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「砂の女」固定観念を捨ててみる

男が休暇に、昆虫採集をするため
出かけたきり帰ってこなくなるところから
始まる阿部公房が描いた物語。


主人公の男は、新種の昆虫を探すため、
砂地へ出かけたのですが、
砂の穴に家がある不思議な部落にたどりつきます。


一晩、砂の穴に住んでいる女の家に
泊らせてもらったところ、
翌朝、縄梯子がなくなっており、
穴から出してもらえなくなってしまう
というあらすじです。


この本を読んでいると
奇妙な物語にもかかわらず
たくさんの教えがあるように思えてきます。


男は、逃亡を図ろうとしたり、
発狂したりしながら
外で教師として生きていた自分を
思い返しこういいます。


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「納得がいかなかったんだ・・・
 まあ人生なんて、納得ずくで行くものじゃないだろうが・・・
 しかし、あの生活や、この生活があって、
 向うのほうが、ちょっぴりましに見えたりする・・・」

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私たちは生活していく中で
自分の思い描いていた出来事と違うことがあると
つい悲観的になったり、
理想の人生を送っている人を羨ましく感じたりします。


アメリカの心理学者アルバート・エリスは、
人の悩みはその人の固定観念が作用していると考えました。


主人公の男は
自分は社会的に認められている
砂を掘るだけの生活は劣っている
と思っていたのですが


今までの普通が通用しない砂の部落で
それは固定観念だと気づきます。


毎日砂を掘るルーティンの生活と
毎日朝起き、仕事や育児に追われる生活と
何か違うものなどあるのだろうか...
と思わされてしまいます。


固定観念をすてて、
なお、自分の生きる意味を見出す。


自分が生きる意味
自分のやりがい
自分の喜び
を追求せよ
と言われているように感じました。


不気味で奇妙な世界の中に
大切なものが
つまっている一冊です。

#安部公房

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