英国出張時の日経新聞欧州総局長との議論:「トランプ2.0」が促す日欧連携 経済と安保の両面で
日本経済新聞欧州総局長・赤川省吾氏とロンドンでお会いした。その時、国際情勢、欧州政治から日本政治まで、3時間くらいさまざまな議論を楽しんだ。そこから一行、私のコメントになった(笑)。
いや、だいたい新聞・雑誌の識者コメントというのはそんなもんなんで。普通2-30分、私の場合は調子に乗って1時間半から2時間しゃべりまくってしまうことがあって、掲載されるのは1-2行(笑)。
それでいいんです。
赤川氏の記事によれば、欧州諸国が「トランプ2.0」に備えて動き出しているという。
欧州各国の政策担当者が渡米し、水面下でトランプ氏の政権移行チームに接触している。また、米中関係の動向も注視し、欧州各国のアジア政策担当者がひそかに対策を擦り合わせ、協議を続けているという。
米国が求める国防費の上乗せに応じつつ、ウクライナ支援を続けるように説得する。過度な米中対立は望ましくないと訴える一方で、欧州企業には中国依存を減らすように強く促す。
トランプ政権の要求を応じながら、その歯止めもかける。欧州諸国は、タフな交渉に備えている。
欧州は、トランプ政権に対峙するために、経済と安保の双方で手を組める地域を探している。北大西洋条約機構(NATO)は東京事務所を設けるなど、「日韓や台湾などインド太平洋の民主主義陣営」を念頭に置いている。
私は、ポピュリズムを相対的に抑え込むことができている日本と英国が、「トランプ2.0」において、自由民主主義陣営を牽引し、トランプ氏を抑え込む役割を担うべきだと主張した。
赤川氏も「いまこそ欧州と連携して米国に歯止めをかけ、強権国家には日米欧が一枚岩となって臨むべきだろう」と主張する。石破茂首相は、「トランプ2.0」という大変動を好機と捉えるべきではないだろうか。
私は、総選挙後の日本は、与野党伯仲で、安全保障・外交に関しては前進すると論じた。
「103万円の壁」や「選択的夫婦別姓」はどんどん石破首相を攻めて、丸飲みさせて野党は成果を誇ればいい。一方、日本の国際的プレゼンスが高まる話に、「中道保守」の野田佳彦代表率いる立憲民主党などが反対する理由はあるまい。
与野党が外交・安全保障で協議し、「コンセンサス」を得てすすめられるのは、戦後ほとんどなかったことだ。その好機を石破首相は生かしてほしいものだ。
そして、なによりも興味深いことがある。
『米国になんとかしてもらうんじゃなくて、自分たちである程度はやっていく。それより前に、自分の国がどれだけ米国に軍事的・経済的に依存していたかを認識することは大事かもしれない。
いかに米国に守られ、食わせてもらっていたかがわかれば、トランプ次期大統領の要求をどこまで受け入れ、何を守らないといけないかがわかる。
要するに、トランプ次期大統領の就任で我々がやらなければならないことは、まず「自分のことは自分で考える」ということだ』。
私はこう書いた。「トランプ2.0」を前にして、欧州諸国が動揺することなく、自らできることは何かを探り、動き出したことそれこそが、「ポスト米国覇権」の時代に、最も意義あることだと思う。