【本の話】食と料理、ときどき旅の本

少し前にブックカバーチャレンジが流行りましたよね。そこで食がテーマの本を2冊紹介しました。読んだ友人知人から「この本は自分も好きだ!」みたいな声をもらって、本当にいい本だよなあ…と以来頭から離れなくなってしまったので(笑)、ここでも紹介します。

食とジャーナリズムと旅の交差点

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1997年出版の本。ジャーナリストの辺見庸さんが、”飽食の国”日本に苛立ち、世界の紛争や飢餓が日常風景として広がっている国やチェルノブイリなどの"危険地帯"に身を投じ、現地の人と同じものを食べ、そこに暮らす人を描いた迫真のルポルタージュです。

大学時代に読んだ時は「食」がテーマの本だと思っていました。改めて読み返したら、「食」切り口のジャーナリズムの本、が正しいと思いました。自分がメディアの仕事をするようになったからそう思うんでしょうか。骨太なジャーナリストの迫力を感じます。特に、最後の韓国の元慰安婦の3人への取材の回は胸に迫るものがありました。こんな話引き出せる日本のメディア人、とてもじゃないけど今いないと思います。同じ本でも、読む自分のコンディションによって受け取るものは変わるものですね。

世界の料理とレシピとAI脳

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この本に出会ったのは5年ほど前。長い積ん読期間を経て、育休中に読みました。感想は…こんなに面白い本だったなんて、読んで本当によかった!

文筆家の玉村豊男さんが世界各地で食した美食を自ら分析し、自宅の台所で再現しながら考察を深めていくのですが、やり方がストイックすぎて、趣味人なんだけど巷の料理本にはない本質論にたどり着いてしまったという感じの本です。

「そもそもサラダとは何か」
「サラダの定義を持って刺身を見れば、ツマ添えの刺身は立派なサラダではないか」
「サラダと呼べる範囲は一体どこまで拡張できるのか・・・」
といった具合に(ざっくり意訳含めて書いてますが)、料理という現実的で実際的なものを、抽象的に突き詰めていきます。

例えばスーパーで美味しそうなタコを見つけて、「酢の物にしようかな、オリーブとオイルであえて洋風のマリネもいいな」と考えるまでは普通の感覚だと思うのですが、「東西のタコ酢において醤油と油は変換可能」みたいな思考に還元していくのが考えたことなかったわ、、という感じで、舌と頭の両方が刺激されます。

調理器具の歴史的進化とか、フランス料理がフランスのお母さんの家庭料理からいかに洗練されて今に至ったか、みたいな歴史的な考察も面白いですよ!最後には、あらゆる料理をプロットできる四面体のモデルを考案する境地に至るのですが、もはやこれはAIの仕事だなと思い。

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古今東西の料理を学習して行った結果、こういうモデルをAIが発見した、という感じがします。IBMのワトソンが考えるレシピって背景にこういうものがあるのかなあ。それともあれはひたすら順列組み合わせをしているのだろうか。

単行本初版は1980年ですが、そんなAIの存在すら感じてしまうほど、全く古びない普遍的な面白さを持った本です。

ブックカバーチャレンジの最中、数名の方から「ポチった」「買う!」と連絡いただきました。読書文化の普及にも多少は貢献できたかも。好きな本の感想を言い合えたりして、楽しい幸せな時間でした。

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