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【ライブレポート】ロマンスを感じた夜だった。┊︎宮本浩次

今年も、この人の声がライブ初めになったことに幸福を感じている。

2023年1月16日(月)、東京ガーデンシアターにて
宮本浩次 『ロマンスの夜』を観た。

椎名林檎や東京スカパラダイスオーケストラとの楽曲をのぞいて、2019年からソロ活動を積極的に行ってきた宮本浩次。
その中で出した女性アーティストの昭和歌謡をカバーしたアルバム作品を2作品リリースしてきたが、今回は2つのカバーアルバムを中心にバンド編成で公演を行うという、なんともスペシャリティなコンサートだった。

宮本氏が公演中に語ったように、東京公演は実際は2022年の11月末に2日間行われる予定だったが、宮本氏の体調不良により延期。
振替で1日になってしまったが無事に開催に至った。
配信も行われ、会場に止むを得ず足を運べなかった人も観ることができた。

私も昨年11月にチケットを手にしていて、無事に再抽選で会場に入る権利を得てとても感謝している。

エレファントカシマシ及び宮本氏を師と仰ぐ私が、どういう出会いをして、ここまで約10年過ごして来たかは、また後に記すとして話を戻す。

会場に入ると、もちろん宮本氏と同世代の方々が大半に感じたが、中には制服の高校生を見かけた。
親と来たのか、自分の意思かは分からずとも、ここに来たことは一生の宝にしてほしい。

定刻。
ステージ正面奥と下手に立てられた古い建物をモチーフとしたセットの隙間から光が差し込む中、バンドメンバーの小林武史(key)、名越由貴夫(Gt)、玉田豊夢(Dr)、須藤優(Ba)が定位置に。

少し光が強くなると、影が伸びる。
その持ち主が誰なのかすぐに分かるほど細いながら存在感溢れる影が宮本浩次を連れてきた。
センターに着くと、暗転しイントロが流れる。
ボーカルの力強い声と共に明点し、「ジョニィへの伝言」からコンサートの幕が上がった。

これまで音楽番組内で数曲カバーを披露したり、一昨日から昨年にかけて行ってきた47都道府県ソロツアー『日本全国縦横無尽』では「あなた」、「化粧」、「ロマンス」、「異邦人」、「春なのに」、「木綿のハンカチーフ」などは歌われてきたが、初めて見聴きできる楽曲が多く、ワクワクと興奮でいっぱいだった。

特に、デモでしか収録されていない竹内まりやの「September」のカバーはラテン要素も含んだ宮本氏もステップを踏んでいたように、踊ってしまいたくなるアレンジで胸が弾んだ。

今回それぞれの曲の印象を深めたのには、演出効果も大きかった。
前半では、建物のセットの窓からの照明を通して陰影で雰囲気を変える方法に感嘆した。
「白いパラソル」では、窓から海や空の景色が見えるような昭和の小さな部屋という感じが、かわいらしかった。

2部の始まりでは、1部で降りた赤い幕が徐々に開いていき「喝采」の冒頭のフレーズにリンクする演出にグッと掴まれた。

「喝采」もそうだが、昭和歌謡というのは改めて聴くと曲がドラマや映画を1本観たかのような気持ちになる。
ストーリー性溢れる歌詞が魅力だと常々感じているが、宮本氏の表現で歌われると個人的にそれが顕著に現れると感じる。
それは、彼のカバーする曲への強いリスペクトと向き合い届けてくれている証だと思う。

「飾りじゃないのよ涙は」のMVを再現するようにダンサーを入れてのパフォーマンス。
昭和歌謡番組の映像を観ると多くダンサーを楽曲に参加させているが、今回ダンサーを入れたのは昭和歌謡番組へのオマージュもあるのではないかと感じた。
これまでの宮本氏及びエレファントカシマシのコンサートでは、なかなか観られない、これまた特別な時間だった。

公演の中では、ギターを持ち歌う「First Love」と「恋に落ちて-Fall in love-」も披露。カバーではあるが、英語詞の長いフレーズを歌う事が珍しい宮本氏。チャレンジと語っていただけあって、新たな一面を見ることができた。

後半の「恋人がサンタクロース」では、歌詞を忘れてしまい「さすが俺!」といいつつ歌詞カードを上手に取りに行く姿は、どこか少年のように見えて会場が和んだ場面だった。

「冬の花」と「カサブランカ・ダンディ」で幕を閉じたが、そこにはソロの活動を始めた「冬の花」で、ひとまずソロの集大成を見せたのと同時に唯一の男性カバー「カサブランカ・ダンディ」で新たな活動を観客に予感させるような余韻を残した。

この夜は、ほんとにロマンスの夜だった。

ここまでに記したように、一概にカバーというだけでなく様々な角度から、いろんな顔の宮本浩次を見ることができたし、宮本氏の少年時代や青春時代に出逢ってきた音楽たちと触れあう姿は、少年のような無邪気さと曲中の中の人物に寄り添うような中性的な色気のある良き大人を感じる一夜だった。

今年は、エレファントカシマシの35周年の活動が始まる。
公演のセットリストにエレカシとして初めてカバーをし、ソロアルバムには入っていない「翳りゆく部屋」を入れたのは、カバーしたことがある曲だからということだけでなく、ソロ活動においても自分はエレカシの宮本浩次でもあるから、その一部をという想いもあったからなのかなと勝手ながらに解釈をしている。

その上で、ソロ活動という中で幅広いチャレンジをして、さらに磨かれた宮本浩次という人間がエレファントカシマシとして、音を鳴らしパフォーマンスをしてくれるということに、今とてもワクワクが止まらない。

これからも、宮本氏がやりたいことにとことんチャレンジして頂きたいし、私はそれを一緒に見届ける。

そのために、ドーン!っと生きるのだ。

(後記)
配信のディレイチケットを購入して、4回は観ました。
が、まだ足りないのでWOWOWに加入している方に録画を頼みます。
ディスク化を熱烈希望。

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