【編集の話vol.2】雑誌編集の面白さって?

編集の話の第2回です。

前回と同じく、OB訪問に来た学生さんに説明する、もしくは全く異業種の人にお話をするスタンスで書いています。
(以前学生や異業種の方向けに編集の仕事についてお話しした機会があり、その内容を元にしています)

さて、今回は雑誌編集の面白さについてです。
いっぱいありますよ!
ぜひお付き合いください。

まずは、前段としてこれを。

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雑誌編集の作業の進め方をざっくり書き出しました。

編集者によって、どの部分が好きか(得意か)は分かれると思います。
企画するのが好きな人、取材などで人とじっくり向き合うのが好きな人、書くことが好きな人、誌面の見せ方を考えるのが好きな人、雑誌や本という物が完成することに喜びを感じる人・・・。発売後に反響が届くのがたまらない人も、いますよね。

私自身はと言えば、全部が好きで。・・・というより、全部に携われるから編集者を選びました。

書くことがとにかく好きならライターになる選択もありますし、誌面デザインをやりたければエディトリアルデザイナーがその道のプロです。

でも私はどの工程も、自分でやりたくて。学生の時、自分で雑誌を作っていて、企画して原稿書いて、自分でデザインもしてました。
(おぼつかない手取りで作ったイラストレーターの入稿データ、今考えると印刷会社の方々はご迷惑だっただろうと思います^^;)

就職活動をすることになって、社会では出版物の制作は分業になっていて、全部やれるポジションはなかなかないと知りました。
迷いながら、出版社も制作会社も、それこそ印刷会社も受けましたけど、最後の最後に今の出版社に内定をもらって、編集者が結局いちばん広く関われるなと思って入社を決めました。
(入社前は『うちは原稿はライターさんが書くので編集者は書きません』と聞いていて残念だったのですが、入ってみたらそんなことはなくガンガン書かされました・・・結果オーライです(笑))

さて、本題です。雑誌編集の面白さ!

1. 魅力的な人たちとの出会い

一番はこれです。
よく編集者は「名刺1枚で会いたい人に会える仕事」と言います。
その通りで、これまで数々の才能あふれる方々にお会いしてきました。
普通に生活していては、まず一対一で時間を作っていただくことは叶わない方々です。
目の前で、そういう特別な人が、こちらの質問を真摯に受け止め、考えて答えてくれる。
その答えに「なるほど!」とうなったり、切り返しの鮮やかさにびっくりしたり、考えの深さに感銘を受けたり・・・。
こんな贅沢な時間はありません。

だから、原稿はその時間をくださったことへのお礼も込めて、真摯に書きます。
自分がその取材でいただいた感動や発見が、読み手にも伝わるように。
取材の場は一対一ですが、取材された側は、インタビュワーの向こうにいる読者に向けて同時に話しているわけですから。

こうして、15年間の雑誌の編集の中でお会いした方々との時間やつながりは、私にとって無形の財産です。
きちんと原稿を仕上げて、取材を受けてよかったと思ってもらえたら、その人との信頼関係が生まれます。
それは、時間が経ってもなくならずに積み重なっていきます。


2. 人に伝えることの面白さ

人に伝えるって、難しいけれど面白いですよね。

原稿も、タイトルも、写真のチョイスも、キャプションも、誌面のレイアウトも・・・雑誌制作の仕事は、つまるところ、どうやったら伝わるか(それも、興味を引く形で)を四六時中考えることでもあります。

私自身はしゃべることはあまり得意ではないのですが、昔から本や雑誌をよく読んできたこともあってか、文章やデザインで人に伝えることなら少しだけ得意です。

これまで見てきた色々な物の記憶を頭の中で総動員しつつ、こんな見せ方ならスカッと気持ちよく伝わるのではないか、こういう書き出しならすっと入り込めるのではないか・・・など、ああでもないこうでもないと考えて、形にしていく作業は楽しいです。


3.誌面ができた時の喜び

雑誌が印刷されて納品された時。
あるいは、初稿(原稿や写真が組み上がった誌面デザイン。ゲラとも言います)がデザイナーさんから上がった時。

自分の思い描いていたものが形になって、体温が少しだけ上がる瞬間です。

デザイナーさんがこちらのイメージ通りに組んでくれて、そうそうこれ!と嬉しくなることもありますし。
ラフと敢えて変えて「これでどうでしょう?」とデザインを提案してくれるのも、「いいね!」と嬉しくなります。

チームでやる意味というのはここで、誌面作りに関わる人たちが少しずつ「こうしたらもっといいのでは?」とアイデアを積み重ねていくことで、最初に編集者が頭の中で描いていたものを超えていくものができます。

そういう場に立ち合う瞬間が喜びですし、仕事を続けていくモチベーションにもなります。


4.読者の方々からの反響、手応え

そして、発売した後は反響があります。

SNS上で感想が書かれていることもありますし、直接お声をいただくこともあります。
あるいは、売上げ(売れ数)という形で数値で把握できる反響もあります。
読者アンケートで声を聞くという手段も、ありますね。

やはり、強い企画(キャッチーで、かつ中身も伴っている)の時は、発売して即座にSNSなどに反応が出ます。
「神回!」などと書かれて、書店(リアル書店やアマゾン)での売上げもぐっと上がると、ガッツポーズです。
とは言え、私の夢の一つである"雑誌の重版"はまだ叶っていません・・・。
いつか「本号 好評につき重版!」と宣言したいです(燃)。

SNSでの反応と言えば、まだTwitterの企業アカウント黎明期の頃に、雑誌のアカウントを自分で開設したんですよ。
そうしたら、「あの雑誌のアカウントができてた!」とわっと反応が上がって、続々フォローしてもらえて。
私、それをリアルタイムで目撃していて(ピコピコ通知が出つづける状態)、静かに感動してました。
こんな風に反応してくれる読者がいるんだ、こういう人たちが普段読んでくれてるんだって。
SNSがそれを可視化してくれて。
この体験を通じて自分の作っている雑誌を誇りに思えたし、期待に応えられるようにもっと頑張らなくちゃ・・・と気が引き締まったのでした。

それから、反響というのは、編集部でなく取材先や著者に届くものもありまして。

「昔の同級生から『見たよ!』と○年ぶりに連絡が来た」というようなものもあれば、
「全く知らない地域の企業から、仕事の依頼が来た」とか、逆に「大御所の○○先生から『キミと話がしたい』と連絡があった」といったものまで。

こういうお話を聞くと、「メディアは飛び道具なんだな」というようなことを感じます。要は、予想もしなかったところへ届く、という意味です。

今はSNSで自分で発信できる時代です。1つの投稿に何千いいね!もつくようなメディア並みの影響力のある方もいます。けれど、SNSでの発信は、その人に興味を持っている人(とその周辺)には届きますが、そのさらに先へと届けるのはなかなか難しい。
けれど、雑誌や本は、書店でたまたま目について手に取ったとか、書評で見て知ってもらえたり、人的ネットワークの地続きの範囲を飛び超えて、ぽんとそのテーマに関心のある人の目に飛び込むことがある。

その予測のつかないところから反応が来て、つながって、また新しい何かが生まれていく・・・というのが、実は一番面白い反応(化学反応と言ってもいいかもしれません)ではないか、と思うのです。

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