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【連載エッセー第6回】大学から宝を持ち帰る

 丸山啓史さん(『気候変動と子どもたち』著者)は、2022年春に家族で山里に移り住みました。持続可能な「懐かしい未来」を追求する日々の生活を綴ります。(月2回、1日と15日に更新予定)

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 薪ストーブや薪ボイラーを使う生活には、たくさんの薪が必要だ。しかし、私たち家族は、山をもっているわけではない。薪(にする木)の入手が大きな課題になる。

 思いついたのは、大学(職場)で薪を調達するという方法。私が勤める京都教育大学は、たいへん草木の多い大学だ(夏は蚊も多い)。この環境を活かさない手はない。

 折れた枝や切った枝を、大学は業者さんに頼んで廃棄に回している。エネルギーと費用を使って資源を処分するなんて…。木の枝は、有効活用させていただこう。集積場の「廃棄物」の山は、私には宝の山に見える。

 学内の環境整備を担っている職員さんと話したら、薪によさそうな手頃な枝を確保してもらえることになった。私の研究室から近い薪づくり作業場(と私が勝手に決めた場所)に木を置いてくれる。たいへんありがたいことで、感謝でいっぱいだ。研究室に備えた穴挽鋸(第5回を参照)で、仕事の空き時間に木を切っている。

大学の「薪づくり作業場」

 問題は、遠く離れた自宅までの薪の運搬。クルマは使いたくないし、そもそも私はクルマをもっていない。仕方がないので、通勤に合わせて、少しずつ、せっせと薪を家に持ち帰ることにした。

 薪を入れるのは、大きな布のリュックだ。老舗のおかき屋さんが廃業されるときに、ひょんなことから譲っていただいた品の一つ。旧日本軍のものらしく、兵隊が足に巻くゲートルといっしょに手に入れた。米軍基地と自衛隊の解体を望む私としては、軍事用品を使うのは気が引けたけれども、迷彩柄というわけではなく、見た目には軍隊色が薄い印象だったので、使うことにした(ゲートルは使っていない)。たっぷり入る丈夫なリュックなので、助かっている。

 薪をリュックに入れたら、それを自転車の後ろカゴに積んで、駅まで自転車に乗って走る。そして、電車に乗り、バスに乗り、家の前でバスを降りる。リュックを背負って歩く距離は長くない。だから何とかなっている。木の枝がのぞく古風な大容量リュックを持って電車に乗るのは少し(かなり?)怪しい感じかもしれないが、この際それは気にしない。

右手に通勤鞄、左手に弁当箱、背中に薪

 ただ、リュックで薪を運ぶのは、なかなかきつい。せっかくの大容量リュックではあるものの、ぎっしり薪を詰めこむと肩や腰がもたないことがわかった。一度に多く運びたい気持ちと、自分の体をいたわりたい気持ちがせめぎ合う。

 やっぱり、遠いところから薪を運ぶというのは、どうも持続可能なものではない。薪にしても、地産地消が最善なのだと、痛感している。

『気候変動と子どもたち 懐かしい未来をつくる大人の役割』

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