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立命館大学政策科学部30周年記念誌寄稿:「上久保ゼミ:学生主導で新しい学びを創造する」

「岸田首相はなぜ嫌われた?」(後編)の前に、閑話休題で1つアップします。(後編)は明日になります。すみません。

立命館大学政策科学部30年記念誌に寄稿しました。個人的には、過去の事より、10年後に政策科学部があるのかどうか心配なので、お祝いするのは気乗りしません(笑)。これはいろんなところで公言していること。

しかし、頼まれた仕事はするので、以下の通り書きました。過去にどこかに書いたものをまとめただけですので、既にご存じの内容という方も少なくないと思います。読み飛ばしてください。

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 これからの大学の学びは、教員が学生に与えるのではない。「デジタル・ネイティブ」である学生が中心となり、「新しい学び」のスタイルを創るべきである。

 2020年新型コロナウイルス感染症のパンデミックが起こった時、ZOOMなどを使った遠隔授業が導入された。だが、「上久保ゼミ」では、その8年前の2012年に、既に遠隔授業をやっていた。

 当時のゼミ長が、大型バイクの自損事故で左脚を骨折し、京都第二日赤病院に入院した。当然、ゼミは長期欠席となると思った。ところが、次週のゼミ、私が教室に行くと、ゼミ生のパソコンの画面に、病室で脚を吊ったゼミ長が映っていた。そこから研究発表を始めたのだ。当時のテレビ電話システム「SKYPE」を病室で使ったのだ。これが、上久保ゼミの遠隔授業の始まりだった。

 その後、上久保ゼミでは遠隔授業を進化させていった。最初は、「語学力」の向上に使った。語学力向上には留学が一般的だ。だが、留学のいらない「衣笠留学」「OIC留学」を標榜した。香港中文大学日本学部の学生と、SKYPEを使った日本語・英語(または中国語)の語学のエクスチェンジを行った。

 また、2016-19年の学園祭「One World Week」では、OICキャンパスの図書館前の大スクリーンを使って、香港の学生と安全保障などをテーマにオンライン・ディベートのイベントを行った。2020年1月、香港民主化運動の女神と呼ばれたアグネス・チョウ(周庭)氏と、民主化をテーマとしたオンライン・ディベートを行った。

 遠隔授業は、ゼミの様々な場面で使われた。例えば、名古屋出身のゼミ生が、地元で就職活動をしていて、学期の間、一度も教室に来られなかった。だが、SKYPEを使いゼミに皆勤した。以降、上久保ゼミでは「就活での授業欠席」という概念は、原則的になくなった。交換留学のカナダから、ゼミに参加した学生もいた。現地時間は真夜中だったが、自発的に参加したと信じている。

 様々な遠隔授業の経験を積み重ねてきたので、新型コロナのパンデミック時、上久保ゼミは動揺しなかった。ゼミ生は、「危機は好機」として「今こそ、新しい大学の学びを創る」と言った。遠隔授業、ハイブリッド授業の手法の様々なバリエーションを学生主導で創り出された。コロナ禍が収まった後も、新しいゼミの学びの手法として残っている。

 上久保ゼミでは、10年前から、私が「おい、こんなものがあるぞ(例えば、SKYPE、Discord、Slack、ZOOMなどなど)」と見つけてくる。私には、そういう勘の良さはある。後は、学生に任せると、綺麗に新しい授業の手法を開発してくる。その繰り返しで今日に至っている。

 ゼミでは今、noteというSNSのアカウントを全員が持って、日々の学びを記し、公開している。SNS時代に対応して、大学の学びを公開し、社会とシェアし、ネットワーク化していくという取り組みだ。

 先日も、ゼミ生が自発的に集まって、Chat GPT、Google Gemini、Consensus AIなど生成AIをいかに使い倒して学びのレベルを上げるかを議論し合っていた。また、Deeplなど翻訳機を使い、世界中から学びの情報を早く、大量に入手することにも取り組んでいる。常に最先端の学びを追求する姿勢を持ち、新しい政策科学を創ろうとしているのだ。
 
 
 
 
 
 

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