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【読書日記】 5/16 季語と生きる。「わたしの好きな季語/川上弘美」

わたしの好きな季語
著者 川上 弘美  NHK出版

 私は「歳時記」が好きで、大小硬軟取り揃えて楽しんでいます。
 だから、「妙な言葉のコレクション」が趣味だった川上さんが、歳時記で様々な季語と出会い、「宝箱を彫り出したトレジャーハンター」の気分を味わったというのが、私もおんなじ、と嬉しくなります。
 そして、その季語を使って実際に俳句を作ったときのこのみずみずしい感想。

それまで、ガラスケースの中のアンティークのように眺めてきたいくつもの季語を、自分の俳句にはじめて使ってみた時の気持ちは、今でもよく覚えています。百年も二百年も前につくられた繊細な細工の首飾りを、そっと自分の首にかけてみたようなどきどきする心地でした。

わたしの好きな季語 川上弘美

こうして俳句を詠み始めた川上さんは、今では「文豪と俳句/岸本 尚毅 (著)集英社新書」で、尾崎紅葉、森鴎外、夏目漱石といった文豪たちと並んで取り上げれられるほどの俳人です。

そんな川上さんの「わたしの好きな季語」とくれば興味津々です。
川上さんが季語を「愉快系季語」と「すてき系季語」に分類しているのも、うまい!と膝を打ちたくなるのですが、本書は「すてき系季語」が多いような気がします。

中でも、特に私が好きな章は「てんとうむし」と「躑躅」「小鳥」「案山子」・・・きりがないです。

てんとうむしの章では、アリマキを食べる「益虫」のてんとうむしと葉っぱを食べてしまう「害虫」のニジュウヤホシテントウムシについて、もし視点をかえてみるとどうなる?というその発想に驚かされました。

川上さんは、学生時代は生物を専攻されていたとか。
俳句は、対象を観察することが大事とよく言われていますが、生物を学んだ目が活かされているのだと納得しました。

川上さんが取り上げた季語の目次がこちら。
これだけでも目の前に日本の四季の景色が絵巻のように広がっていくのを感じます。
季語を川上さんは、「ガラスケースの中のアンティーク」と例えていますが、自然環境の変化の中で、季語を取り巻く環境が変わってきています。この宝物のように美しいことばが 歳時記のなかだけの過去の遺物となりはててしまいませんように。

<春>
 日永 海苔 北窓開く 絵踏 田螺 雪間 春の風邪 ものの芽 わかめ 針供養 すかんぽ 目刺 朝寝 木蓮 飯蛸 馬刀 躑躅 落とし角 春菊 入学 花 春愁

<夏>
 薄暑 鯉幟 そらまめ 豆飯 競馬 アカシアの花 新茶 てんとう虫 更衣 鯖 黴こうもり ががんぼ 蚯蚓 業平忌 木耳 李 半夏生 団扇 雷鳥 夏館 漆掻 雷青鬼灯 

<秋>
 天の川 西瓜 枝豆 水引の花 生姜 残暑 つくつくぼうし 燈籠 墓参 瓢 月
良夜 朝顔の種 新米 案山子 鈴虫 夜長妻 濁酒 柿 秋の空 蟷螂 小鳥 きのこ狩 文化の日 花野

<冬>
 時雨 神の留守 落葉 大根 切干 たくわん 銀杏落葉 冬鷗 河豚 枯枝 ストーブ 炬燵 冬羽織 おでん 鳰 蠟梅 つらら 探梅 春隣

<新年>
 飾 去年今年 歌留多 福寿草  初鴉  七草