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Born in 1962

僕は1962年の生まれだが、自分が生まれ育った60年代や70年代はどんな時代だったのだろうと、最近よく考える。

昔の映画には当時の街並みや道行く人々がたくさん写り込んでいる。最近の4Kデジタルリマスター版だと、かなり鮮明にディテールまでわかるので、そうやって当時の街の様子を観察していると、古臭さよりも、新鮮さや生々しさを感じることがある。

50年以上前の昔でも、案外、いまと地続きなのではないか。そんなことを考えるようになったのは歳のせいかもしれないが、直接のきっかけは、2021年から放送されている「世界サブカルチャー史 欲望の系譜」というNHKの番組である。

この番組は「サブカルチャーから時代の欲望を読み解く」というコンセプトのもと、20世紀後半の世界各国の映画や、流行の文化を取り上げて、社会の変化や時代精神を浮き彫りにするという、とても興味深い企画だった。

NHK「世界サブカルチャー史 欲望の系譜」

第1回の放送は70年代のアメリカが舞台で、「イージー・ライダー」「ゴッドファーザー」「ジョーズ」「未知との遭遇」「タクシードライバー」など、僕が10代の頃に見た映画が次々と登場し、サブカルチャーを通して時代を読み解く面白さを堪能した。

シーズン1 は1950年代から2010年代のアメリカ編で、特別版として60年代フランス編が最後にくっついていた。シーズン2 は60-90年代のヨーロッパ編、シーズン3 は60-90年代の日本編という構成で計16回が放送され、2023年3月に完結した。今後も事あるごとに再放送されるはずだから、ぜひ一度見てほしい。映画好きならきっと気に入るはずだから。

さて話を元に戻すと、60年代から90年代にかけての日本は、急速な経済成長で豊かな生活を手に入れ、東京五輪と大阪万博を通じて国際社会に復帰し、世界2位の経済大国となるものの、冷戦終結と共にバブル崩壊を経験する。いま振り返ると、こんなにも変化の激しい時代だったのかと驚くほどだ。

いっぽうで、60年代の初めはまだ映画が娯楽の王様と呼ばれていた時代で、時代劇、アクション、特撮など様々なジャンルの映画が無数に作られていた。その後テレビが娯楽の主役になると、子ども向け、若者向けの番組が次々と生み出される。その影響もあって、60年代以降マンガやアニメが急速に発達し、日本は世界有数のマンガ大国、アニメ大国へと成長する。サブカルチャーもまた、この数十年で大きく変化したのだ。

僕は、幼い頃からテレビが身の回りにあるテレビっ子として育ち、上京してからは大学の近くの名画座に通い、大人になると出版社で映像の専門誌を作りながら、夜な夜なレンタルビデオを見る日々を過ごした。その時々の映像文化にどっぷりと浸かってきたわけだが、最近では暇を見つけてはAmazon Primeで古い映画を鑑賞するようになった。

すると、どうだろう。これまで古臭いと思って敬遠していた過去の日本映画の中に、宝石のように輝く作品がたくさん隠れているではないか! 自分が子どもだった頃の映画はこんなにも豊かで面白くて格好よかったのかと、いまさらのように感動しながらモニター画面を見る日々を送っている。

こんなに過去が面白いのなら、「世界サブカルチャー史 欲望の系譜」に倣って、昔の映画やテレビについて書いてみよう。そう思いついて、このnoteを始めることにした。社会全体を見渡すような広い視野は持ち合わせていないので、個人的な体験だけが頼りだが、僕が生まれた1962年を起点として様々なサブカルチャーについて書いていきたいと思う。

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