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イノベーションリーダーに共感力が必要という話

先日、大企業においてイノベーションリーダーをどうやって育成するかというテーマのセミナーがあり、私自身の問題意識と合致していたこともあって参加させていただきました。

実際に大企業で、外部企業や大学、ベンチャー企業などとのオープンイノベーションを推進されている経営者の方、大学教授やコンサルタントとして企業のイノベーションを支援している方々、実際の現場でイノベーションリーダーとなるべく活躍されている方たちなどが登壇し、非常に興味深いセミナーでありました。

その中で、企業のイノベーションリーダーとして育っていく、あるいは育てていくために重要な要素は、課題設定力、共感力と一貫性をもった行動力だというお話があり、いずれも興味深い話ではありましたが、その中で特に“共感力”について、改めて私も、文字通り共感できたので、その点について少し掘り下げたいと思います。

なぜイノベーションリーダーに共感力が必要なのか。
そのセミナーで語られていたのは、自分のアイデアや提案を経営層、トップに理解してもらわなければ、せっかくのアイデアも実施できないことになる、ということが一番目の理由で、トップ層だけではなく、顧客や周囲の協力者を得るためにも、人の心を動かす感動を与える必要があること、また、こうすれば良いはずだという「論理」とそうしたいという「感性」を結び付けるということが、共感だというお話がありました。

実は同様の考え方は、他の著名な方たちも言っているのと、例えばTOC(制約の理論)などのフレームワークでも、同じ考え方が含まれています。

USJを立て直した森岡毅さんが、その著書「マーケティングとは組織革命である」の中で、誰でも会社を変革するその起点になることは出来る。そのためにはトップ批判ばかりをしていてはダメで、社内マーケティング、つまりトップや聞き手が考えていることを理解して、共感を得られる提案をしていかなければならない、とおっしゃっています。

また、TOC(制約の理論)の中では、組織の中の6つの抵抗の階層ということが取り上げられています。

・対応しようとしている問題を、問題として認めない
・ソリューションの方向に同意できない
・ソリューションが問題を解決するとは思わない
・このソリューションは、実行するとマイナスの影響がある
・ソリューションの実行を妨げる障害がある
・未知のことへの恐怖心

社内で自分の意見が通らないことって、たくさんありますよね。
思い起こしてみて、上記6つのどこかに引っかかっていたのではないでしょうか。

上司や経営層、あるいは周囲の人たちも、いじわるで反対しているのではなく、共感できなかった、ということではないでしょうか。
共感してもらうためには、“説得”する必要があります。
本気度を見せるとか、パッションだけでは説得はできません。あるいは、論理性だけでも難しいのではないでしょうか。
TOCでは、きちっと客観的な分析を示すことを説いているのと、6つの抵抗を丁寧に超えていくことを教えてくれます。
ただ、私が思うのは、論理がしっかりしていることは大事ですが、さらに感性に訴える、感動させるためのストーリーが必要だということです。

“共感”って何だろう、と考えることがあります。

マーケティングって、顧客の共感を得るための活動なのだといえるかもしれません。
前述の森岡さんは、マーケティングは、マーケティング部門だけのものではなく、もはや会社全体が取り組むべき課題であって、マーケティングとは企業活動全般に近い輪郭をもつものだともおっしゃっています。
私は、イノベーションリーダーに必要ないくつかの能力(脳力とも言いたい)の一つがマーケティング思考力だと色々なところで言ってきました。
マーケティング思考力は、技術者が世の中で活躍するために、技術以外で持たなければならない能力(脳力)なのだと今でも信じています。

マーケティング、あるいはマーケティング思考力は学びや実際の行動を少しずつ変えていくことで、鍛えることができるというのが私の持論でもあるのですが、先日のセミナーのパネル討論会の中で、どなたかがボソっと言ったのは、共感力を鍛える、つまり周りに共感してもらえる力を鍛えるには、自分自身がいろんなことに共感する力を養うことではないかということです。

私は、この誰かの何気ない言葉がとても印象的で、自分で共感する力のある人とない人との違い、あるいは周りで共感しやすい人と、しにくい人などを思い浮かべながら、このことについて考えてみたのです。

新しいもの好きな人というのがいます。セールスに売り込まれると、何だかすぐに信じて新しいものに飛びつこうとする人で、だまされやすい、という見方も出来ますが、こういう人は、実は会社の中でも会社を変える原動力になったりしていると、自分の経験からも思います。
反対に、いわゆる保守的な人というのもいます。今、大きな問題になっていないのに、なぜ変える必要があるのか、というのが基本的な考え方の人です。
実は、偉い人の中にもこういう人って、意外に多いと思います。

テレビドラマを観て、すぐに感動して泣いちゃう人と、冷めた目で見ている人。これもある意味、共感する力なのかもしれません。

人から共感を得られる人になるためには、これら共感することに対する感受性の違いを理解する必要があるのかもしれません。
そして、この違いをしっかりと理解するためには、ものごとに共感しやすい人になることが近道なのではないかという仮説を持つに至ったのです。

この仮説は、共感しやすい人は、共感しやすい自分が特殊かもしれないと考える傾向があり、共感しにくい人は、自分が普通で共感しやすい人が特殊だと考える傾向があると、私の経験から思うことが背景です。つまり、共感しにくい人は、“共感”ということを深く考えられない(傾向がある)のに対して、共感しやすい人は、“共感”という意味を考えられる(傾向がある)人だからです。

イノベーションリーダーは、会社組織の中で、共感しにくい人も含めて、周りの人に感動を与えて共感を得ていかなければなりません。自分自身が共感しやすい人になることで、人々が共感をするため、つまり自分の側から見て共感を得るために、しなければならないことを自然に、深く考えるようになることが必要なのだと思います。

自分の自慢をするわけではないのですが、私自身は昔から新しいもの好きで、すぐに聞いた話を試したくなるし、ひとの話をすぐに信じてしまう傾向があります。
宗教的な勧誘とか、英会話教材の勧誘とかで、騙されそうになって親を困らせたこともありますが、社会人になって、新しい考え方やツールなどをいち早く導入することで、良い成果を出せたこともあったと、この部分は自負しています。

また、これは最近になって(年齢を重ねて)顕著になってきたと思うのですが、テレビドラマを観て、すぐに感動して泣いてしまうので、家族から(特に娘から)揶揄われたりしています。
余談ですが、涙を出すのは、ストレス解消にとても効果があるのだそうです。

また、技術コンサルタントとして、セミナーなどで若い技術者の人たちに講義をするようになって約3年になりますが、できるだけわかりやすく、ということを徹底してやってきて、アンケートなどで、「わかりやすい説明でした。」というコメントをいただくことも増えてきて、自分なりには達成感を感じたりもしています。
もちろん、まだまだ不十分ではありますが、マーケティング思考を講義しながら、自分自身の共感力をもっと上げていきたいと思っています。
ぜひ、共感しやすい人になることを考えてみてください。


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