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【読書日記】8/21 旅行の余韻。潮の満ち引き。「アクアリウム/須藤真澄」

アクアリウム 
須藤真澄 著 新声社

※今は、秋田書店から出版されているようです。

今月初め、旅行に行きました。
道中で連想した本を再読して余韻を楽しんでおりました。

そのうちの一冊。
水族館でイルカショーを見、また国立科学博物館の「海~生命のみなもと」展を見ながら思い浮かべたのは「おさかなとおしゃべりできる女の子」と輪廻転生の物語。
高校生(大学?)の時に読んで、今でも漫画の中では一番のお気に入りの一冊です。

主人公、杢子(もくこ)は、魚と会話のできる女の子。
家で飼っている金魚は、水の中の世界では白髭をたくわえた翁の姿で、もっこちゃんの話に穏やかに耳を傾けてくれます。

赤ちゃんの時には、見えて話ができても、成長すると水の中の「あちらの世界」のことは忘れてしまう、といいます。
しかし、杢子は、めずらしいことに大きくなってからも会話をすることはできました。

もっこちゃんはおさかなと話ができる。

「金魚のおじいちゃん」がいる水の中の「あちらの世界」は、生き物が「生れる前、死んだ後」の世界。
「あちらの世界」のひとは、こちらの世界の生き物に宿って生き、死ぬとまた「あちらの世界」へと戻っていきます。
やさしくあたたかく切ない、輪廻の輪が静かに回っていくのです。

杢子は、小さな女の子から少女へと成長し、また、叔母であるしずかも杢子とかかわることで「あちらの世界」を垣間見、さらに自らも母となることで成長していきます。

印象的なのは、しずかの子として生まれるひとを選ぶ場面。
妊娠して「怖い」と動揺するしずかに、おじいさんは「おまえのところに行きたいと思っていくんだよ 心配するな」と諭します。

しずかのこどもの選考会。

結局、『「もっこ」といると「しずか」の心がやわらかくなる。「もっこ」も同じだ。』「あの人たちに混ざりたい」そう言ってとあるひとがしずかの子として生まれていきます。

「あちらの世界」の姿は「たましい」のようなものだと思いますが、年齢は幼子から年寄りまで様々。
しずかは、天真爛漫で型にはまらないところがありますが、「あちらの世界」では「生まれるのがはじめて」の幼子の姿で描かれています。
実年齢にかかわらず妙に落ち着いて老成しているひととか年を経ても活力にあふれているひととかいますが、「あちらの世界」の年齢がそうなのかな、などと思ってしまいます。

生き物が生れ死ぬこと。だれかと縁をむすぶこと。
その繰り返しで「たましい」は成長していきます。
わたしは、今の人生を大事に過ごしているかな、ご縁を大切にしているかな、と自分に問いかけたくなる物語です。

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