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読書家の善悪

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2020年8月の記事一覧

キミがいるから時間が動いた。桐島は部活をやめるし、兎はこれからも跳ねている。

 美術部にいた時のことを、僕はあまり覚えていない。

 顧問の先生は部活には顔を出さないし、入部しているはずの部員は誰も来ない。そんななかで、部活には毎日でなければいけない、と、あいまいな強迫観念に縛られた僕は、誰にも教わらずに家族旅行でたびたび買っていたポストカードを鉛筆でひたすら描くことを繰り返していた。

 ただそれだけだったんだけど。放課後の教室特有のあの誰しもが経験している雰囲気だけは印

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