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知られざる小京都・西尾の魅力を世界へ。茶室付き貸切宿 ‐Rise’s House オーナー 小村来世‐

「一期一会の出会いとおもてなし」がここにある。

今月、愛知県西尾市にオープンする茶室付き一軒家の宿『Rise’s House』。最大8名まで泊まれる和を基調としたこの宿では、オーナー自らが私たちに西尾の楽しみ方を教えてくれます。

抹茶の一大産地であり、愛知で唯一の小京都と呼ばれる西尾。有名な観光地ではないからこそ、その魅力を日本そして世界へ発信したいと語る若きオーナーに会いに、その地を訪れました。

宿開業に至るまでのストーリーから、西尾の町とRise’s Houseの魅力を紐解いていきます。


1.出会いと経験が繋ぐ、宿オーナーへの道

「人との繋がりを大切にしたいんです。出会いも経験も、いつか点と点が線になる。だから、いつもオープンでいたいなって」

そう語るRise’s Houseオーナー、小村来世(こむらりせ)さん。高校卒業までを西尾で過ごす一方、広い世界に興味を持ち、世の中のことをもっと知りたいと、一橋大学経済学部に進学。ごく一般的な家庭で育った小村さんですが、猛勉強の末に奨学金を得て念願の海外留学へと旅立ちます。

「ローカルな旅」の中にある「宿」の魅力に気づいた学生時代

「一橋大学を選んだ理由の1つは、比較的少人数の大学だったことです。アットホームなコミュニティで、濃い人間関係を築きたいな、と思いました」

在学中、学生同士が交流しともに学べるコミュニティを立ち上げるほど、人との繋がりを大切にする小村さん。留学を通して、その繋がりは海外へと広がっていきました。

「ロンドン留学中に初めてヨーロッパを旅しました。お金がなかったから、いつもホステルに泊まっていて。そこで、様々な人に出会える宿って面白いな、と思うようになったんです」

宿で仲良くなった友人たちと、それぞれ後に再会を果たしたそう。その体験を通して、単なる観光ではないディープな旅の面白さに目覚めていったのだとか。

「友人に会いに、ハンガリーの小さな都市を訪れました。有名な観光地というわけではないのですが、ちょうどそれが西尾と重なって。家に泊めてもらい、ローカルな場所をたくさん案内してもらいました」

「王道の観光ではないけれど、現地の人と話をしてオススメの場所をまわったりご飯を食べたりしていると、特別な体験をしている感覚になるんです。それが自分はとても好きだな、と感じました」

そんな経験を通して、小村さん自身も「日本のローカルな体験を提供できる宿を作りたい」、という思いが強くなっていったのだそう。

また、「いつか日本に行くのが夢なんだ」と語る友人の言葉も、その背中を押しました。

王道よりも挑戦を。「好き」を貫く強さ

就職先の星野リゾートを訪れたご両親と

大学卒業後は、夢に向けて経験と資金を蓄えるため、星野リゾートへ入社。
他の学生が銀行や証券会社などへ就職していく中、王道コースを外れていくことに不安は無かったのでしょうか。

「もちろん、いわゆる王道コースの方が待遇が良いところは多いです。でも、良い生活をするよりも、好きなことに挑戦したいと思いました。不安より面白そうという気持ちの方が強かったですね」

点と点が繋がる瞬間。地元西尾で掴んだ夢の第一歩

働きながら宿泊業のスキルを学ぶ一方、開業場所を模索していた小村さん。その中で、改めて地元西尾の魅力に気づいたといいます。

「考えてみたら、西尾には特産品の抹茶や鰻に加えて、お寺や神社が多くある古い街並みなど、日本らしい魅力がたくさん詰まっています。他の地域では簡単に真似できないことだと思いました。

それなのに、まだそんなに賑わいきっていない。だったら、自分がその魅力を発信しよう、と思ったんです」

今や日本に来る海外観光客の6割はリピーター。主要な観光地だけでなく、「普通の日本が見たい」と思う彼らにとって、西尾という場所を新たな選択肢にしてほしい、と考えたそう。

「目指すのは単に泊まるだけの場所ではなく、『ここだから泊まりたい』と思ってもらえる宿です。地域と連携しローカルな体験をお客さんに提供するためには、地元の方々の協力も欠かせないと思いました。」

場所が決まり、残る問題は物件探しと資金集め。そこで知ったのが「西尾市空き店舗等活用事業」の存在でした。西尾市は、空き家を活用した事業の支援を積極的に行い、町を盛り上げようと取り組んでいます。

「市役所へ相談に行ったところ、まだ名刺すらない自分の話をとても熱心に聞いてくださって、翌日にはこの物件を紹介していただきました。市の方々のスピード感と熱量に圧倒されました」

西尾駅から徒歩圏内、数年前にリフォームされたばかりの綺麗な建物

資金調達はクラウドファンディングにも挑戦。地元の方や、大学生活で繋がった多くの方から支援され、なんと4日で目標金額に到達したとか。

こうして宿を開業するという夢を掴んだ小村さん。これまでのご縁を大切に、自分の心に従って学びと経験を積み重ねてきたからこそ、点と点が線になり、『Rise’s House』という新たな地点に繋がったのだと感じました。

2.Rise’s Houseが提案する西尾の楽しみ方

オーナー自らのおもてなしで、西尾の抹茶と歴史に触れる

日本と西尾らしさが表現されたロゴ

Rise’s House の一番の特徴は「茶室付き宿」であること。

実は西尾の抹茶生産量は全国でもトップクラス。西尾市の中学校では、茶摘みやお茶会が伝統行事になっているほど、抹茶は西尾市民にとって大切な文化です。西尾で育った小村さんにとっても、子どもの頃からお茶は身近な存在でした。

お客さんにもそんな西尾の文化に触れてもらおうと、宿の一室を茶室に改装。

抹茶をたてるだけではなく、茶臼で茶葉を挽くところから体験できるそう。この抹茶専用の茶臼で挽くことで、粒子が細かく、香り・風味などがより一層引き立てられた抹茶が味わえます。

また、現在小村さん自身も改めて茶道を習い特訓中だとか。

「東京にいた頃、浅草へ留学生を茶道体験に連れて行ったことがあるんですが、みんなとても喜んでいました。でも、そういった場所は値段もそれなりにします。

日本の茶道人口も減ってきている中、海外だけでなく日本のお客さんにも、もっと気軽に茶道を楽しんでもらえたら、と思っています。そのために、まずは自分自身も勉強しているところです」

茶道体験のほかに小村さん自らが提供したいと考えているのが、西尾の「小京都町歩きツアー」。西尾は城下町として栄えた歴史都市であり、西尾城にほど近い宿の周辺には多くのお寺や神社、庭園を見かけます。

「こうした景色と一緒に西尾の歴史も楽しみながら知ってもらえたら。海外と日本のお客さんでは興味のあるポイントも違うと思うので、どちらにも楽しんでもらえるガイドをしたいなと思っています」

西尾城がある西尾市歴史公園
徳川家康が宿泊したとされる康全寺
街中にある庭園
宿から歩いてすぐの古き街並みが残る通り

小村さんオススメのコースを歩いてみると、暮らしの中に歴史・文化が溶け込んだ落ち着いた街並みや庭園の緑に、街中にいるはずなのに不思議と心がほっとします。取材のため何度か足を運びましたが、歩くたびに新たな発見があり、もっと西尾の町を探索したくなりました。

地域と連携したおもてなしで、ローカルな体験を

photo by 西尾観光協会

自身がプレイヤーとしてお客さんをもてなす一方、地域と連携し様々な角度から西尾を楽しんでもらおうと計画中とのこと。

「西尾には日本の文化を体験できるコンテンツが他にも沢山あります。新茶の時期の茶摘み体験、抹茶ミュージアム、抹茶を使った染物体験、愛知ならではの味噌文化、畳作り、たい焼き作り体験などなど。

観光協会やお店の方と連携して、お客さんと地域をつなぐ橋渡しをしたいと思っています」

抹茶ミュージアムの工場見学。他にも様々な体験が可能
味噌蔵見学や味噌玉づくり体験も
畳作り体験でお世話になる畳屋さん。茶室に使う畳も無償提供してくださったとのこと

「海外のお客さんには、自分も同行して通訳をする予定です。自分が海外で友人にしてもらったように、貸切の小さな宿だからこそ出来るおもてなしをしたいなと思っています」

お寺の協力のもと座禅体験も計画中

そして、体験の中でも重要なのが「食」。宿は素泊まりにして、地域の飲食店を積極的に案内したいと思っているそう。

なかでも、抹茶と並ぶ西尾の名物といえば「一色産うなぎ」。うなぎの生産量は全国の約20%を占め、市内には多くのお店が軒を連ねます。

宿周辺にはその他にも、小村さんオススメのローカルな居酒屋や定食屋も多数。もちろん、お茶屋さんも豊富でどこに行こうか迷ってしまうほど。

西尾ならでは、うなぎとお茶っ葉の釜めし
宿からすぐの抹茶カフェ
地元食材を使ったパン屋も

「これらの飲食店は平日は比較的空いていることが多いんです。特に海外のお客さんは曜日に関係なく来られると思うので、ローカルな味を楽しんでもらうことが、地元への貢献にも繋がると思っています。

この宿のように、最近は空き店舗を活用したお店も増えています。協力して西尾の町をもっともっと盛り上げていきたいです」

3.人を繋ぎ未来へと繋ぐ

もともと小さなコミュニティでの繋がりを大切にしてきた小村さん。地元西尾でお客さんや地域の方と密に関わる貸切宿は、たとえ王道コースでなくとも、小村さんの情熱が詰まった場所なのだと感じました。

「自分が行動することで、たとえ小さくてもこの地域に何か変化を起こしたい。将来的には、学校と協力して海外のお客さんと地元の子どもたちが交流できるような機会も作れたら、と考えています。

僕が海外に出てこの夢を見つけたように、世界は広くて色々な選択肢がある。それを地元の子ども達にも伝えていきたい。そんな体験もいつか提供できたらいいなと思っています」

誠実にきらきらとした笑顔でそう語る小村さん。人を巻き込み新しい風を起こしていく力強さと、地元への熱い想いを感じました。

4.今後の予定

ゲストと西尾の架け橋となる『Rise’s House』。地域の方々のサポートを受けながら行ってきた開業準備も、遂にラストスパート。

西尾市「佐久島」の木工職人の方が手掛けた看板

オープンは、西尾祇園祭が開催される7月12日(金)予定!それに先駆けて内覧会も行われるとのこと。

素敵なオーナーのおもてなしと西尾の町を体験しに、Rise’s Houseを訪れてみてはいかがでしょうか。

■内覧会詳細
日程:2024年7月7日(日)、8日(月)
時間:13:00~17:00 
予約不要、どなたでも参加可能
お車でご来場の際は周辺駐車場をご利用ください。

■Rise’s House詳細
住所:愛知県西尾市中町6−6
アクセス:名鉄西尾駅から徒歩15分
収容人数:最大8名
HP:現在準備中
Instagramはこちら
オープン:2024年7月12日予定


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