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キャッチーな言葉とのつき合い方|『楽しくなければ仕事じゃない』

『楽しくなければ仕事じゃない』干場 弓子 著

「仕事を楽しむ秘訣」は何なのか?
「今やっていることを好きになる秘訣」は何か?
「アイデアの作り方」「ミッションの見つけ方」の公式は?
「まず動く」には、どうすればいいのか?
「心が強くなる」には、何をどう考えればいいか?

同じ仕事でも、同じ日常でも、「視点」が変わるだけで、「価値」も「景色」も一変する!

すべては「働く人のため」の言葉だったのかもしれない。
でも違和感がある。

その違和感は

人が自由になるための選択肢・ヒントだったものいつしか「すべき」足かせになり、人を追いつめていることがある

ということに気づき始めてから起きた。

一番最初に感じた違和感は『ゆとり教育』に対してだったかもしれない。
それと同じ気持ち悪さを、『働き方改革』をはじめとするキャリアにまつわる言葉たちに、わたしは今感じている。

そんな気持ちの整理を助けてくれる本だった。

特にわたしが共感した5つのキーワードに絞ってまとめようと思う。

【好きを仕事にする】

「好き」を仕事にしなければいけない?

まるで、「好き」を仕事にしていなければ負け組と言わんばかりの空気が世の中に流れているように思う。
そしてその好きが、かなり具体的でないといけないような。

『無理に好きなことがあるふりをしなくていい』

この一言に救われる人は多いはずだ。
人は、その仕事の理念に「違和感がなければ」

『仕事に価値を与え、今やっていることを好きになる』

ことができるのだ。
問題意識課題意識を持ち、自分で自分の仕事に意味を見出し、「Want to」で自分で決断し続ければ。

「好き」は抽象的でいいじゃない!

【ロールモデル】

ロールモデルを見つけないといけない?

ロールモデルになるあこがれの対象を見つけたとして、その人の持つ条件はすべて自分と同じだろうか?

たとえば、あこがれのワーキングマザーのどこが「自分のロールモデルになる」と思えるのか?

夫の仕事や考え方、実家との距離や関係、資産、子どもの気質、自分の個性(性格・趣味)……すべてが自分にぴったりくる人はいないはずだ。
そもそも、自分より先を生きている(先にその課題に直面している)時点で、課題に向き合う時期・時代も違う。

もし、ロールモデルを設定し、想像と違うことが起きたときに必要以上に自分の不甲斐なさを責めたり、必要以上に環境のせいにしたりしてしまわないだろうか?

そのロールモデルは、もしかしたら、ワーママなどの分かりやすい言葉で、自分で自分をカテゴライズしてあてはめたものではないか?

『ロールモデルがいない分野こそ、先駆者になれるチャンス!』

もし、どうしてもロールモデルが欲しかったら、わたしはロールモデルのパッチワークをすすめたい。小さく小さく分けたパッチワーク。

仕事なら、時間配分はこの人!話し方はこの人!キャリアの築き方はこの人!
ライフスタイルなら、ファッションはこの人!お料理はこの人!お片づけはこの人!

そのお手本になる人は、必ずしも身近で見繕う必要はない。

ロールモデルは物語の中にいる!

これは、わたしが図書館をつくりたい理由でもある。

【ワークライフバランス】

『「ゆとり教育」のときのようなイヤな予感』

これがわたしが一番しっくりきた言葉。

「仕事」「勉強」=「苦役」「負担」って誰の価値観

仕事や勉強を苦役と考えている一部の人足並みをそろえて、仕事や勉強が楽しい一部の人の機会を奪う必要もないし、「真面目だね~」「意識高い系だね~」という言葉で自尊心を奪う必要もない。

スポーツや友達とお酒を飲むのが好きな人がいるように、仕事や勉強が好きな人もいるということ。

『幸運にも人生の目的と一体化できる仕事につけている人にまで呪いを押し付け、幸運を奪わないでほしい』

「ワークライフバランスをたもたなければならない」という呪いの言葉になったとたん、それは一気に配慮じゃなくなる

ゆとりが悪いわけでも、バランスが悪いわけでもない。

でも、ゆとりを感じる程度も、バランスの善し悪しも、人それぞれということ。

仕事も勉強も、主体的に夢中になれることならば健全だし、夢中になれることがあることは幸せなこと。

ライフワークバランスだって、ゆとり教育だって、そこに主体性がなく、ただその状況に置かれているだけだったら、そこに”幸せ”はない。

【自己責任】

「あぁ、分かってくれる人がいたのだ」と感じた。
自己責任を他人に使う違和感。

『うまくいっていることはすべて「自分のおかげ」という思い上りがあるからではないか』

努力ができる人が、努力不足に感じられる人の他責思考を責める、またはマウンティングするときに感じていた違和感。

わたしが、長~い文章にしないとまとめられなかった気持ちがたった一言で表現されていた。

すごくやさしいけれど、同じくらい厳しくもある言葉。

努力できるのも才能。その才能はたまたま自分に割り当てられたもので、「努力すること」はその才能を持たされた人の当然の義務である。

これは、努力に限らず、すべてのどんな小さな才能に対しても言えることで、その小さな才能を「世間からの授かりもの」と思え、その才能で「社会に貢献できている」と感じられるかが、自己肯定感につながるのだろう。

キャリアコンサルタントの仕事の一つは、

その小さな才能を見つけ、それを社会とつなげるお手伝いだ。


【自己成長】

「仕事の目的は誰かの役に立っているという実感」

誰かの役に立っている、そう思えた経験こそ、自分を成長させてくれていたと気づく。

「事実は変えられないが解釈は変えられる
 過去も現在も、すべては事実を”解釈”することで生きている」

わたしたちは過去を変えることができる。

解釈で。

就活の支援をしていると、ファーストキャリアで一生が決まってしまうと思っている人が多いことに気づく。

そして、そこに正解があると思っている。
正解、と言うよりも「間違えない事」だろうか。

この本に手を伸ばす人はすでに社会人である人が多いのではないかと思う。でも、就職活動を始める前に読んでみるのではないか。
社会人であれば転職活動を始める前に読んでみてほしい。

自己成長が就活軸でもいい。
でも、

なんのために成長したいのか。
成長し、なにを成し遂げたいのか。

わたしがこの本を読んでいちばんよかったこと、それは自分にとっての仕事の目的は、マズローの欲求の5段階の最下層、「生存欲求だけどなにか?」という自分を認められたことだ。

でも、その生存欲求ための仕事が単なる生活費を稼ぐためだけのものではなく、やるからには自身が成長し続け、貢献したいし、そのために選ぶ仕事は自身のビジョンに通づるものであればいい。そう思っている。

そう思える、やさしさと厳しさの塩梅が最高の1冊だ。

― 2021年2月16日 読了

《処方》

💊 「好きなことを仕事に」しなければと思っている
💊 WORKAHOLICな自分に自信がない
💊 就活・転職に悩んでいる

《印象的な言葉》

しかし、世界は、今、自分に見えている、それだけのものか?
あなたの未来は、今、あなたに見えている、それだけのものか?
あなたの可能性を、あなたが今思っている範囲にとどめていいのか?
深く掘り下げることで、物事の本質に迫ることができる。
物事の本質に迫ると、他の分野の本質と共振することができる。
「これはわたしがやりたいからやっている」と毎回選択する


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