見出し画像

【エッセイ】即断即決な読書好きの成人男性が短歌に出会い「今、ここ」を味わってみた

(こんな方にオススメ)

・今までとは違った読書体験をしてみたい。
・本を読みたいけど、長い本を一冊読み切る自信がない。
・最近忙しくて、ストレスが溜まりがち。
・短い時間だったとしても、自分の時間を大事にしたい。

(短歌って詠みます?読みます?)

皆さんが短歌を最後に読んだ(詠むではなくても)のはいつのことでしょうか。
それとも中学校の国語の授業?友人の返答が絶妙に韻を踏んでいた時?旅行先で見た石碑に刻まれた一首でしょうか?

たいていの人は日常生活で短歌に触れる機会はなく、義務教育で習った知識を頭の奥深くに眠らせていて、何かのきっかけで「あ、短歌」という4文字の思考が脳内をサッと横切っては消える。そんな感じなのではないかと思います。

僕自身もそんな日常を送っていたんですが、最近、転機が訪れました。
友人がYouTubeで短歌の魅力を紹介していたのです。
信頼できる友人からの勧めほど、興味をそそることはないですよね。
そんなわけで、1冊の歌集を買って読んでみたのですが…
自分でもびっくりすることに、今まで触れて来なかった世界観に感動して、歌集をさらに追加購入するに至りました。

もちろん、感動したのは「文学的な美しさ」もなのですが、文学的素養の少ない僕にはそれを言語化できるほどの知識はありません。
ただ、そんな僕でも「短歌を味わう」という行動がもたらしてくれる効果に感動したことについては表現できるような気がしました。
ですので、今日はそのことについて書いてみたいと思います。

僕が感じた「短歌を味わう」ことの最大の効果。
それは「自分の思考・感情と向き合うことができる」ということです。
それは忙しい現代社会では、とても貴重で大事にしたい時間でした。

「短歌にハマった」と言うには、おこがましいほど最近のブームではありますが、今回は僕なりの短歌の楽しみ方について、紹介していきます。
皆さんにとって、新たな世界、新たな自分と出会うための「きっかけ」になれば嬉しいです。

(マインドフルネス、知ってます?)

皆さんは「マインドフルネス」という言葉を聞いたことがありますか?
最近では、わりと一般的に知られている言葉になっているので、「聞いたことはある」という方もいるかもしれません。

マインドフルネスは「今、この瞬間の体験に意図的に意識を向けて、評価せずに、とらわれのない状態で、ただ観ること」と言われています。(日本マインドフルネス学会HPより)

元々は仏教の瞑想などで使われていた概念ですが、近年になってから、宗教的な要素を排除して、科学的な効果が検討されており、今ではストレス対処の方法の1つとしてメジャーなものになってきました。大手企業などでも、このマインドフルネスへの効果に注目して、生産性の向上や社員の健康向上を目的に導入しているとか。

マインドフルネスでは、過去や未来などから離れて、今のこの瞬間、五感で感じる刺激やそれに対する思考・感情に意識を向けます。
なぜそのようなことをするかというと、人間の脳は、過去や未来、他人という自分ではどうすることもできないことを考え出すと、エネルギーを大量に消費して、思考や感情がループする(頭の中での独り言が止まらなくなる)と言われているからです。
そしてそのループした思考や感情は、脳にとって大きなストレスになります。

皆さんも心あたりはないでしょうか。
「友人に余計な一言を言ってしまった自分に対する後悔」
「明日も上司から文句言われるんだろうな、という不安」
「いくら指示しても仕事をしない部下への苛立ち」
悩みとかストレスって、だいたいが過去か未来、他人に関することですよね。

だからこそ、「今、この瞬間」の自分の思考・感情、五感で感じる刺激に意識を向けて、自分自身をただ眺めてみる、ということをするわけです。
そうすることで、一度、過去を手放し、未来への不安から解放され、脳の負担が軽減します。
それが、ストレスが低減したり、気持ちの切り替えにつながります。

(短歌でマインドフルネス)

マインドフルネスを実践する方法として瞑想があります。瞑想は大きく分けると、座禅を組んだり深呼吸などをして行う「静的瞑想」、ストレッチやウォーキングをしながら行う「動的瞑想」がありますが、その実践方法は多種多様です。

例えば、食事をしながら行う瞑想もあります。
食事の時に、味覚だけでなくて、食べるもの色や形、匂い、食べ物や使う食器の質感や触り心地、口当たり、喉を通っていく感覚、咀嚼するときの音などに意識を向けながら感覚を総動員して食べます。
そうすることで、自分の感覚(食欲の変化や満足感、食べたことによる気分の変化など)に対して敏感になり、爆食がなくなるなどダイエット効果も期待されています。

マインドフルネスについて書かれた本を読むと、色々な実践方法が載ってますので、試してみたい方は読んでみると「こんな方法もあるの!」と自分に合いそうな方法が見つかると思います。

そんな色々な実践方法がある中で、僕が提案したい方法が「短歌を味わう」です。

僕は、自分のことを「せっかち」だと思っています。
何に対しても「即断即決」。あんまり迷ったり悩んだりすることありません。
読書をしていても、「サッと読んでサッと解釈。はいおしまい!」みたいな楽しみ方です。
なので、1つのことに留まることを苦手としています。
そんな僕ですので、短歌や俳句を読み始めた時は「はい読んだ!終わり!」となってしまい、その良さがよくわかりませんでした。
そこで考えて編み出しのが「マインドフルネス読書で短歌を味わう」です。
これが大当たり!僕の中で、短歌の世界が急激に生き生きとしてきました。

方法は簡単。
先ほどの食事の瞑想と同じように、五感で感じる刺激に意識を向けていきます。
例えば、本の厚みや質感、ページを捲る時の手の動きや音。本の肌触り。空間のざわめきや匂い。文字のフォント。言葉からイメージした風景や音。言葉のリズムなどなど。
そうすることで、普通に読んでいた時以上に、その歌から感じるものや、表現している意味に思考・感情が向いて、短歌の世界を感じることができました。

そして、短歌の世界を感じながら、その短歌を読んでいる時の自分の思考・感情にも意識が向いてきます。

「自分は違う言葉を選ぶかもしれない」
「言葉の韻が気持ちいい」
「この言葉にゾワゾワする」
「紙の触り心地が好き」
「漢字じゃなくてひらがなで書いてあるのが可愛い」

短歌を読んでいる時に頭を走る自分の思考・感情を判断や評価せずに、客観的に眺めることで、自分の状態を観察することができます。
そして「自分って意外とこういう歌が好きなのか」とか「こういう言葉が苦手なのね」というように自分自身について新しい気づきも生まれました。

こんな風にマインドフルネスに歌を読むことで、たった一首の歌を読んだだけで、没入感が生まれます。歌人が表現した世界という刺激から、自分が感じた世界に想いを馳せ、思考・感情が巡り、自分を客観的に観察する。自分でも気づいてなかった自分の中の価値観や考え方のクセ、感情の動きに出会う。そして、ふと我に返った時の爽快感や解放感たるや!

短歌というたった31音しかない言葉の刺激から、自分自身についての理解が深まるっていいですよね。

(まとめ)

速度と成果が求められる現代社会。いつも過去を振り返り、未来を見据えて行動することが求められます。職業生活では、PDCAサイクルが当然のように求められ、改善・上昇至上主義の世の中です。
もちろん、それはそれとして社会生活を送るために必要な考え方・生き方の1つなのですが、たまには、自分のために「今、ここ」に留まって、自分の思考・感情に意識を向けてみるのはどうでしょうか。
今日はその1つの方法として、「短歌を味わう」を紹介しました。
短歌の楽しみ方は人それぞれ、解釈も人それぞれです。
最初はパラパラとページを捲るところから始めて、目が止まったり気になった歌を見つけたら、そこに留まり、自分の思考・感情に意識を向けてみる。そんな楽しみ方はどうでしょうか。
もちろん、留まらないというのも自分の選択です。
自分にとって、心地いい楽しみ方から始めてみましょう。

ポイントは2つです。

・「今、ここ」に意識を向けること。
過去や未来のことはひとまず横に置いて、今の自分自身の感覚に意識を向けてみましょう。僕は触覚が一番集中しやすかったので、過去や未来に意識が移ったなーと思った時は、手のひらの感覚に意識を向けていました。

・判断や評価をしないこと。
まずは自分の感覚をありのまま受け入れてみます。その時に、思考・感情の言葉に対して「○○って思ってるなー」と頭の中で呟いてみるといいかもしれません。

なかなかすぐにというのは難しいですが、とっつきにくい短歌にそんな楽しみ方もあるんだ、ということで試してみてはいかがでしょうか。
皆さんの読書生活に新しい楽しみができますように。

(参考:オススメの短歌集)

・「短歌タイムカプセル」 東直子他(編) 書肆侃侃房
友人がYouTubeでも紹介していた一冊です。現代歌人115名の作品が各20首も収録されています。自分が好きな歌人を探すにはもってこいの1冊でした。僕もこの本を読んで、お気に入りの歌人が見つかりましたよ。

・【短歌】おすすめ短歌集8選を選んでみた!
友人が短歌集を紹介しているYouTube動画です。僕はこれで短歌の世界にハマりました。短歌って意外と気軽に楽しめるんだ!という気づきになった動画です。短歌に興味がないという方こそ、ぜひ!
動画はこちらから

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?