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商品が書籍に掲載されて、ジョハリの窓を開いて、シビックエコノミーを目指し始めた話

こんにちは!紙単衣の水引デザイナー小松です。

6月20日(月)に発売された『暮らしの図鑑紙もの 集めて、使って、愛して 12人の楽しみ方×かわいい紙もの120×基礎知識』(翔泳社)に自作の水引アイテムを2点掲載していただきました(p168.177)。

書籍への掲載は初めてで、プロに編集してもらって、たくさんの方に見てもらい、書店や図書館にずっと商品の記録が残っていくのは、嬉しいなぁと思っています。
掲載はほんの少しなんですが、選ばれたのが私にとって思いがけない商品だったので、「なぜこれを?」という違和感を解消するために考え続けたら、SNS発信に新しい「お菓子」のコンテンツを加えることになった経緯を、今回は備忘録として記していきます。

■商品が掲載された書籍の内容

翔泳社様からの献本としおり

暮らしの図鑑紙もの 集めて、使って、愛して 12人の楽しみ方×かわいい紙もの120×基礎知識』(翔泳社)の名前の通り、中身はかわいい紙ものが盛りだくさんで、紙といえばこの人という方のインタビューや紙の基礎知識(歴史、作り方、分類など)、工場見学の様子、ショップ情報が掲載されていて、紙ものについてとても楽しく学べます。

■書籍に掲載された水引アイテム

商品掲載の打診をいただいたとき、「紙もの」だから、てっきりご祝儀袋かポチ袋だろうと思いましたが、選ばれたのは紙を水引にしてさらに細工した水引アクセサリー雑貨2アイテムでした。

左:リーフブックマーカー ホワイトゴールド(かんざし兼帯飾り)
右:水引花桃ピアス・イヤリング

リーフブックマーカー ホワイトゴールド(かんざし兼帯飾り)
水引花桃イヤリング

水引アクセサリー・雑貨も「紙もの」に入れてもらえるのね〜という驚きと、毎日水引ばかり見ている私からすると、書籍に掲載するには独創性が薄いのでは…と心配になってきてしまいました。

過去の他メディア掲載では、概ね色味や機能の特徴から珍しがってもらえる水引アクセサリー・雑貨『あわじ結びコレクション』シリーズを掲載してもらっていました。

縁起の良いあわじ結びで作ったアクセサリー・雑貨「あわじ結びコレクション」シリーズ

■魅力的な商品とは?

「なぜこの2商品が選ばれたんだろう…?」とふつふつと湧いてくる戸惑いにも似た疑問を解消するために、この商品を作った理由、私が一推ししきれない理由、そして商品を魅力的に感じる理由を考えてみます。

《商品を作った理由》

リーフブックマーカー ホワイトゴールド(かんざし兼帯飾り)

帯飾りとして使用イメージ

水引リーフ結びは、元々ピアスやネックレスでも展開していて、あるとき着物をよく着る友人から「帯飾りだったらほしい」とリクエストがあり、ブックマーカー・かんざし・帯飾りと3通りの機能を持たせた欲張りアイテムとして提案したものです。いわば、私的な友人とのご縁で生まれた商品です。

水引花桃イヤリング

花桃の里イメージ

「花桃の里」と呼ばれる長野県阿智村のお土産品として温泉郷内のショップで販売するために作ったアイテムです。実際に私も家族で現地へ何度も訪れたことがあるので花びらの色を思い出しながら、本物に近い3色を選んで花の形に結びました。私的な郷愁を込めて作った商品です。

《商品を一推ししきれない理由》

商品の品質としてはもちろん問題ないしデザインも気に入っていますが、2商品とも私的な気持ちが先行して作った商品ということが、もやもやする原因です。ハンドメイド作品ではありがちかもしれませんが、客観性に欠けた独りよがりの商品になってしまっていたら、共感が得づらくアマチュア感が否めません。

「グッドデザイン賞」の理念のように、デザインで暮らしや社会をよりよくしていこうとする視座高い心意気を持っていたいと思っています。

グッドデザイン賞の理念
グッドデザイン賞はデザインの優劣を競う制度ではなく、審査を通じて新たな「発見」をし、Gマークとともに社会と「共有」することで、次なる「創造」へ繋げていく仕組みです。グッドデザイン賞では常に我々が向き合うべき根源的なテーマとして5つの言葉を「グッドデザイン賞の理念」として掲げています。

 人間(HUMANITY)  もの・ことづくりを導く創発力
 本質(HONESTY)  現代社会に対する洞察力
 創造(INNOVATION)  未来を切り開く構想力
 魅力(ESTHETICS)  豊かな生活文化を想起させる想像力
 倫理(ETHICS)   社会・環境をかたちづくる思考力

https://www.g-mark.org/about/

少なくとも、お客様が手にして「自分のもの」として扱いたくなる共感性をロジカルに説明できなければと…。

《商品を魅力的に感じる理由》

そう頭を硬くして自ブランドについて色々と反省する常ですが、実際にお客様が商品に魅力を感じ購入にいたる要因は、複合的なものです。

商品購入要因

今回の書籍掲載は、「紙もの」を好きな読者に紹介する目的なので、上図から選ぶと、以下の3つが選ばれた理由かなと腑に落ちました。

◎素材…本のテーマ「紙」を使った水引素材である
◎デザイン…水引らしい結び細工、女性読者が好みそうなイメージ
◎ブランド(作家)が好き実績から載せても大丈夫そうな信頼感

■作り手とお客様の商品理解をジョハリの窓に当てはめてみる

書籍の掲載理由は見当がつきましたが、この2商品を実際に購入してくださるお客様は別の要因で購入の意思を決定しているかもしれません。

商品の「コンセプト」への共感や「ブランドが好き」という要因で購入いただいているとしたら、「私的な気持ちが先行して作った」という、私が自分で否定したところにこそ共感ポイントがあることになります

そこで、自己分析に使われる「ジョハリの窓」をもとに、大雑把ですが商品購入要因を当てはめてみました。

ジョハリの窓 改訂版(「社会貢献」と「環境に良い」はない場合もあり)

作り手としては、左側「開放の窓」と「秘密の窓」のいずれの要因も理解してもらえることを期待します。しかしお客様は「開放の窓」は確認しても「秘密の窓」にある要因を積極的に理解しようと努めるとは限りません。
商品を好きになってもらうためには、「秘密の窓」にある要因を手を変え品を変え何度も説明した方が良いことがわかります。

■ブランドのコンセプトに立ち返る

先の2商品の開発で「私的な気持ちを先行して作った」のは商品コンセプトにあたる部分ですが、そもそも個人事業主である私の場合は、商品に限らず、ブランド自体も「私的な気持ちを先行して作った」ものであることを否定できません。

私がブランドを始めた経緯は以前のnoteに綴っています。

記事を書いた2019年当時は、「水引産業に貢献したい!」一心で勢いがありましたが、コロナ禍で業界も私も打撃を受け、最近は水引を生業にする個人の方も増えてきたし、自分の得手不得手もわかってきて、私一人が数万個商品作りに関わっても、産業への貢献度はちっぽけだなぁと、ブランドの存在意義を問い直すことも多くなっていました。

そんな中で書籍掲載は、とても明るいニュースでした。
特に「水引花桃イヤリング」にこめた長野県の下伊那地域への郷愁は、水引ブランドを続ける理由ともよく似ているので、地域への郷愁に共感して購入してもらえたら嬉しいのです。

■シビックプライドから見つけたキーワード「和菓子の街」

コロナ禍でできた時間を利用して色々と新しい学びを得る中で、コミュニティデザインの「シビックプライド(civic pride)」という言葉に出会いました。地域への愛着や誇りを持ちながら、より良い場所にするために主体的に関わっていく自負心のことです。

そのまま伝えても同郷の人にしか共感されないであろう私の郷愁、そして伝統工芸好きや水引自体に興味がある人にしか響かない水引産業応援の想いを、もっと広く届けるには、「水引産業単体だけでなく、そこに住む街の人にとっても良いことをする」と良いとシビックエコノミーに詳しい方からアドバイスをいただきました。

東京にいながら地域にとっても良いことをどんな風に始めようか、しばらく考えていた時に6月16日和菓子の日が訪れて、「これだ!」と思ったのです。

長野県下伊那地域の中心である飯田市は、「水引の街」「和菓子の街」「焼肉の街」「りんごの街」「人形劇の街」…と街の特徴から呼び名が多数あります。
同じ和文化で女性が好きな和菓子なら水引と情報が混ざっても、今のお客様に受け入れてもらえそうに思います。

…ということで、早速水引柄のお皿を買って、南信州のお菓子を取り寄せてinstagramで時々紹介することにしました。

水引の人形は以前から作ってあったので、「水引ドールのSweets party」と名付けてマガジン風のフォーマットを作り、「人形劇の街」の要素も加えています。初回投稿はまずまず受け入れてもらえたかな〜と思っています。
お菓子を注文するのも食べるのも、撮影のセッティングをするのも、画像を加工するのも、私自身も楽しく続けられそうです。

さいごに

水引商品が書籍に掲載されたことをきっかけに、自覚していなかった地域への郷愁に気づき、SNS発信のコンテンツをひとつ作るまでに至りました。

SNSのフォロワーさんが、「水引の街」「和菓子の街」「人形劇の街」である南信州のことを好きになって、今後水引商品やお菓子を購入したり、いいだ人形劇フェスタに足を運んでくれたらいいな〜と思っています。

長くなりましたが、最後まで読んでくれた方がいらっしゃったら、ありがとうございます。

また気が変わることもあるかもしれませんが…、産地生まれの水引デザイナーとしてできることを、これからも探していこうと思います。

【この記事に関するお問い合わせ先】
kamihitoe.shop@gmail.com

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▼この記事で紹介した商品


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