指輪の物語 第1章

第1話 P子

今から数年前、労基違反で訴えられたりマスコミを賑わしたりで超有名な巨大外食企業の案件が自分のところに来た。
もちろん、自分が調理したりホールやったり経理だの総務だのでもなく、ちょっと特殊なデジタルサイネージ案件。デバイスと人間との双方向AIが売り。
双方向AIたって、結局は人間の手でデータを構築して、あたかも人間の言葉や行動を理解しているかのように人間と会話している感でしかないわけで、実際は人間の音声や表情は認識できないから他の方法で参加する、簡単に言うとアドベンチャーゲームみたいなもの。
で、自分が作るのは、その双方向AIもどきコンテンツ。
自分が参加した時点で数本のシナリオを組み込んだコンテンツがあったんだけど、これが、ぶっちゃけ、全然、面白くない。なんか意味不明なクイズとクッソ真面目な、まるで昭和の教育テレビ的な料理のレコメンドと説明。
統括する社長のバカむす・・・じゃない、御曹司様からNGが出て、慌てて外注やクリエイターを探してて、ぐるっと回ってそれが自分のところに来たという次第。

さて、ここで登場するは30歳の女性(既婚)。P子。彼女は進行管理係。俺との関係はコンテンツ制作のスケジュールや取材のセッティングや機器管理等々、いわゆる事務作業。
元気が良くてハキハキ喋って笑顔!まさに外食チェーンのウェイトレスさんな感じな女性。分かりやすい程、オヤジ連中に好まれるタイプ。
ちなみに、俺は金が一番主義なのと、正直、元気系の女子、苦手だから、そういう意識は皆無だった。

俺が所属するのは事業研究室。御曹司直轄の独立部署。
そこに、AIもどき制作チームがある。
制作チームの説明を。
S部長(男60歳ぐらい)が現場統括
Lさん(男50代後半)は機材担当者
G君(男30歳)プログラマーでソフト制作チームの管理者
P子(女30歳)進行管理、事務
他SEの人たち3人(全員、派遣)
神春(自分)コンテンツ企画制作
某国立大学教授(権威付けの適当なことだけ口だけ出す何もしない出来ない創造力皆無のエンタメ否定しまくりのエロ教授。ちな、本編には出てきませんな広告塔)

自分が参加した以前から、とにかくP子とG君(&SEら)は敵対してて、顔を合わすたびに揉めてて、自分が参加してからは、もっと酷い状況だった。
もともとコンテンツもG君らが作ることになっていたけど評判があまり良くなく、それでP子が「あたしが作る!」と奪った感じの流れ。
もちろん、素人のP子では無理なわけで、その出来栄えは最低で、御曹司から外注でもフリーでもいいからプロにやらせろ指令が出て、P子は個人クリエイターを含め外注を探すのだが、全部、どれもこれもまともに管理しきれず作れず無茶リクエストしまくりで金だけ取られて逃げられが続いていた。
それをG君に責められ、窮地のところに偶々俺が見つかった。

P子とS部長は、分かりやすいそういう関係で、G君の主張が正しくてもP子を庇うからG君は余計に鬱憤が溜まってしまう。
S部長は卑怯な人だからP子を庇うけど案件が頓挫すると困るからG君をなだめる。社員のG君は我慢せざるを得ないから余計にストレスが溜まる。俺が参加したことで立場的優位を取ろうとするP子とストレスが溜まったG君がぶつかるという毎日だった。

ある日、どうしても分からないことがあり、ツールの仕組みを詳しく知りたかった。普段はP子が間に入るのだが、当日は休んでいない。
仕方なしにG君に直接電話すると「神春さん、僕、あなたに何かやりましたかっ?」と突然。
いきなり、なに?
「僕、神春さんの作業、邪魔してませんよ!」
してないですよ。
「え?」
当時、俺は本社で、G君らは別のビルで作業していて顔を合わせる機会は少なかった。2週間に1度の打ち合わせ報告会ぐらい。だから、彼と直接なにかをやるとか決めるとかない。
「さっきS部長からメールで神春さんの作業を邪魔しないようにって注意されたんですよ!」
は?なに、それ
すると、G君は小声でボソボソっと何か呟き「とにかく、僕は神春さんの邪魔なんかしてませんからね!」と電話が切れた。
訳が分からん!が、たぶんP子とG君が、またトラブって、それで変な話になったのかな?と思い、関わると面倒なことになりそうなので、この時はスルーしたけど、この後、S部長が自分のところにきて頭を下げるもんだから、いや、G君から邪魔なんかされてませんよと返すと、微妙な顔をしていた。
結局、ツールの分からないところはLさんに間に入ってもらって教えてもらった。

第2話 泣きハラ

さてさて、コンテンツ作りに入ったわけで、まずは複数コンテンツの構成、チャートとかを考えてて分からない事がポロポロと出てくる。また、ツールの不具合も出てくる。
こりゃ困ったとなったけど、P子に言うと、またG君と揉めたりしてクッソ面倒くさくなるので、ツールの不具合を避けつつ自力で試行錯誤しながら解析したりデバイスのスペックとかを調べたりで、結構、大変な毎日だったが、仕事自身は面白くドンドンとハマっていった。

初日から、とにかく、P子が煩く、大きな世話を焼いてきたり、スケジュールも無茶なスケジュールを出したり、まだ途中のシナリオを読んで具体的な指摘無しにダメ出ししてきたり、ほぼほぼ毎日、G君やLさんの悪口を言ってきたり、他社員の悪口とかで、ほんと、ウザかった。
この具体的な指摘の無いダメ出しに今までのクリエイターらは撤退したんだろうなぁ、と。
とりあえず金も欲しいし仕事は面白いので、大人の対応ということで、なだめ賺し適当に相槌打って対応し、あまりにも煩い時は完全に無視した。
ただ、それでもしつこく何度もグチャグチャ言ってきたり、ダメ出しも具体的なことを聞いても「〇〇みたいな感じでダメ」しか言わないので、もう、辞めるというと、さすがに彼女も後が無いから大人しくなった。
ようやく、サンプル的なコンテンツ1本を作りツールに載せて部内の社員らに披露すると、結構どころか大いにウケた。これで、さらに自信がつき、ハマっていった。

でもって、この披露をきっかけに社員の方々と仲良くなって飲みに行ったりして楽しく充実した日々を過ごしていた。
で、多くの社員らが俺に言うんだ。「姫様(P子)とS部長には気をつけろ」と。
聞くとS部長、出世のために部下を潰すという、相当、ヤバい人。
P子はガチで狂っていると。
P子、このAIもどき案件以外にも、いろいろと部内の案件に首を突っ込んでて、とにかく引っ掻き回し面倒くさい方向に持って行くということで、皆、距離を取り、彼女の顔色を伺い、そして裏では辟易し愚痴っていた。
そして、これは俺も経験し、そして、これからも経験する、彼女のある行動・・・というか攻撃が厄介だった。
参加してしばらくした頃、進行管理のP子、ころころとスケジュールを変えてくる。全部、根拠なし。このスケジュールじゃ出来ないと言うと、一旦は取り下げるのだが、また、変なスケジュールを押し付けてくる。
とにかく、しつこかったから、クオリティが下がるから嫌だ、もう、やってられない!と強く言うと、部署内に社員らが大勢いる中、突然、ボロボロボロっと大粒の涙を流し「どうして、あたしの気持ちが分からないの!」と泣きながら叫んだ。
突然、目の前で30の大人の女性が泣き叫ばれて驚くと同時に、どう対処してよいか分からず困った。周囲を見ると、みな、黙々と仕事をしている。
え?みんな驚かないの?と、そっちにも驚いた。

泣きハラ・・・P子の得意技のひとつで、人がいようがいまいが、相手が自分の意に沿わない、思い通りにならない、会議などで否定される等々あると、とにかく、泣くんだ。
しかも号泣。ぐぉぉぉって号泣する。
ある取材帰りの電車内。P子は延々と取材相手の悪口を俺に言ってて、俺はノートPCで取材内容をパチポチとまとめてて、しかも乗り物酔い状態で、結構、キツイ状態だった。
彼女の話なんか聞いてる余裕も無くクソうぜーなぁと思って、つい舌打ちをしたら、突然「なんであたしの話を聞かないの!」と号泣。
そんなに混んでいない車内ではあったが、みんな、一斉に、こっちを見る。
こうやって人前で泣かれると、第三者からするとオヤジである自分の前に号泣する女性の構図、悪者は自分となってしまうわけだ。
だから、もう、とにかく号泣を止めようと焦り、言い訳となだめるのに必死になり、最後に「P子さんのおかげで取材が上手く行きました、ありがとう」と思ってもいないことを言わざるを得ない状況に。
とにかく、30過ぎの大人が会議の場であろうが電車内であろうが人前で号泣するなんて信じられなかった。

ある日、親しい社員らの飲み会に人事部の若い女性が参加した。
P子、元々は人事部の人で、この女性の先輩だった。
そこでP子に関しいろいろと聞いたが、泣きハラは周知の事実で、他にも、結構、凄まじい話を聞き、正直、この時点では話半分と捉えていた。
それから彼女とは社内で会えば軽く話をしたり、飲み会も毎回参加し、アニメやマンガも詳しいので随分と盛り上がり、それこそP子より彼女の方が進行管理に向いてるんじゃないかと思うようになった。
ところが、ある日、社内で会っても無視され飲み会も来なくなった。
え?俺、嫌われた?え?なんで?状態。 モヤモヤモヤ~っと嫌な気分に。
翌月、P子が「神春さん、あの娘(こ)、辞めたわよ」と。
あの娘って誰?と聞くと、例の人事の女性のことだった。
「あのね、あの娘はね、神春さんに取り入ってコンテンツチームに入れてもらいたかったんだよ!利用されてたのよ!あんたは若い娘に弱いから気をつけなきゃダメよ!」と。
なに言ってんだ、こいつは!ということで怒ったら…
「神春さんのために忠告したのに!」と号泣。
彼女の件はP子の必殺技が炸裂した結果なのだが、この必殺技の話後ほど。


第3話 指輪

さて、作業も順調に進んでいた頃、とにかくこの案件の面白さに憑りつかれた感じになり、ついつい調子に乗ってデバイスに付いているスピーカーのボリュームを上げてしまうことが多々ありウルサイってことで、そこで、6人ぐらい入れる会議室に防音壁を付けた部屋で作業をすることになった(ドアはガラスだから中は丸見え)。
ほぼほぼ一人で作業やってて気楽で良かったのだが、突然、P子が入ってきて、いきなり、グゥォォォ!って号泣しG君がこういうことを言ったとかなんとか始まる。
とりあえず、心の中ではクッソウゼーと思いながらも、なだめすかしで早めに出てってもらうようにした。
この、なだめすかしが良くなかったと、後々、後悔することに。
なんとか、コンテンツが目標の7割ぐらいまで来た頃、本案件のトップ、御曹司にプレゼンすることになった。
ちなみに俺は農場に取材に行ってて参加せず。ただ、この取材のスケジュール、S部長とP子の意図的なものを感じた。
御曹司プレゼンの翌日の昼、作業部屋で、あーでもない、こーでもないと考えていると、スマホがブ~っと。P子からだった。
「あのねっ、神春さん、ちょっと提案があるの!次の展開なんですけどね、今の体制じゃ無理だと思うの。そこで社内ベンチャー制度っていうのがあってね、そっちに移行しようと思ってるのよ」
え?いま?
この後。今のが終わってからのセカンドシーズンから。そこでね、メンバーを一新してね、ほらS部長はエンタメ分かってないし、Lさんは使い物にならないし、Gなんか足を引っ張るだけでしょ?そこでね、神春さん、ウチの会社のこと何も分からないでしょ?だから、あたしがPM(プロジェクトマネージャー)になって、神春さんはコンテンツ作りに専念できるような社内ベンチャー会社を作ろうと思ってるのよ。神春さんにとっても悪い話じゃないでしょ?S部長とか外して一緒にやりましょうよ!」
以降、延々と他メンバー、G君、S部長の悪口が続いた。
S部長がいるから、うまくいかないのよ!
P子、おまえS部長とガッツリ仲良しだったのに、なに、アッサリと裏切ってんだ?しかもおまえはスターウォーズの暗黒卿かよ、と。

なぜ、P子が突然、こんなことを言って来たかというと、自分が作ったコンテンツ、評価が高かったわけで、それはそれで、まあ、そうなんだろうけど、G君とLさんが考えたコンテンツがボロクソ評価だったというのもあった。
実際、俺も見たけど、いやいや、それ、ヤバいでしょなモノで、レストランに来たお客さんのプライバシーがっつり侵害コンテンツ。
御曹司だけでなく関係部署の管理職もNG出し。まあ、そりゃ、そうだよなぁ、と。
P子の、この電話、結局、クッソ面倒くさいから「今は忙しいから、また、今度」で逃げた。
直後、S部長とLさんが作業部屋に来て「今後のことを話し合いたい」と。
締め切りも近い事から、とりあえず、今やってることを終えたら話し合いましょうで終わりにした。
S部長が「引き続き、頼みますよ!何かあったら僕に言ってください」と言ってきて、いきなり握手を求めてきたのが今も印象に残っている。
そして、この時から自分はロードオブザリングの指輪になったんだと後に分かることに。
フロドでもなくアラゴルンでもなくガンダルフや、それこそドワーフやゴブリン、ましてやサウロンでもなく、指輪なんだ、と。



第4話 締め切り間際

さて、締め切りまであと数週間ぐらいのある日、その頃は距離が縮まった感じのG君と派遣のSEさんらと締め切りに間に合わせるための打ち合わせをしていた。
SEの一人がポロっと、作った演出ライブラリ、なんで、使い物にならないのか教えて欲しい、と言ってきた。
なにそれ?
「演出ライブラリを作ったんですよ。だけど、使い物にならないって、神春さんに拒否されたんですけど」
え?知らねーよ!ってことでメールとか遡って見たけど、そんな知らせ無し。
G君曰く、P子に検討してくれとメールしたが神春が拒否ったとの返信が来たと。
で、実際に演出ライブラリの中身を見ると、なに、これ、使えるやん!と。
これはさすがに腹が立ったのでP子に電話しこの件を言うと、俺に伝えた、と。
聞いた聞いてない言った言わないの展開に、さすがにガチでキレた。
挙句に自分はG君のことを嫌っているから拒否ったとか言う始末。いや、それ、自分じゃなく、あんただろ、あんた!
いい加減にしろ!と、つい怒鳴り電話を切った。
というわけで、急遽、使うことになり、締め切りに間に合わせるため、もう、必死で演出改良の作業に。
そんな時に、S部長からメールが。同じようにG君にもまったく同じメールが。
「神春さん(G君)、G君(神春さん)と喧嘩状態で作業が遅れているということですが、プロとして、その姿勢は如何なものでしょうか?チームワークを乱す行為は許されません」みたいな内容。
なんじゃ、これ!
さっそく、喧嘩なんかしてないし、そんな暇なんかないと自分もS君も返信。
「また、これだ!こんなことばっかりなんだよ、P子は!」とG君が怒った。
そして、G君から、俺が参加する前の話を聞くことに。
案件スタートからP子の役割は進行管理なんだけど、しばらくすると、なぜか制作にも口を出し、S部長を通してコロコロと要求仕様も変りスケジュールもコロコロと変る。
一番悩まされたのが、あることないことをS部長に吹聴し、S部長も信じて、意味不明な注意を受ける。そう、今回のような。
「毎晩、眠れなくて、本当に苦しかったんですよ」とG君。
でもって、俺の名前も散々G君を攻撃するために利用されたようで。
こいつはマズいな・・・と思ったが、今は多数あるコンテンツの追加修正をやるしかないわけで。
が、P子の攻撃に怯えたけど、なぜか突然、P子、体調不良ということで会社に来なくなった。
俺が作ったコンテンツのすべてを店舗運営部に確認する義務があるのに休んでるから最終チェックが出来ない状態に。もう締め切りなのに。
仕方なく店舗運営部の人を強引に呼んでチェックしてもらうことに。
ところが、それまでのコンテンツすべてをチェックしたわけではないと言われ、結局、朝までこの社員と一緒に全部のコンテンツのチェックをすることに。
時折、愚痴る社員になぜか俺がP子のフォローをするという状況に腹が立ったが、とにかく、今は、そんなことやってられない。
こうして、無事、すべてのコンテンツが完成した。

途中で放り投げる、というか締め切り間際に逃げる人とは仕事をしない主義なので、もう、P子とは関わりたくないと強く思った。
後に、実は体調不良で休んでいたのは3日程で、7日程は少人数会議室に籠り他の案件をやっていたことを知り、これが決定的だった。
セカンドシーズン、P子とは出来ないどころか邪魔だ。危険だ。
彼女とやると、俺はいつまでも彼女の泣きハラに振り回され、他人の悪口を延々と聞かされ、コンテンツ内容にも意味不明な難癖をつけられたり、無責任なお遊び感覚でやられたらたまったものじゃない。

なんとか、山を越し、某店舗にデバイスを設置し期間限定のテスト公開に。
多くのお客さんだけでなく広報の社員らも店で働くバイトさんらも御曹司も大ウケ。特に狙い通りチビッコのお客さんからは絶賛だった。
テスト実施期間は3ヵ月。この間、コンテンツの入れ替え等々をおこなう。
でもって、期間中、週に3日、土日も含め、家族連れが来る時間(お昼や夜)に店舗に出向き近くのテーブルに座りお客さんらを観察。
ウケてた。いや、本当にウケてて、特にチビッコらの反応が想定以上に良かった。近くで観ていて思わず笑みを浮かべそうになるも、怪しい人と通報されたくないのでスマホを見るふりして誤魔化した。

ここで、どんな展示だったかというと(本編とはあまり関係ないので簡単に説明します)客席にはモニターと双方向AIデバイスが設置され、お客さんが双方向AIデバイスと連動したモニターに表示される選択肢を選びコンテンツを進めていくもの。
23本のショートコンテンツと5本のロングコンテンツを用意。
フェアの案内から店舗のご近所情報、落語的なものから季節イベントネタ等々。
とにかく柔らか楽しいを前面に。俺がやる前までは、例えば、レコメンドもビタミンだのタンパク質だの栄養価がどうとか〇〇産の野菜がどうとか、延々と堅い説明をして、どうですか?と聞くものだった。これでは見てくれないし参加してくれない。
食事は楽しむものというというテーマを絶対に外さず、お客さんを下に見ないし上にも見ないフラットに。だけど、柔らか楽しいは不真面目ではないということ。
俺自身まだまだいろいろとやりたかったし反省点はあるものの、各統計値を見ても良い数字も出てて、まずは合格点と納得。
とにかく、終盤、P子がいなかったのが、本当に助かった。最後の構成確認時に口を出されると、ここまでウケなかっただろう。


第5話 セカンドシーズン

試験公開も無事終了し、全然、休んでいなかったので1週間休むことに。ちな、休んでいる時も金が出るので条件は、本当に良かった。
休み明け、S部長とLさんと次の展開、セカンドシーズンについて話し合うことに。
御曹司から命を受けたS部長は、次回からもっと大々的にやりたい、神春を中心としたコンテンツ制作ラインを作りたい、と言って来た。
そこで、近々、社内ベンチャー制度を使い企業内企業が云々…あれ?どっかで聞いた話だぞ?と思ったけど、とにかく、自由にコンテンツを作れるなら構わないと答えた。
G君は参加辞退し、一緒にやってたSEチームは解散と聞かされる。
いやいやいや、自分、制御系どころかプログラムなんか組めないですよと言うと、プログラマーを探す、と。
これ、のちにG君に聞くと、全然、違ってて、G君は辞退なんてしていない、P子を外してくれ、P子がやるなら自分はやれないとS部長に言うと、じゃあ、外れてくれとアッサリと言われたとのこと。
いくらS部長とP子がそういう関係とはいえ、億単位の予算を持つこの案件。こんなんで良いのか?
その時は、G君がそういう理由で外されたことを知らなかった俺は、P子とは直接やれない。もう、振り回されるのはコリゴリとS部長に言うと、アッサリとP子は事務作業に専念してもらう、神春さんやコンテンツとは直接関わることはないとキッパリと言ってきた。
そして、P子は、今後、この作業部屋に出入りさせないと言った。
こうして、四半期ごとと上期下期の目標とスケジュール、そして新しいAI機器の調査やらテストやらを下期のセカンドシーズンに向けて進めることになった。
が、スタート直後早々、今度はLさんの愚痴が始まった。
全部、P子の件。
知らんがなと思いつつも、時折、俺の名前が出るから聞く。
ようは俺の管理がS部長になったことで文句を言っているというものだった。
こんな日々のある日、S部長から毎日何をやっているかの日報を書いてくれと来たので、毎日、〇〇調査とか▽▽考案とか簡単な説明文を併せて出すも返事なし。実は、これ、P子がS部長に「神春の行動を管理しろ」と言ったというのが後に分かった。そして、この頃からS部長がP子に・・・と、これは後ほど。
そして、事件が起きる。
Lさんからプログラマーを探すという話が消えた、と。なんで?と聞くと、P子が必要ないと主張。それをS部長が了承したと。
で、Lさん「神春さん、プログラムやって」と言ってきたので、出来ないと答えると、勉強してくれと。
いや、何を無茶なことを。んな、何年かかるか分からんわけで。
これじゃ、どうにもならんというわけでS部長とLさんと俺とで話し合い。
S部長はプログラマーは探すし神春さんも探してくれという話で当初と変わらない。
あれ?Lさん、話が違うじゃんよ。
さらにさらに、後日、Lさんから店舗でホールの体験をやってくれと言われて、はぁ?状態に。聞けば店舗運営の勉強が必要と言ってきたので、そんな、火傷するかもな鉄板持って店舗内を歩けないし、コップとか割っちゃうだろうしと拒否。
同時に店舗運営部署からも、いきなり、そんな素人にお客さん相手なんかされたら困る、1週間研修してからと言われたそうで、Lさんから研修を受けてくれと。
いったい、なんなんだ。改めてやりたくないし自分の業務に支障が出ると答えた。
翌週、突然、Lさんから店舗の監視カメラで録画された店内映像を見て欲しいと。
え?37時間も見るのっ?な、なにそれ?てか、なんで?と聞くと、お客さんの反応を勉強するためだ、と。
なんの反応?てか、お客さんのプライバシーの問題もあるんじゃないの?と聞くと、そりゃ、そうだということで、ここで話は終わった。



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