていうのでテンション上がってたんで。あまり怖いとか考えずに目の前の勝負に集中していたというか。

加藤:フロー状態というか。

石川:すごいな。テンション上がるんですね。このフェスも最後テンション上がる、みたいな。

加藤:将棋の長時間の対局って名人戦を目の前で見た経験があるんですけど、あれはすごい空間ですよね。

森内:ちょっと時間の流れ方が、普通ではないというか。この時代で2日間かけて1つの勝負をやるっていうのが、あまり無いですし1つ動かすのに何時間とか考えたりしますので。

加藤:名人戦第1局は椿山荘でやるんですけど、そこで羽生善治さんと堀口一史さんとずーっと2人ウーって考えてて後半とか耳まで赤くなってくるんですよね。多分、頭に血がいっているんだと思うんですけど。ああいう時って本当に将棋以外を考えていない感じなんですか?

締め切り効果

森内:最初はお互い待ち時間が沢山あって。相手が考えている時、待っている時間があるんで休んでたり全然違うことを考えていたり。ただ最後の方になってくるとお互い持ち時間減ってきて1点のミスが勝敗に直結するので、そういう意味ではすごく極限状態に近づいてくるとか、ありますよね。

石川:面白い。やっぱり、そういう興奮を日々味わいながら生きていきたいですよね。

森内:そうですか?そうですか??

石川:勝ち負けがつく、ってやっぱり重要だと思うんですよ。上手くなる、強くなる、ってことにおいて。将棋ってそれが出やすいじゃないですか。年間20回とか60回とかは明確にあるわけで、フィードバックがあるじゃ無いですか。僕ら研究者とかビジネスの場合って勝ち負けって結構、分かりにくいってあると思うんですよね。もっと言うと、この1手が良さそうかどうかっていうのがいま大分わかるようになってるわけじゃないですか。

でも僕らがnoteに書いた記事が昨日の記事よりも勝ってるのか勝ってないのかとか、わかりづらいわけじゃないですか。他の相手に比べてより勝ってるのか、より良いのか
わからないというか。振り返りをしないと、いけないなと思って。良かったこと悪かったこと。ハイライトとローライトってふうに呼んでるんですけど。今日1日のハイライト・良かったことと、ローライト・ダメだったことっていうのは毎日振り返るようにしていたら疲れちゃって。

加藤:そりゃそうでしょ!

石川:でも将棋の話を聞いて思いましたね。年数十回くらいの振り返りで良いんだなって。やっぱり勝ち負けっていうフィードバックがかかるから上手くなる強くなる、っていうのはあると思うんですよ。

加藤:それで言うと、持ち時間の制限も重要なんじゃないですか?

石川:締め切りね。そう。

加藤:将棋もそうじゃないですか?

森内:そうなんですよ。無制限にやったら全然、頭働かないっていうか。

加藤:終盤の棋士の集中力って横で見ると目を見張るものがあると思うんですよね。こんな集中している人見たことないな、って思いました。あれによってエンジンかかったりするもんですか?

森内:そうですね、やっぱりずっと集中できないんで。最初は流すじゃないですけど、いろんな前提もあるので、ゆっくり進めていくんですけど最後はフル回転しないと勝てないので。

石川:研究者も教授になれるかどうかって審査があるんですよ。日本だとわからないですけど海外だと何年か以内に成果が出せなかったら教授になれないから、大学を辞めなきゃいけないんですよ。教授審査の締め切りが近づくほど、みんな生産性上がるんですよ。

で、締め切りを作る力、締め切り効果っていうんですか?自分で作り出せたらすごいと思うんですけど。自分が作るとグダグダになるっていうか。人様に決めてもらった方が、いいんですよ。嫌ですけど。上手くなる強くなるには締め切りが必要だし、勝ち負けのフィードバックが必要だなっていうのは常に思います。

強くなるための、フィードバックと感想戦

加藤:将棋なんかは終わった後に感想戦て・・。

森内
:そうですね、終わった後どこが良かった悪かったって感想戦やるんですけど、勝ち負けのフィードバックも大事だと思うんですけど私はそちらの指し手に関する評価の方も大事にしていて、どの手が良かった悪かったのかを振り返って。口が少なければ上手く指せたってことになりますし。終わった後に採点してくれるものもありますし。

石川:プロ棋士同士が指すから、そんなに悪い手ってなさそうな気がするんですけど。

森内:一方的になった時はあまりミスは無いんですけど結構、振り返ると1局で10手ぐらい良くない手をやっていたとかあるので、これはまずかったなと思って。

加藤:今コンピュータで振り返るとあるんですよね。昔はそれが無い状態でやっていた訳で。

森内:昔は正しいと思われていた手が全然、実は違ったみたいなのもあって。答えを見ても自分にも、わからないこともありますし。

加藤:感想戦て強いと思う人ほど長くないですか?

森内:好きな人いるんですよね。

加藤:羽生善治さんとか森内さんとか将棋強い人の感想戦はすごい熱心にやるイメージが僕はあるんですけど。

森内
:対局終わって感想戦なんで観戦記者もいらっしゃって、そういう方に説明の機会っていうのもあるんですけど、自分の中の好奇心が勝ってしまうとなかなか終わらなくなってしまう。相手もすごく考えていますので、意見交換が楽しくなってしまうと自分の世界に入ってしまうというか。

加藤:一日指して疲れていらっしゃるはずなのに、ずっとやってる
んですよ。信じられないなと思って。

石川:じゃあ、それをここから日常に戻すと仕事が終わったあとに僕らが感想戦してるかってことですよね。しないじゃないですか。半年にせいぜい一回くらいじゃないですか、上司と振り返ったり、臨時面談したり。感想戦はしたいな、やっぱり。

加藤:家庭で感想戦はどうですか?

石川:家庭は感想戦、長そうですね。

趣味に結果を求める or そこそこで良い?

石川:でも、この上手くなりたい強くなりたい、って普通にしてるとあまり思わないんじゃないかというか。そこそこでイイと思うというか。僕最近、趣味を持とうと思っていくつか趣味を始めているんですけど、そこそこでイイやと思ってしまっているんですよね。

本気でやっていることが上手くなろう強くなろうって仕事であったとしても、そこそこでイイや、ってなりやすいんじゃないかなって思うんですよね。あまり高みを目指したい人って・・

加藤:あまり居ないと思いますね。森内さんは趣味のバックギャモンとかいきなり世界タイトルとか出てますけど。

石川:え!そうなんですか??

森内:趣味、あまり結果を求めない趣味と結果を求める趣味があるんですけど、結果を求める時は世界一になりたいと思いますし。

石川:世界一!普通あまり思わないですよね。

加藤:世界でちなみに何位なんですか?

森内:世界大会に出て世界4位になったんですけど。それはたまたま運が良くてなったんですけど、その後も続けていって。また機会あれば挑戦したいなと思っています。

加藤:世界4位になるために相当努力がいるんですよね、きっと。覚えたり。

森内:多少はいるんですけど。覚えるのは楽しかったんであまり努力と思わないで。
向上するマニアみたいな感じで。自分が実力を上げる、みたいなのは好きですね。

石川:だから、どうせやるなら世界初・世界一っていう。この気概なんだと思うんですよね。これがそもそもないと、上手くならないし強くならないっていうか。

加藤:視座の高さが必要だ、ってことですか?

石川:そうそう。それで僕、最近超はまっている趣味が、緑茶っていうのがあるんです。抹茶じゃなくてただの緑茶。緊急事態宣言のステイホームでコーヒーがばがば飲んでいたら他の飲み物も必要だな、って思って。緑茶に行き着いたんですけど。

僕ルーツが好きなので、緑茶ってどうやって始まったんだろう?って。調べたら針金みたいな葉っぱじゃないですか、緑茶って。あれを作り出したのって江戸時代に永谷園の永谷さんが趣味で15年、どうやったら茶葉って美味しくなるんだろうかって試行錯誤して、あの針金みたいな茶葉が出来ているんですね。

もみ込むことで茎に葉っぱを巻きつけて美味しさをあそこに入れているんですけど。それを、京都で出来たお茶を江戸に持ってきて売ってくれ、ってお願いしたのが山本山の山本さんなんですね。だから、永谷園のお茶漬けにはお茶が入っているんです。

このエピソードを知って15年間、人知れず茶葉を作り続けるってね。こういうことをしないといかんのだなってことを僕、反省してるんですよ。それくらい・・世界初のことをやろうとは多分思ってはいなかったと思うんですけど少なくとも抹茶なんか、くだらねーと思っていたと思うんですよ。永谷さんは。

抹茶なんかに負けるか、っていう。あいつらに勝つぞっていう気概で多分、茶葉作ったんだと思うんです。さっき勝ち負けの話出ましたけど。自分は最近、何に勝とうとしてるのか、っていうライバル設定ですよね。極めて重要だな、って思ったんですよ。

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加藤:森内さん『覆す力』って本出されているんですけど、森内さんも子供のころ将棋負けたことが悔しかった、って書いてあったりとかして。やっぱり棋士の人って勝ち負けの勝負には、こだわるっていうか。強い人に多いんですかね。

森内:いろんな人がいるんですけど、勝ち負けにこだわる人は多いんじゃないですかね。やっぱり多少は悔しい、って思いもないとなかなか続けていくの大変でしょうし。あまり強くない人も、いると思うんですけど。普通の人よりは負けず嫌いの人多いかな、と思いますね。

加藤:羽生善治さんとか普段、涼しい顔してやってる感じなんですけど、めちゃくちゃ負けず嫌いなんですか?

森内:もちろん、そうですよ。見ればわかるじゃないですか。わからないですか?

加藤:僕は近くで見てるからわかるんですけど多分、新聞見ているだけじゃわからないと思うんですよね。

石川:何に勝とうとしているのか?っていうのが多分、森内さんも羽生さんも年齢によって変わっているんだと思うんですね。最初は同世代の仲間とか、もしくは上の世代の強い人っていうところから始まって、だんだん歴史上の人物に勝ちたいなとか。わからないですけど。もっと将棋の世界を超えて、もっと将棋ってものが広がるためにはライバルはあいつだな、みたいな。

加藤:文化としての将棋っていうのを、どう広めていくかっていう。森内さん連盟の理事とかされて、そういう立場で動いていらっしゃいましたよね。

森内:そうですね、どうしたらもっと将棋が浸透していくかってことを考えてやってましたし。その時は将棋のことあまり深く考えてなかったっていうか、そちらの方がメインになってましたので。理事とか初めてだったんですごく勉強になることばかりで。今まで棋士では味わえなかったような、いろいろと面白いことも沢山ありましたので。

加藤:大変だったんですか?

森内:大変な面も、ありましたね。体重もかなり減ってしまって。石川さん専門ですけどダイエットしているわけじゃないですけど10キロぐらい下がってしまって。どうしようかと思ってましたけど、いつの間にか復帰してましたけど。またダイエットの仕方を教わらないといけないな、と思って。

石川:健康的に(笑)。ストレスが無くなったんですね。

勝負とネガティブ感情

加藤:もうちょっと勝負の話をさせて欲しいんですけど勝負には感情が結構、重要になるのかなと思うんですけど。例えば将棋だとよくあると思うんですけど、間違った手を指してしまって、さらに間違った手を指すってことがあると思うんです。それって、どうやって平常心を保つようにするのかなって?秘訣があったら教えて欲しいんですけど。

森内:やっぱり大きな勝負で自分が間違えたことがわかると結構、頭に血が登る時もありますよね。後悔もしますね。若い頃は特に1局1局が重いので。
ある程度までいってしまうと慣れてしまうので、しょうがないかなって思ってしまうんですけど。若い時はそういうのありましたね。

とりあえずトイレでも行って顔、洗って出直すしかないんですけど。完全に割り切る事は出来ないんですけど、なるべく前の事は忘れて。今から始まるつもりでやる、って思ってやっていましたけど。

加藤:切り替えて次から、ちゃんと出来るものなんですか?

森内:多少精度が下がるかも知れないですけど、それをなるべく下げないように下げ幅を低くして
ベストを尽くすしかないかな、って思ってやってましたね。

加藤:将棋に限らずですけど、やらかした後ってさらにやらかすのが人間の性じゃないですか。

石川
:頭に血がのぼる、っていうのは本当にそうで。訳わからなくなりますよね。わーっ、となりますもんね。ああいう時に平静に戻ることは、もう諦めた方が良いんじゃないですか。人はそういう生き物というか、もうパニックの時はもうパニックになっちゃってるから諦めるしかないですね。そういう時は。だから、加藤さんが感情って話を聞いていたのは何か・・。

加藤
:善樹さんが良く感情とクリエイティビティって話をされてて。いろんな感情があると思うんですけど。こういった大局観とか発想力を出す時に
感情は、どう関わっているのか。今のは悪い方の感情でしたけど多分ポジティブな方向もあるんじゃないかな、と思ってそういう話をしたいんですけど。

ポジティブ感情とネガティブ感情

石川:感情の多様性ってことを、よく言われるんですよね。エモーショナルダイバーシティって言うんですけど。ポジティブな感情もネガティブな感情も、いろいろ行き来できる人の方がクリエイティビティが高いっていう。幸福度も高いっていうのが最近、言われるようになっていて。単純にポジティブ感情だけ感じてれば良い訳じゃない、っていうか。これって結構、難しくて疲れる
んですよね。

加藤:感情って、いったりきたりすると疲れますよね。

石川:疲れるんですよ、感情って。だから、特に強いネガティブ感情になるとやばい。失敗するんですよね。ネガティブ感情って基本的に、人の視野を狭くするんですよね。ポジティブ感情って、人の視野を広げる役割があるんですよね
。失敗してやばいと思ったときに、ポジティブ感情になれたら視野を狭めたり広げたり、大局観モードに入れるチャンスでもあるんですけど。だから、もう失敗したら無理矢理、笑うしかないですよね。笑ってごまかすしかないですよね。笑って良いんですか?対局中に。

森内:対局中ですか。相手の前で笑うのは失礼かなと思うんで。
将棋の手以外のことで笑ってしまいそうになることは、あるんですけど。なかなか切迫した場面で笑いにくいので。困ったことが起きたら席を立って笑うようにしていますね。

加藤:みんな集中しているからみんな側から見ると、おかしな風に感じる方っていらっしゃるので。あれは棋士の方でも笑いそうになっているんですね。

森内:私は笑いを抑えられない方なので、つい笑ってしまいそうになることもあるんですけど。これからは、そうですね席を外して。

加藤:皆さん、感情を抑えてやってますよね、将棋を指す時って。側からは少なくとも。

森内:そういうふうなもんだって若い頃から訓練されているので。多分、終わった後も、どっちが勝ったかわからない、みたいなこともありますし。

加藤:NHK見てると、どっちが勝ったか分からないこともありますよね。特に将棋がわからない人は。

石川:確かに。勝負ついた後の表情って面白いですよね。

勝負の礼儀

加藤:勝った方が負けた、みたいな表情になる。

森内:
負けた方が饒舌になるんですよね、盛り上げなくちゃいけないっていうので。勝った方が殊勝になる、みたいな。ちょっと
遠慮も、あるんで。それが結果、分かりづらくなっている大きな要因かもしれません。

石川:あれ、やっぱ特殊かもしれませんね。普通だって勝ったら「ッシャー!」みたいになる
じゃないですか。どの競技でも、そうなるじゃないですか。何で将棋はそうはなってないんですかね。礼儀ってのもあるんだと思うんですけど。

加藤:相撲もそうだから、日本の。囲碁もそうだし。

森内:伝統的なそういう。感情を出さずに。相手への思いやりとか、そういうことなんですかね。剣道の勝って反省、打たれたら感謝みたいな。

加藤:これは、まとめると・・

「上手くなる強くなる」のまとめ

石川:今日一番、森内さんに学んだのは世界一を目指さないとダメだなと思いました。どうせやるならバックギャモン世界一。どうせやるなら。その方が楽しいじゃないかっていう。

加藤:楽しくてやっていたらそうなった、ってことですよね。

森内
:何でも目指す訳じゃないんですよ。

加藤:そういうのを見つける、っていうのは大事ってことですよね。夢中になれるものを見つけるっていう。

石川:ってことと、やっぱり勝ち負けのフィードバックですね。フィードバックをきちんと得るっていう。それは後で感想戦もするっていう。僕は今日も1時間、話しましたけど、この後・・・

森内:いろいろ聞きたいこともあるので、またいろいろ教えてください。よろしくお願いします。

加藤:うちに帰ったら感想戦と。家庭でも。本当あっという間でありがとうございました。

石川:ありがとうございました。

加藤:上手くなる方法と強くなる方法を森内俊之さんと石川善樹さんにお伺いしました。今日はどうもありがとうございます。

【上手くなる・強くなるためには(まとめ)】

1. 締切を作るチカラ

2. 誰をライバル設定するか

何に勝とうとしているのか。将棋の世界を超え、もっと将棋が広がるためにはライバルはあいつだな、みたいな。

3. どうせやるなら世界初、世界一

4. 楽しんでやる、夢中になるもの見つけるってのは大事

5. 勝ち負けのフィードバックを受ける。感想戦をする

終わりに

上手い人も強い人も、そうでない人も、誰もが持っているだろう傷というものを拾い上げてくれた石川善樹さんと森内俊之さん。どちらのお話も必要で、優れた人から学ぶことは自分の力が伸びていくために必要だ(これで困難にぶつかった時も乗り越えていけそうだ)ということを何度も確認したセッションでした。

note代表、加藤貞顕さんの言葉、「つくるとつながる」。noteフェス、素敵な企画を本当にありがとうございます。つくって、つながって、感想戦したいです。

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動画はこちらから↓↓↓

note CREATOR FESTIVAL『上手くなる・強くなる』
予防医学者 石川善樹氏 × 棋士 森内俊之氏 + note代表 加藤貞顕氏

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感想文を書きました↓↓↓

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