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日本の手仕事を巡る旅|そしてわたしは、紙をすきになる[第5話]

「先週、東京と栃木と岩手と新潟に旅行してきたよ!」大学の夏休み。久しぶりにバイト先に出勤してきた彼女は、珍しく饒舌だった。その旅はきっと心底楽しかったんだろう。


大学二回生の夏、『民藝の教科書』という本に出会った。

『民藝の教科書② 染めと織り』久野 恵一 監修/萩原 健太郎 著
歴史的背景や思想よりも“いまの民藝"を紹介することにこだわる「民藝の教科書」シリーズ第二弾。
テーマは「染めと織り」。南は沖縄から北は青森まで28の産地・つくり手をレポートします。伝統的な布がぐっと身近になる一冊。


人の手で作られたものに興味のあったわたしは「この手仕事を自分の目で見てみたい!!」という気持ちが抑えられなくて、次の週に見に行くことにした。
もともと旅行が好きで、「いつか青春18きっぷで旅がしたい」と思っていたり、同じタイミングで友人のライブが東京であったりといろんな条件が重なって、東京〜岩手〜新潟あたりを回ることにした。

『民藝の教科書』だけを頼りにアポも取らずに行ったので、工房がお休みのこともあったし 駅に降り立ってから車でしか行けないと判明して途方に暮れたこともあった。

新潟の田舎で1時間半の乗り継ぎ時間に、駅周りにお店が何にもなくて駅員さんに「この辺なにかありますか?」と聞いたら「なんもないねぇ〜、あっ、30分くらい歩いたらセブンイレブンがあるよ」と言われて これまた途方に暮れたことも。

そんなアポなし無計画弾丸旅行だったから、思いもよらない出会いがたくさんあった。
ちょうど20歳になったばかりで「歳を取るの嫌だな」と思っていたわたしの年齢や性別、国籍にまつわる呪縛を解いてくれたお姉さんや、「あなたのタレント(才能)は何ですか?」といきなり尋ねてくるジョニーデップ似の外国人。

当初の「手仕事を巡る旅」を効率よく実現するなら、工房や作り手さんをリストアップして 前もってアポを取って 周れば良かったと思う。その方が発信に必要な情報も集めやすいし、確実に次に繋げやすい。
だけど、とりあえず行ってみて タイミングが良ければ棟梁にお話を聞けて、くらいのゆるさで始めたから楽しめたんだろうなとも思う。

その甲斐あって(?)大学2年の夏以降、5年連続で「青春18きっぷで巡る手仕事の旅」をしている。その度に住みたい場所や 一緒に何かをしたい人が増え、日々が充実していく。
次に書く和紙との出会いも、旅の中だった。

手仕事を見たいという好奇心をきっかけに旅を始めて、たくさんの場所や人と出会う楽しさを知ったこと。
わたしを突き動かす「手仕事」で作られる紙があること。
これが、わたしが紙をすきになった理由のひとつです。



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#日本一周 #民藝

こんにちは、kami/(かみひとえ)です。いただいたサポートは、「世界の紙を巡る旅」をまとめた本の出版費用に充てさせていただきます。今年の12月に発売できる…はず…!