見出し画像

【六人の嘘つきな大学生】人と人が関わるということ

読書の秋ということで、課題図書にもなっていた「六人の嘘つきな大学生」を読みました。
第一の感想は「おもしろかった!!」でした。
2時間半くらいで一気読みした。楽しかった〜〜

【六人の嘘つきな大学生】 / 朝倉秋成さん
〜あらすじ(引用:KADOKAWA)〜
「犯人」が死んだ時、すべての動機が明かされる――新世代の青春ミステリ!
ここにいる六人全員、とんでもないクズだった。
成長著しいIT企業「スピラリンクス」が初めて行う新卒採用。最終選考に残った六人の就活生に与えられた課題は、一カ月後までにチームを作り上げ、ディスカッションをするというものだった。全員で内定を
得るため、波多野祥吾は五人の学生と交流を深めていくが、本番直前に課題の変更が通達される。それは、「六人の中から一人の内定者を決める」こと。仲間だったはずの六人は、ひとつの席を奪い合うライバルになった。内定を賭けた議論が進む中、六通の封筒が発見される。個人名が書かれた封筒を空けると「●●は人殺し」だという告発文が入っていた。彼ら六人の嘘と罪とは。そして「犯人」の目的とは――。

文章を引用しての感想共有
(ネタバレしないつもりだが見たくないひとは見ないでください)

まあほぼあらすじである通りなんやけど。
主人公は、2011年の就活生。超大手企業の最終選考に残った六人のグループディスカッションの様子。六人の騙し合いが、探り合いが、とてもリアルで恐怖すら感じた。
就活をしてきた先輩だったり、巷の噂ではほんとうにぎりぎりの精神をなんとか保ってやってるとの様子を知っているから、その極限の精神状態がもろに描写されていて、就活を経験していないわたしでさえも苦しく感じてしまうようなものだった。

なんかどんな感じで書いてもネタバレになりそうで怖いんだけど(笑)

読書メモをもとに振り返りながら書いていくので、流れはごちゃごちゃになってしまうかもだけど、わたしが思ったことつらつらしてゆく。

「負けるつもりはないです。でも誰が選ばれても、きっと正解だと思います。」
言葉を選びながらも、こう発言できる彼に拍手を送りたかった。
ほんとうの気持ちはどんな心情か、わたしには読みきれないさまざまな背景があるのだと思うけれど、素直にこう言えることが素敵だと思った。このセリフ、すき。

途中途中で、インタビューが挟まるのだけど、矢代さんのは共感で思わず笑ってしまった。就活への思い、わたしも同感。

「存在しない選択肢とされてもなお自分の考えを信じ抜き、伝える。」
めっちゃかっこよくない??そこまで自分のことを信じられる??
すごいハマったというか、すきなことば。
わたしにはできない。後述するけど、わたしは「信じる」ことが最も苦手なんだと最近気づいたんだよね。

「どうすれば相手の本質を見極められますか?」
これはまじでわたしの最近の課題だった。なにをもって「私だ」と言えるのか、なにをもって「あなただ」って言えるのか。その答えがスッキリした。

「そんなものはない。」

うわぁ、はっきり言っちゃったよ。
「できると思うことそれ自体が傲慢なんですよ。」
ビリビリきたw
そう思い切ってもいいんだと衝撃だった。
ひとのことなんて見極められるわけがないし、完全に知れることなんてないんだよ。それなのにどうしてひとは分かりきったかのように振る舞うのだろう、自分のことでさえ分かりきっていないだろうに。

本のテーマから考えたこと

【人を見極めるということ】
見極めることなんてできないし、見極められなかったからといって自分を責める必要もないし、あくまでもひとはひと、自分は自分ということが大前提でよいのだよ、ということを改めて思った。難しいとかじゃなくて、不可能なことなのだからネ。それに、「人を見極める」ってなんか偉そうだよね。わたしはそんなことができるほどできた人間じゃない。

【人間の多面性とは?】
「おそらく完全にいい人も、完全に悪いひとも、この世にはいない」
わたしはこの意見に賛成。みんな絶対いいひとだと思ってるし、どんなひとにだっていいところはある。いろんな生徒や子どもと関わってきたけど、どんなに問題があると言われていた子でも、絶対いいところはあって、そこを褒めると照れ臭そうな、かわいい顔をするのを何度か見た。先生もそう。どんだけ生徒に嫌われていても、ひっそり教室を掃除してくれていたり、体調の異変にすぐ気づいたり。
わたし、心から嫌いなひとっていないんだよね。そりゃ、ちょっと合わないな、と思ったり、苦手なタイプかもと思うことはあるけど、嫌いにはならなかったし、今でも会いたいと思うこともあるさ。
でも、月の話が出てきていたけど、表と裏があってさ、どっちかとして普通は捉えがちなんよね。めっちゃいいひとやと思っても、ちょっとの悪いとこが見つかれば、よってたかってみんな叩くやん。難しいし、人間て怖いなぁとおもうよね。
まあ、言い換えたら、自分の考え方次第で相手はどうにでもなるよなって思ったって話。

【人を信頼し、信頼されるということとは?】
前に言ったこと、ここで出します。
わたしはわたしのことを信頼していないし、誰のことも信頼していない。
なんだか寂しいと思うよね。
自分のこと信じられないのに、ひとに「信じて!」なんて言えないし、信じてほしくもないから、浅い関わりばかりになってしまうのだよね。一線引いてしまう。どれだけ親しくなって、そのひとのことを知ったとしても、それはあくまでも一面に過ぎないということを改めて感じさせられた。
「一面だけを見て人を判断することほど、愚かなことはきっとないのだ」
ほんとうに、その通りです。

じゃあさ、”信頼する”ってどういうことなのかな。

信じて頼りにすること。頼りになると信じること。また、その気持ち。

ちなみに信用とは、

1 確かなものと信じて受け入れること。
2 それまでの行為・業績などから、信頼できると判断すること。また、世間が与える、そのような評価。

つまり、信頼は未来のこと、信用は過去のこと、なんだよね。

だからこそ、信頼されることは難しいんだよ、まだ見えないものだから。
信用があってこその信頼なんだよ。

だから、「わたしはわたしのことを信頼していないし、誰のことも信頼していない」というものは間違ってないと思うんだよね。
まずは「信用」できるように、ゆっくりゆっくり自分のペースで進んで行こうとおもう。

最後に

わたしは、就活とはかけ離れたキャリア選択をするが、「就活」というものがある意味羨ましく思った(もちろんあんな事件が起こるのはごめんだけど)。
レベルの高い同年代の学生と一丸となって必死に食らいつく姿、かっこよかった。

恩師の口癖だった、「質の高い仲間と質の高い仕事を目指す」が、いつしかわたしがキャリアを考えるうえでの口癖にもなっていた。
それが体現されている感じが、ものすごく羨ましくなった。

ひととひとが関わるということを小説とはいえ客観的に見れて、とてもおもしろかったです。

この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?