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イラストから虹色の光が!?紙がクリアインクを吸い込んだ!?「体験!!なるほどなPAPER」で新たな発見をしてしまいましたっ!(後編)

イラストから虹色の光が!?紙がクリアインクを吸い込んだ!?「体験!!なるほどなPAPER」で新たな発見をしてしまいましたっ!(前編)では、光を反射してシルバーや虹色に輝くメタリック、パールの紙とクリアインクの組み合わせで輝きを増幅できる話を中心にご説明しましたっ。アルブライト(レインボー)という紙を使用した作品の輝きには本当に驚きましたっ!

本日は後編となる2つ目の作品の解説をさせて頂きますっ!まずは、たこかるごさんにご準備頂いたイラストのラフからご覧くださいっ。

ヨーロッパの老舗レストランや歴史のある劇場のポスターのようなレトロな空気が漂う
イラストを前に、またいつものように紙と印刷の妄想スイッチが入りました!

作品の中の「水」をどう表現する?

たこかるごさんの1つめの作品では「光」をどのように表現するかで、紙や印刷方法についてあれこれ作戦を立てましたが、今回は作品の右側に入る「水」をイメージした表現がポイントになると思いました!あとは、作品に漂うヨーロッパのレトロな空気を紙で表現したいという考えから、たこかるごさんと打ち合わせを重ねながら最終的に3種類の紙を選定しました。

1.ハイボーンA ストリームMS #250
2.新・星物語 パウダー 180kg
3.新アトモス マリン 170kg

「ハイボーンA」は紙とアルミを貼り合わせて更にエンボス加工で紙に柄を付けた紙になります。普段はお酒のパッケージや少し大きめの図録の表紙などに使われます。
「新・星物語」は夜空に輝く星空をイメージした紙です。
書籍の見返し、扉によく使われる紙です!
「新アトモス」は「大気」「空」をイメージしたマーブル模様が入った紙になります。
8色ある色の中から作品のイメージとぴったり合いそうな「マリン」という色を選定しました!

未体験の印刷テストにドキドキ、ハラハラ!

3種類の紙の選定を終え、いよいよテスト印刷当日を迎えることになったのですが、実はわたし紙谷、今回の作品が一番仕上がりの想像がつかず、内心かなりドキドキしていたのでした!

ショウエイさんのデジタル印刷機で、これまで様々な紙で作品作りをしてきましたが、印刷の色がきれいに表現できる真っ白なコート紙と呼ばれるような紙であったり、メタリック調やパール調の紙を使用することが圧倒的に多く、実はそれ以外の紙はほとんど使用した経験がありませんでした。ましてや今回はイラスト作品ということで、紙の色や質感が作品にどのように影響するかといったことがわからない中でドキドキ、ハラハラの立ち合いとなったのでした~。

いざ、テスト印刷!

仕上がった3種類の作品を前に「おお~っ!」と思わず声をあげてしまいましたっ!

まずは、仕上がった3種類の紙を机の上に並べて作品とのご対面ですっ!
(緊張の瞬間ですっ!)

「おお~っ、3種類ともすごくきれい!」
「でも3種類で仕上がりのイメージがずいぶん違う!!!」
「真ん中の新アトモスは、一体どうなってるの???」
「新・星物語の仕上がりは!」

目の前の作品を前に、情報が押し寄せてきたのですが、「冷静にならねば!」と深呼吸し、1点ずつ紙による仕上がりの違いを見ていくことに。

ハイボーンAはクリアインクがしっかり乗ってツヤツヤに!

「ハイボーンA(ストリームMS)」は紙の上にインクがしっかりと乗り、予想していた通りツヤツヤの仕上がりにっ!!!

イラストの左部分(上の画像の手前の部分)にはベースにホワイトを入れていて、そのホワイトインクがしっかりと効いているため、紙の柄だけでなくシルバーのメタリック感も見事に消すことができたのでしたっ!

クリアインクがしっかり紙の上に乗っていて「水」の部分の光沢が強く出ましたっ!

予想外!?クリアインクを吸い込んで変化した新アトモス!

続いて、そのお隣のマーブル模様が全体に入った「新アトモス(マリン)」を見ると、特にクリアインクを乗せた「水」部分が、これまで様々な作品で見てきたクリアインクのツヤッとした感じとは異なる仕上がりになっていて、わたしもショウエイのプリンティングディレクター天野さんも、

「これは一体???」

と、最初何が起きているのかわからずにいました。下の画像はクリアインクで印刷した部分を近くから撮影しており、ハイボーンAとの仕上がりの違いがよくわかるのではないかと思いますっ!

印刷面がツヤッ仕上がるいつものクリアインクとは全然違っておりますっ!

ハイボーンAの画像と比べても一目瞭然で、まずクリアインク部分がグラスに付いた結露のような水滴が固まったような仕上がりになっていますっ!

更に作品に近づいてよーく見ると、クリアインクで印刷された部分から1㎝くらい外側にまでインクが滲んだような痕があり、紙色も若干変化していたのですっ!

青い矢印の部分、クリアインクが紙に滲んだ痕なのですっ!

どうして「新アトモス」はクリアインクが滲んだの?

プリンティングディレクターの天野さんに滲み原因を聞くと、やはりクリアインクが紙の中に吸い込まれた結果ではないかということでした~!

ショウエイさんの最新の印刷機であるデジタルUVインクジェットはインクが噴射された次の瞬間にはUVランプでインクを硬化させるため、基本的には紙の性質には大きな影響を受けることなく、きれいに印刷ができるのが特徴ですっ!


滲みの原因の1つに紙の密度が関係していました!

しかし、それでも今回の 新アトモスのような「ふかっ」としたやわらかい紙に、艶を出そうとしてクリアインクを厚く盛ろうとした結果、クリアインクが噴射されたその瞬間に紙がクリアインクを吸い込み、これまで見たことのない、変化を起こしたのでした~!

更に、これまで写真やイラストなどの展示作品でよく使用される紙は、コート系の紙や金銀パール系の紙で、紙の表面に塗工がされていたり、アルミが貼られている紙でした。しかし、新アトモスはそういった塗工もされておらず、そもそもインクが滲みやすい紙だったこともありました~。

わたくしも、たこかるごさんも2枚目の新アトモスが作品ととてもよく合っていたので、紙はこのまま新アトモスで、クリアインクの滲みを極力抑えて、きれいな艶を出す何かいい方法はないか相談したところ、プリンティングディレクターの天野さんからのご提案で、イラスト部分にまずホワイトを印刷し、その上からカラー、そしてクリアインクを印刷することにしました~。2作品目も、何とその場でデータを修正して頂き、作戦会議をした10分後には再び印刷がスタートしたのでした~!(何という早業っ!!)

ということで再び印刷へ~!!!
(印刷の様子を動画で撮影しましたので、ぜひご覧くださいっ!)

(約2分と少々長めの動画になります。ホワイト印刷後から撮影をしています。画像ではわかりにくいですが、イラスト部分にホワイトが印刷されていますっ)

おぉ~、明らかに最初の仕上がりとは違う!
ここでテンションが一気にあがりました!

ビフォーアフターで比較してみる!

では、さっそく見ていきましょう!!!

ハイボーンAのような全面の艶感はないものの、最初と比べると明らかに艶が出るように!
(左)ホワイトなし(右)ホワイトあり
右のホワイトをベースに入れたほうがクリアインクの滲みが
ほとんど起きず明らかにクリアな仕上がりに!

ホワイトインクを最初に印刷したことで、例えていうならばパテのような役割をして、そのあとのクリアインクが紙に浸透するのを防いだのです!これにより、目に見える滲みも消え、またクリアインクの艶感も増し、理想的な仕上がりとなり、2作品目のテスト印刷も無事に終了したのでした~。

新・星物語の仕上がりもハイボーンAほどではないですが、
クリアインクの効果は出ました!しかし紙面全体で見ると、
新・星物語の紙の特徴である、キラキラした感じが少し弱くなりました~。

たこかるごさんも2作品のテスト印刷の仕上がりに安心され、このテスト印刷をベースに改めて最終調整をしたうえで、いよいよ次は本番の印刷に臨むことになります~。(たこかるごさん、暑い中ショウエイさんでの印刷立ち合い本当にお疲れ様でした~!)

というわけで今回の「体験!!なるほどなPAPER」のテスト印刷でも、思いもよらない結果にハラハラ、ワクワクの連続でした~っ!というわけで本日もお読み下さりましてありがとうございました~。

今回も、プリンティングディレクター天野(正面)さんのアドバイスと、
その場でのデータ調整により、ピンチを切り抜けることができました!


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